日本胸部疾患学会雑誌
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縦隔原発絨毛癌の1例
中原 快明福山 浩二小島 昌貴永田 正喜松原 紳一富永 正樹内藤 恵子林 真一郎
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1997 年 35 巻 9 号 p. 1020-1024

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抄録

症例は, 27歳男性, 右胸痛と呼吸困難を主訴に来院. 胸部X線写真および胸部CTでは径8cmの前縦隔腫瘍と右胸水を認め, 身体所見で女性化乳房を認めたことから縦隔胚細胞腫を疑った. 血清β-HCGは500ng/mlと高値であり, エコーガイド下に施行した経皮的腫瘤生検にて絨毛癌と確定診断した. Cisplatin, Etoposide, Bleomycin によるPEB療法, Methotrexate, Actinomycin-D, Cyclophosphamide によるMAC療法施行後, β-hCGは0.9ng/mlまで低下した. 縮小した原発巣に対し外科治療を追加したが, 切除標本は腫瘍の壊死と癌細胞の残存を認めた. 術後, 肺内転移と癌性心膜炎にて急速に再燃したため, 末梢血幹細胞移植による大量化学療法を試みたが, 脳転移をきたし発症後約9ヵ月で死亡した. 縦隔原発絨毛癌の治療法は確立されておらず貴重な症例と考えられたので報告した.

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