日本胸部疾患学会雑誌
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32 巻, 7 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 吉川 正洋, 北谷 文彦
    1994 年 32 巻 7 号 p. 625-631
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原因不明のびまん性間質性肺炎は病理形態学的に定型例A群と非定型例B群に分類される. B群の臨床像を明らかにし, 初診段階でA群と鑑別できるかどうかを検討しようとした. そのため, 開胸肺生検・剖検で診断された (山中): B群8例 (男7: 女1, 56.7歳) の全臨床経過および検査成績をA群5例 (男4: 女1, 54.4歳) と対比した. B群にのみ粉塵関連の職業歴3例と喀痰の持続7例を認めた. 初診前の有症状期間はA群に比べ長く (1.6年: 0.6年), バチ状指は多かった (6例: 1例) がツ反硬結は少なかった (1例: 5例). X線上の胸膜肥厚像は高率 (6例: 0例) だが, 横隔膜挙上像の率は低かった (2例: 5例). 最終観察時点で半数が生存し, 罹病期間は全体で6.9年, 死亡例は8.8年で, A群 (全例死亡, 3.5年) に比べ転帰は良好であった. 以上, B群はA群に比して予後が良好で感染の関与が考えられ, 初診時に持続性の喀痰, バチ状指, 胸膜肥厚像が多く, 横隔膜挙上像とツ反硬結が少ない点より鑑別はほぼ可能である.
  • 佐久間 勉, 仲田 祐, 藤村 重文
    1994 年 32 巻 7 号 p. 632-637
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    緑膿菌が肺胞内蛋白と水分の輸送に及ぼす影響を検討した. 麻酔下の家兎に131I-アルブミンを静脈内投与後, 107あるいは109CFUの緑膿菌 (PAO1), 3μCiの125I-アルブミン, 3mgのエバンスブル-を3ml/kgの5%アルブミン溶液に溶解し, 右肺胞内に注入した. 8時間後に肺を摘出し気道内液を採取して, アルブミンと水分の輸送を計算した. 血清の影響を調べるためアルブミンの代わりに自己血清を注入した. その結果, 109CFU緑膿菌では肺胞から血中および血中から肺胞へのアルブミン輸送が増加し, 肺胞からの水分輸送は15%減少した. 107CFU緑膿菌と血清では蛋白および水分輸送に有意な変化を示さなかった. 109CFU緑膿菌では血液, 肝臓, 右胸水で緑膿菌が培養された. 以上の結果より緑膿菌は肺胞上皮細胞を介するアルブミンの輸出入を増加させ, 水分輸送を減少させる. 緑膿菌の肺胞上皮細胞傷害は緑膿菌数に依存する. 血清は緑膿菌の肺胞上皮細胞傷害を抑制しない.
  • 藤田 次郎, 根ケ山 清, 徐 光, 北条 聡子, 瀧川 圭一, 山岸 善文, 宮脇 裕史, 藤田 俊和, 山地 康文, 岡田 宏基, 高原 ...
    1994 年 32 巻 7 号 p. 638-643
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1992年12月の期間に当院第1内科にて入院加療を行った症例のうち, 喀痰, 咽頭ぬぐい液, 含嗽水, 血液, または剖検肺より Xanthomonas maltophilia (X. maltophilia) が検出された68例を対象に, 基礎疾患の種類, 直前に使用した抗生物質, X. maltophilia によると考えられた肺炎を合併した10症例の臨床像, および本菌の抗生物質感受性などについて検討した. 本菌は重篤な基礎疾患を有する症例に検出され, また肺炎の起炎菌となりうることが示された. 大多数の症例で本菌の出現以前に, 抗生物質の投与がなされていた. 薬剤感受性検査では, minocycline 100% (49/49), latamoxef 98.5% (64/65), carumonum 96% (24/25), sulbactum/cefoperazone 86.9% (20/23), ofloxacin 70.7% (48/56) などが本菌に抗菌力を有していた. X. maltophilia による colonization および院内感染は, 特に免疫抑制患者においては問題となりうると考えられた.
