日本胸部疾患学会雑誌
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遅い診断から救命しえたレジオネラ肺炎の1例
辻 博高桜 英輔
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1997 年 35 巻 5 号 p. 566-570

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抄録

症例は72歳の男. 難治性気管支喘息治療のためプレドニゾロン服用中に喘息発作の増悪で入院. 右下肺に陰影を認め肺炎の併発と考えプレドニゾロンの増量とアミカシンを投与した. これにより喘息発作は改善したが肺炎は増悪した. 陰影は左下肺を除く全肺に広がり, 呼吸不全から人工呼吸器管理となった. 肝障害も認められた. 抗生剤を変更してイミペネム/シラスタチン, ピペラシリン, ゲンタマイシンと併用してクラリスロマイシン, エリスロマイシン, ミノサイクリンを順次投与した. 発症から約1ヵ月後にレジオネラ肺炎と診断し, レボフロキサシン400mg経口投与とイミペネム/シラスタチン1g静注の併用により治療した. これにより肺炎は軽快し, 肝障害も徐々に改善した. 本症の診断確定には時間を要することが多い. 本例では診断確定までの間レジオネラ菌にも抗菌活性を有する抗生剤を使用したことが, 遅い診断にもかかわらず救命につながったものと考えられた. 原因菌不明の肺炎でβ-ラクタム剤やアミノ配糖体剤が無効の場合には, 本症も考慮して治療にあたる必要があると考えられた.

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