1994 年 32 巻 9 号 p. 894-898
症例は48歳, 男性. 上腹部痛, 頸部腫瘤のため入院. 胸部X線写真, CT, MRIで左S10の腫瘍, 肺門, 縦隔リンパ節腫大を認め, 気管支鏡下生検にて小細胞癌と診断. 腹部超音波で多発する肝転移を認めた. Carboplatin, Ifosfamide, Etoposide による化学療法を施行, 2クール終了時PRと判定され持続. 4クール終了直後より肝障害が出現, 約2週間後肝性脳症となり, 血漿交換など施行するも3日後死亡. 入院時陰性のHBs抗原, HBe抗原の陽性化を認めB型劇症肝炎と診断. 悪性腫瘍化学療法中の劇症肝炎の発症は本邦において約20例の報告があるが, 血液造血器疾患症例のみで, 肺癌での報告はない. 肺癌化学療法においても, 支持療法の進歩により Dose-Up が可能となり, 免疫能に及ぼす影響の増大などから肝炎の劇症化が増加してくる可能性が考えられる.