  • 南部 静洋, 玉村 裕保, 大口 学, 毛利 雅美, 小林 有希, 山之内 菊香, 栂 博久, 大谷 信夫
    1994 年 32 巻 7 号 p. 644-649
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    放射線治療の気管支動脈系への影響を検討する目的で, 胸部放射線治療後に気管支動脈造影を施行した9例 (男性: 8例, 女性: 1例, 平均年齢63.3歳) の気管支動脈造影所見を検討した. 放射線治療後に完全寛解となった小細胞癌1例を除く8例の放射線治療後の気管支動脈は中枢部から末梢の腫瘍濃染部まで造影可能であった. また放射線肺臓炎を合併した5例では放射線肺臓炎部位に一致した気管支動脈の血管増生を認めた. 放射線治療後の局所再発2例と放射線治療及び気管支動脈内抗腫瘍薬注入療法の効果不十分な2例に対し, 放射線治療後さらに気管支動脈内への抗腫瘍薬の注入を施行し, 副作用なく部分寛解へと導入できた. 放射線治療が気管支動脈系に及ぼす損傷は軽度であり, 放射線治療後の局所再発例や放射線治療の効果が不十分な症例では気管支動脈からの抗腫瘍薬の注入は考慮しうる治療法の一つと考えられた.
  • 小野 貞文, 植田 信策, 佐久間 勉, 野田 雅史, 田畑 俊治, 星川 康, 芦野 有悟, 谷田 達男, 小池 加保児, 藤村 重文
    1994 年 32 巻 7 号 p. 650-654
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ヒト肺循環に対するホスホジエステラーゼ阻害薬 (アムリノン) の効果の一端を解明することを目的とし, ヒト摘出肺動脈切片を用い, その効果について検討した. アムリノンは, ヒト摘出肺動脈切片を濃度依存性に拡張させた. この拡張作用は cyclooxygenase inhibitor, あるいは EDRF 合成阻害剤により抑制されず, 血管内皮を介しない肺血管平滑筋に対する直接作用である可能性が示唆された. さらに, アムリノンを添加した肺動脈切片のホモジェネートの上清液中では, cAMP 含量の増加を認めた. 以上より, ホスホジエステラーゼ阻害薬は, ヒト肺動脈に対して血管内皮を介しない拡張作用を示し, その機序として, cAMP 増量を介する可能性が示された. 本薬剤が, 強心作用のみならず, 肺血管拡張作用を有することから, 種々の原因による肺高血圧症, 及び右心不全に対し, 有効な治療薬となり得る可能性が示唆された.
  • 小西 一樹, 毛利 孝, 小島 ゆき, 千田 恵美, 菅原 和重, 阿部 和康, 坂東 武志, 石井 宗彦, 田村 昌士
    1994 年 32 巻 7 号 p. 655-661
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    なめこ栽培に従事する人々の中から, 3例の過敏性肺炎患者を経験し, それがなめこ胞子の吸入に起因することを確認した. いずれの患者も空調設備が施されたハウス内でのなめこ栽培に2年~10年間従事しており, 室内での高密度のなめこ胞子の吸入曝露の結果発症したものと考えられた. 15名のなめこのハウス栽培従事者の検診を行い血清を得た. その中になめこ胞子抗原に対する沈降抗体陽性者が6名存在したが彼らはすべて無症状であり胸部聴診所見, 胸部X線写真に異常所見はみられなかった. 一方, なめこの露地栽培従事者17名の中には抗体陽性者を見つけることができなかった. 酪農従事者にみられる沈降抗体陽性の無症候者がなめこ栽培業者にも存在することが明らかになった. 栽培形態の変遷が新しいタイプの過敏性肺炎の原因となりうる具体的な例であり, 職業性肺疾患として産業医学的見地からも貴重な経験と考えられたので報告する.
