今回われわれは, Crohn病の診断のもと手術を行ったが, 術後に回腸原発のsignet ring cell carcinomaと確定診断された極めて稀な症例を経験したので報告する. 症例は45歳, 男性. 腹痛・嘔吐出現し近医にて腸閉塞の診断のもと保存的加療されるも改善傾向なく, 小腸造影検査にてCrohn病を疑われたため当院転院となった. Crohn病に伴う小腸狭窄の診断のもと開腹手術を施行. 回腸末端に約15cmにわたる壁の硬化と著明な狭窄を認め, 回盲部切除術を施行した. 切除標本にても縦走潰瘍を認め, Crohn病が最も考えられたが, 病理組織学的検査にてsignet ring cell carcinomaと診断された. 術後に全身検索するも原発巣と考えられる病変を認めず, 回腸原発と診断した. 術後化学療法を施行したが2年後に腹膜播種をきたし, 2年3カ月後に死亡した. 症例の集積による適切な術式・化学療法の確立が望まれる.