日本胸部疾患学会雑誌
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縦断観察による成人男性の一秒量, 努力性肺活量の加齢低下
中館 俊夫
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1997 年 35 巻 9 号 p. 954-959

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抄録

243名の職域の健常な成人男性の一秒量と努力性肺活量を年1回7年にわたって測定し, 縦断的に得た低下量を, これまでわが国で報告されている断面的な基準式の年齢回帰係数から予測される低下量と比較した. 本研究では, 身長を1.65mと仮定した場合, 1年あたりの減少はい秒量で22ml, 努力性肺活量で11mlであった. しかし断面的な基準式での年齢による差は, 同身長を仮定して, 1歳あたり一秒量で22から31ml, 努力性肺活量で16から25mlであった. さらに, 本研究では努力性肺活量の減少の度合いが20歳代と30歳以上では有意に異なっていたのに対し, 断面的な基準式では10代後半から60歳代までの広い範囲を年齢の一次式で表していた. これらの結果は時系列的な肺機能測定値を断面的な基準式に基づいて評価すると偏りが生じる可能性があることを示唆しており, その適切な評価のためには, 縦断的な基準値を作成する必要がある.

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