  • 稲田 俊雄, 井手 宏, 塩見 勝彦, 津村 眞, 中村 之信, 影山 浩
    1994 年 32 巻 7 号 p. 662-665
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性. 肺炎の診断のもと療養中, 右背部に圧痛が出現したため精査目的にて紹介となった. 胸部X線写真では右下肺野に粒状, 網状影を認め, 胸膜肥厚を伴う胸水貯留を認めた. 超音波検査では圧痛部に一致して, 内部が均一な低エコーの cystic mass を認めた. この病変は右腎の背側で, 右腸腰筋の腹側に位置していた. CTでこの病変の内側は water density で, marginal enhancement を伴っており, 膿瘍と考えられた. 結核性膿胸に伴う流注膿瘍と考え右背部の膿瘍部を試験穿刺したところ, 得られた膿性液より M. tuberculosis が分離同定された. 抗結核療法を施行し, 症状の軽減および病変の範囲確定の目的にてドレナージを行った. ドレナージチューブよりの造影により膿瘍腔は瘻孔を経由して右胸膜腔に連続する事が判明した. 流注膿瘍は脊椎あるいは関節の結核性病変に伴うものとされるが, 本症例ではいずれの病変も指摘されず, きわめて稀な症例と考えられた.
  • 池田 基昭, 中田 正幸, 山崎 純一, 森下 健
    1994 年 32 巻 7 号 p. 666-670
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性. 主訴は息切れおよび下肢浮腫. 既往歴に特記すべきことなし. 以前より息切れおよび下肢浮腫を認め, 近医にて慢性心不全の診断で加療を受けていた. 今回息切れが増強してきたため, 平成4年7月6日精査目的にて入院となった. 入院時, 胸部X線写真ではCTR58%, 心電図では心房細動およびII・III・aVFで陰性T波を認めた. 心臓カテーテル検査では冠動脈には異常を認めず, 壁運動も良好であった. 一方, 右心カテーテル検査では, 肺動脈圧60/21/34mmHg, 右室圧40/9/20mmHgであった. 99mTc-MAA肺血流シンチにて多発性に欠損像を認め, 慢性肺血栓塞栓症による二次性の肺高血圧症と診断した. PGI2誘導体を経口投与し1ヵ月後に施行した肺血流シンチ及び右心カテーテル検査で著明な改善を認めた. 今回, PGI2誘導体により改善が認められた慢性肺血栓塞栓症による肺高血圧症の一例を経験したので報告する.
  • 春名 徹也, 望月 吉郎, 中原 保治, 河南 里江子, 河村 哲治, 橋本 尚子, 露口 一投, 松下 葉子
    1994 年 32 巻 7 号 p. 671-675
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ミノサイクリン (以下 MINO) により発症した気管支喘息を伴う薬剤性肺炎を報告した. 症例は30歳女性, 右上葉のマイコプラズマ肺炎に対して MINO の投与受け臨床症状軽快するも, 投与14日目頃より喘息, 咳嗽, 呼吸困難出現し, 胸部X線写真にて新たに左肺門部に浸潤影認め当院入院. 入院時の気管支肺胞洗浄にて著明な好酸球増多有り, 薬剤関与を考え MINO を中止とし, プレドニゾロン投与にて, 臨床症状, 胸部陰影は改善した. 以上の臨床経過と MINO 内服による誘発試験にて, 気管支喘息の再現がみられたことより MINO による気管支喘息を伴う薬剤性肺炎と診断した.
  • 森田 志保, 本田 泰人, 藤島 卓哉, 平澤 路生, 田中 裕士, 佐藤 昌明, 阿部 庄作
    1994 年 32 巻 7 号 p. 676-679
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性. 咳嗽, 血痰出現し, 精査目的に当科入院. 画像上, 病変は左肺尖部に存在し, 空洞を有する結節性病変であった. 確定診断の目的で経気管支肺生検を施行, 組織学的に好塩基性の放線菌顆粒を認め, 肺放線菌症と診断した. 治療として, ピペラシリン, クリンダマイシンの点滴治療およびシプロフロキサシンの内服治療を行い, 著明な改善を認めた.
