日本胸部疾患学会雑誌
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明らかな腹水貯留を伴わずに右側大量胸水を発現した肝硬変の1例
雨宮 徳直西 耕一大森 俊明大家 他喜雄明 茂治藤村 政樹松田 保
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1994 年 32 巻 8 号 p. 796-802

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抄録

症例は80歳の男性で, 食欲不振, 咳漱, および労作時呼吸困難を主訴に来院し, 胸部X線写真にて右側大量胸水を指摘され, 精査のため入院となった. 胸水の原因は, 当初不明であったが, 性状は漏出性であった. 労作時呼吸困難を呈していたため, とひあえず胸腔ドレナージを行い, 胸水は一旦消失した. しかし, ドレナージ中止後3日で再度右側大量胸水を認め, 精査の結果, 肝硬変が原因疾患と判明した. 通常, 肝硬変患者に胸水が出現するときは, ほとんどの場合腹水を伴うが, 本症例では, 画像詞断で指摘できるような明らかな腹水を経過中1度も認めなかった点が稀であった. さらに, 本症例では, 経横隔膜的経路の存在が, 99mTc-sulfur colloid を用いた検査で間接的に証明され, この経路の存在が明らかな腹水を伴わずに胸水が発現した要因の一つと考えられた.

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