実験的微小肺塞栓に関わる一酸化窒素 (NO) の役割について検討した. ラット摘出灌流肺を用い, 表面平滑な latex microsphere (MS: 径30μm) と表面に複数の棘を有する石松子 lycopodium spore (LP: 径28~30μm) を肺動脈内へ反復投与した際の平均灌流圧の変化率 (%ΔmPA) をNO合成阻害薬L-NMMA 投与・非投与下で比較した. MS (LP) 5回投与前後における acetylcholine (Ach) に対する反応性についても検討した. 各回の%ΔmPAはMSに比してLPが有意に大であった. L-NMMA 投与下, MSによる%ΔmPAに有意な変化はなく, LPのそれは非投与時に比して有意に大であった. Ach による一過性の弛緩反応はMS反復投与後にも認められたが, LP反復投与後には逆に収縮反応を呈した. 2種類の微小肺塞栓における昇圧反応の差は塞栓子の形状の差に基づくと考えられ, LP反復投与による昇圧反応の増強には肺血管内皮障害によるNOの産生低下が関与していることが示唆された.