  • 竹下 啓, 寺嶋 毅, 浦野 哲哉, 山口 佳寿博, 金沢 実, 泉 陽太郎, 柿崎 徹, 菊池 功次, 小林 紘一, 向井 万起男
    1994 年 32 巻 7 号 p. 680-684
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    巨大胸腺嚢腫を伴った Hodgkin 病の1例を報告する. 症例は26歳男性で, 平成5年7月, 健康診断の胸部X線写真で異常陰影を指摘された. 胸部CTで前縦隔に一部が充実性で大部分が嚢胞性の巨大な腫瘍と傍大動脈弓リンパ節腫脹を認めた. 嚢胞内容は黄褐色の混濁した液体で悪性所見を認めなかった. 胸骨縦切開し, 嚢胞状の腫瘍と周囲のリンパ節を摘出した. 約450mlの黄褐色の液体を含む18×10×2cmの腫瘍には, 嚢胞壁に胸腺上皮組織, Reed-Sternberg 細胞ならびにリンパ球浸潤を伴う結節病変を認め胸腺嚢腫を伴う Hodgkin 病と診断した.
  • 佐藤 功, 川瀬 良郎, 小林 琢哉, 三谷 昌弘, 田邉 正忠, 津内 保彦, 瀬尾 裕之
    1994 年 32 巻 7 号 p. 685-688
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は17歳女子高校生で, 神経性食思不振症にて当院に入院した. 入院時の胸部X線写真とCTにて各種軟部気腫, すなわち縦隔気腫, 皮下気腫, 後腹膜気腫に加え, 肺の血管や気管支の周囲間質の気腫である肺間質気腫と, 脊椎内の脊髄の硬膜外の気腫である硬膜外気腫を認めた. これら気腫の成因は, 肺胞の破壊による空気が血管や気管支の周囲間質を通って縦隔に達し, さらに縦隔内圧の上昇により皮下や脊椎内にも達するとされている. 肺間質気腫は年齢にかかわらず陽圧呼吸の症例や喘息例で, また, 硬膜外気腫も喘息例で報告されているが, 神経性食思不振症でのこれらの軟部気腫の合併例の報告は検索し得ず, 極めて稀な症例と考え報告する.
  • 中野 寛行, 川崎 雅之, 橋本 修一, 松元 幸一郎, 松木 裕暁, 八並 淳, 荻野 英夫, 中西 洋一, 阿部 正義, 原 信之
    1994 年 32 巻 7 号 p. 689-693
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性. 1983年8月より11月にかけて呼吸困難が出現したが自然軽快した. 翌年8月に症状再発時に当科へ入院した. 精査の結果, 1) TBLBにて肉芽腫が検出されたこと, 2) 血清の Trichosporon cutaneum 抗体が陽性であったこと, 3) 同菌の吸入誘発試験が陽性であったこと, 4) 住居から同菌が分離されたことより夏型過敏性肺臓炎と診断された. 退院後転居したが, 掃除のために定期的に以前の家に出入りしており, 胸部レ線上肺の線維化は徐々に進行していた. 発症より9年後に労作時呼吸困難の増悪を主訴に再入院した. 開胸肺生検では肉芽腫ならびに線維化が認められ, 夏型過敏性肺臓炎の慢性化例として矛盾しない所見と考えられた. 本症例は発症時の検査成績, 臨床経過, ならびに再入院時の肺生検所見より夏型過敏性肺臓炎の慢性化例と診断した. 本症例は夏型過敏性肺臓炎の慢性化の機転を考える点で貴重な1例と考えられた.
  • 長岡 博志, 田代 隆良, 平井 一弘, 増田 満, 山崎 透, 永井 寛之, 那須 勝
    1994 年 32 巻 7 号 p. 694-699
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 右背部痛, 複視, 眩暈を主訴に当科を受診した. 入院時現症では右側胸部に33×25mmの皮下腫瘤が認められた. 胸部X線写真および胸部CTでは椎骨の破壊を伴う50×30mmの右上縦隔腫瘍が認められ, 頭部MRIでは頭蓋底部に骨破壊性の腫瘍が認められた. 胸壁腫瘤の経皮針生検および縦隔腫瘍の穿刺吸引細胞診より, 縦隔原発の malignant hemangiopericytoma とその胸壁および頭蓋底部転移と診断された. また, 腹部CTでは肝右葉に65×60mmの腫瘍が認められ, 経皮針生検により肝細胞癌と診断され, 本例は重複癌と考えられた. Cyclophosphamide, vincristin, pirarubicin, dacarvazine による抗癌化学療法 (CYVADIC) と放射線療法を施行したが, 初診より5ヵ月後に死亡した. 縦隔原発 malignant hemangiopericytoma はまれであり, 本邦報告例7例を集計して報告した. 著者らが検索した範囲では, 他臓器癌との合併は本例が初めてである.
