抄録
なめこ栽培に従事する人々の中から, 3例の過敏性肺炎患者を経験し, それがなめこ胞子の吸入に起因することを確認した. いずれの患者も空調設備が施されたハウス内でのなめこ栽培に2年~10年間従事しており, 室内での高密度のなめこ胞子の吸入曝露の結果発症したものと考えられた. 15名のなめこのハウス栽培従事者の検診を行い血清を得た. その中になめこ胞子抗原に対する沈降抗体陽性者が6名存在したが彼らはすべて無症状であり胸部聴診所見, 胸部X線写真に異常所見はみられなかった. 一方, なめこの露地栽培従事者17名の中には抗体陽性者を見つけることができなかった. 酪農従事者にみられる沈降抗体陽性の無症候者がなめこ栽培業者にも存在することが明らかになった. 栽培形態の変遷が新しいタイプの過敏性肺炎の原因となりうる具体的な例であり, 職業性肺疾患として産業医学的見地からも貴重な経験と考えられたので報告する.