日本胸部疾患学会雑誌
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気管支胆管瘻の1例
西村 純子中川 義久坂田 哲宣志垣 信行菅 守隆安藤 正幸
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1996 年 34 巻 6 号 p. 689-693

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抄録

57歳女性. 先天梅毒を認める. 以前より, 感冒症状出現時に黄色漿液性喀痰を喀出していた. 今回, 湿性咳嗽, 発熱を主訴として入院した. 入院時, 多発性気管支肺炎像を認めると同時に右中下葉の含気の低下, 胆石胆嚢炎, 麻痺性イレウスを合併していた. 意識レベルの低下認めることより, 誤嚥性肺炎を考え, 抗生剤を投与するも改善せず, 黄色漿液性胆汁様喀痰の喀出が持続した. 気管支鏡により, 右底幹より胆汁の持続的流出を認め, 気管支胆管瘻と診断した. 瘻孔閉鎖目的にて緊急開腹術を施行し, 肝右葉の著明な萎縮と肝左葉の腫大, 肝右葉と横隔膜の癒着, 感染胆汁を含む腫大した胆嚢, 大血管, 胆管の偏位, 脾腫が認められた. 術中のTチューブ造影にて, 右肝内胆管と肺の右底幹枝間に気管支胆管瘻が確認されたが, 緊急手術後の肝腎機能低下により二期手術を行い得ず, 気道, 胆道系の感染と肝腎不全にて死亡した. 本症は, 本邦では極めて稀とされており, 貴重な症例と考えられ報告した.

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