  • 白井 敏博, 佐藤 篤彦, 千田 金吾, 早川 啓史, 安見 敏彦
    1994 年 32 巻 7 号 p. 700-703
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性で, 3ヵ月前から自覚していた労作時呼吸困難が増強したため, 1990年12月精査入院となった. 口唇にチアノーゼがあり, 胸部X線上心拡大と心電図, 心エコーで右心負荷所見が認められた. 99mTc-MAA肺血流シンチでは両側肺に多発性の欠損像がみられ, 81mKr肺吸入シンチとの較差が明らかであった. 下肢の静脈造影で右大腿静脈血栓の存在が確認されたことなどから, 反復性肺血栓塞栓症と診断した. また, 血液凝固線溶系検査では, ループスアンチコアグラントと抗カルジオリピンIgG抗体が陽性であった. ヘパリンおよびワーファリンによる抗凝固療法と Greenfield の下大静脈フィルターを留置することにより自・他覚所見は改善し,発症後13ヵ月間再発はみられていない. 退院時には抗リン脂質抗体はいずれも陰性化していた. 本症例は自己免疫疾患を合併しない原発性抗リン脂質抗体症候群の1例で, 抗リン脂質抗体は増悪期のみ一過性に陽性を示した.
  • 松岡 勝成, 桑原 正喜, 糸井 和美, 高田 哲也
    1994 年 32 巻 7 号 p. 704-708
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我国では膿胸の原因として細菌性, 結核性のものが多く赤痢アメーバは稀である. 今回我々は, アメーバ性肝膿瘍に続発したアメーバ性膿胸を経験したので報告する. 症例は49歳の男性. 既往歴, 家族歴に特記すべきことはない. 呼吸困難を主訴として当科外来受診し, 胸部X線にて右側胸水貯留を指摘された. 胸腔ドレナージの際に, 赤褐色膿性の, いわゆるチョコレート様の胸水がえられた. 腹部CTにて肝膿瘍が認められ, 血中抗赤痢アメーバ抗体も高値でアメーバ性肝膿瘍及びアメーバ性膿胸と診断した. 持続胸腔ドレナージ, 経皮的肝膿瘍ドレナージを施行するとともにメトロニダゾールの投与を行い, 良好な経過をとった. 近年, 赤痢アメーバ感染症は増加傾向にあり, 性行為感染症, 日和見感染症として注目されている. 膿胸及び胸水の鑑別診断に赤痢アメーバも考慮する必要があると思われる.
  • 西川 正憲, 池田 大忠, 鈴木 勇三, 武藤 理恵, 牧野 達郎, 村澤 章子, 北村 均, 鈴木 俊介, 大久保 隆男
    1994 年 32 巻 7 号 p. 709-713
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 男性, 事務職員. 血痰を主訴に受診した近医で, 胸部レ線写真上左下肺野に4×5cmの孤立性結節影を発見された. 胸部CT写真では左S6からS9+10にかけて中心部に低密度領域を伴う結節影があり, ガリウムシンチグラムでも同部に一致してRIの強い取り込みを認めた. 気管支鏡検査では左B9, B10ともに亜区域支レベルで粘調で白色の粘液による閉塞を認めたが, 生検組織所見は非特異的炎症性変化であった. CT下経皮肺生検で, 多数の foamy macrophages とリンパ球, 形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤を認め, リポイド肺炎が疑われた. 気管支鏡下生検と喀痰細胞診では悪性細胞は検出されなかったが, 肺癌合併の可能性を否定しきれず, また血痰が持続することもあって,左下葉切除術を施行した. 切除肺の割面にいわゆる golden pneumoniaの病変が認められ, 組織学的にもリポイド肺炎に一致する所見のみであった.
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