日本胸部疾患学会雑誌
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BCG膀胱内注入療法後の重症間質性肺炎の1例
猶木 克彦山口 佳寿博副島 研造青木 琢也井上 卓佐藤 長人島田 尚登福永 興壱工藤 裕康金沢 実
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1997 年 35 巻 12 号 p. 1383-1388

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抄録

症例は61歳男性. 健診での血尿を契機に膀胱上皮内癌と診断され, BCG膀胱内注入療法を3回施行された後, 肝障害が出現したため入院となった. 入院後胸部X線写真上著明な両側びまん性肺野濃度上昇および重篤な低酸素血症を認めた. BAL所見はリンパ球優位の細胞数増多, CD4/CD8値上昇, TBLBで非乾酪壊死性肉芽腫を認め, 喀痰, 尿, 血液, BAL液中のBCG菌は陰性, BCGに対する血液リンパ球刺激試験 (DLST) は強陽性であった. 以上より, BCGに対する過敏性間質性肺炎と診断し, 抗結核薬, ステロイドパルス療法, ステロイド維持療法を施行した. これらの治療により胸部X線写真所見, 低酸素血症は改善しBAL液のリンパ球比率, CD4/CD8値も低下した. 本症例は膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法によって発症した重症間質性肺炎の一例であり, 治療に伴うBAL液の細胞成分の推移を経時的に観察し得た貴重な症例と考えられる.

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