抄録
肺癌に伴う肺梗塞症例の, CT像を中心とした画像とその病理所見とを対比し, 肺梗塞の診断に有用と思われるCT所見とその成因を検討した. 1980年から1990年までの11年間に当院で施行された肺癌切除518例中16例 (3%) に肺梗塞の合併が認められ, これらの症例に剖検1例を加えた17例を対象とした. 男13例, 女4例, 平均年齢56歳. 腫瘍の内訳は腺癌8例, 扁平上皮癌6例, 腺癌扁平上皮癌2例, 小細胞癌1例. 画像で梗塞像を確認出来た8例では, 肺癌に伴う肺梗塞の特徴的なCT所見として, a. 肺癌と同一肺葉内でその末梢に存在. b. 直径10~25mm大で辺縁不明瞭な結節影. c. 胸膜面に接する結節影と, 胸膜面と離れた結節影がほぼ同じ割合でみられる. との結果が得られた. 1例では経時的な結節影の追跡によりそのサイズの縮小, 辺縁の明瞭化を確認出来た. 肺梗塞の原因の殆どは腫瘍の中枢進展に伴う中枢側肺動静脈狭窄によるものであった.