日本胸部疾患学会雑誌
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低酸素曝露が肺胞上皮のイオントランスポートに及ぼす影響
鈴木 聡星川 康小野 貞文佐久間 勉小池 加保児谷田 達男藤村 重文
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1996 年 34 巻 1 号 p. 52-56

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抄録

亜急性の低酸素曝露が肺胞上皮のイオントランスポートに及ぼす影響を調べるために, 我々はラット摘出肺の気道をアルブミン液で満たし, 肺胞水分クリアランスを測定した. 先ず, 肺胞水分クリアランスは肺灌流を行わなくともインキュベーション2時間にわたり直線的に上昇すること, その機序が能動的Na+イオン輸送に依存していることを明らかにした. 次いでこのモデルを適用し, 48時間の低酸素曝露 (FiO2=0.1) が肺胞水分クリアランスを減少させることを見いだした. 対照群では肺胞水分クリアランスはアミロライド (Na+チャネルプロッカー) やウアバイン (Na+-K+-ATPase インヒビター) の存在下で有意に抑制されたが, 低酸素曝露肺ではこれらの抑制効果は認められなかった. このことは低酸素曝露による肺胞水分クリアランスの減少にはこれらNa+イオンの通過経路にあたる細胞膜蛋白の機能低下が関与していることを示している.

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