日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
原発性肺癌術後早期に血球貪食症候群を発症した1例
根津 賢司高橋 広松岡 欣也佐川 庸酒井 堅
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 68 巻 10 号 p. 2476-2481

詳細
抄録

症例は66歳, 男性. 右肺上葉腺癌c-T2N0M0 stage IBに対して, 右肺上葉切除+ND2aを施行し, 順調に経過していたが, 術後3日目の血液検査にてWBC500と急激な白血球減少, 血小板も9.3万と減少し, 同日夜間より38.4度の発熱を認めた. まず血液内科と相談し, 術中術後の薬剤性の再生不良性貧血, もしくは感染による播種性血管内凝固症候群 (DIC) を疑い, メシル酸ガベキサート (1000mg/day), G-CSF製剤を開始した. その後WBC220, Neut0%となり, 術後6日目に骨髄穿刺を施行し, 骨髄の低形成, 組織球による著明な血球貪食像を認め, 血球貪食症候群 (以下HPS) と診断された. 同日よりメチルプレドニゾロン1,000mg/dayを3日間のステロイドパルス療法を開始し, 以後プレドニン漸減療法に以降した. ステロイド投与開始後6日目より徐々に白血球, 血小板は増加し, 8日目に正常化した. 術後15日目の再骨髄穿刺では骨髄は正形成となり, 貪食像も消失した. 本邦における外科手術後のHPS発症報告例は本症例を含め12例であり, 文献的考察を加え報告する.

著者関連情報
© 2007 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top