1996 年 34 巻 7 号 p. 785-789
呼吸不全を伴う両側同時喀血は稀であり, その治療には多くの困難を伴う. 症例は51歳と63歳の女性で肺結核と喀血の既往歴があり, 前者は在宅酸素療法を, 後者は気管支動脈塞栓術を受けている. 喀血部位は左肺底枝と舌枝で, 対側は右上葉後枝と前枝であった. 出血のコントロールは左主気管支をフォガティカテーテルによるバルーンタンポナーデと, 対側主気管支への片側挿管で気道を確保し, レスピレーターによる呼吸管理下に出血に係わる体循環動脈をゲルフォームで塞栓した. 対側同時喀血には片側挿管チューブのカフによる上葉気管支入口部への圧迫止血を試み, 止血した. その後, 後者では時に喀血を来し, 胸部X線でも肺浸潤影の増悪を認め, 非定型抗酸菌を検出した. エリスロマイシンと抗結核剤の投与で肺浸潤影の改善とともに喀血は消失した.