日本胸部疾患学会雑誌
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ニッケル粉塵吸入による好酸球性肺炎の1例
豊嶋 幹生佐藤 篤彦谷口 正実妹川 史朗中澤 浩二早川 啓史千田 金吾
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1994 年 32 巻 5 号 p. 480-484

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抄録

症例は16歳, 男性. 工業高校の実習にてステンレス鋼をグラインダーで削る作業を防塵マスクを着用せず行ったところ, 数時間後より咳嗽, 発熱が出現した. 胸部X線上右肺野にスリガラス状陰影, 斑状影, カーリーのBライン, 高分解能CTにて融合傾向を示す汎小葉性の肺野濃度の上昇, 気管支壁肥厚像, 小葉間隔壁の肥厚を認めた. 白血球22,500/mm3 (好酸球5%), PaO2 57.3Torr. BALにて総細胞数15.0×105/ml, 好酸球74%. ステロイド剤投与にて速やかに軽快した. ステンレス鋼には0.1%のニッケルが含まれていることから, 0.5%硫酸ニッケル水溶液吸入負荷を施行したところ, 6時間後より咳嗽, 発熱, 白血球数の増加, A-aDo2の開大を認め, ニッケル吸入試験陽性と判定した. ニッケルによる好酸球性肺炎は, 過去3例のPIE症候群の文献報告があるのみで, 非常に稀な症例と考えられた.

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