抄録
これまで肺結核症の診断のために種々の血清学的方法が試みられてきたが, 臨床上で応用されたものはなかった. この研究で結核菌H37Rv株から抽出したトレハロース・ダイマイコレートに高極性糖脂質を加えた糖脂質抗原 (TBGL) を用いるELISAで結核患者92例, 陳旧性肺結核患者36例, 非結核性抗酸菌症45例, 抗酸菌症以外の疾患対照31例の血清の抗体価を測定し, その有用性について検討した. 肺結核症では92例中62例 (67.4%) が陽性となり, 対照 (31例中2例6.5%) と比較して陽性率に有意の差が見られた (p<0.0001). その陽性率と排菌量との間で, さらに陽性率とX線学会病型との間で関連が見られた. 活動性肺結核症例中塗抹陰性であった36例中18例 (50%) が陽性の結果を示したことから, 肺結核症の診断特に塗抹陰性例に有用であると結論した. 非結核性抗酸菌症についても塗抹陰性例に有用であった.