日本臨床外科学会雑誌
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68 巻, 10 号
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
原著
  • 須田 健, 福永 正氣, 津村 秀憲, 杉山 和義, 永仮 邦彦, 菅野 雅彦, 吉川 征一郎, 木所 昭夫
    2007 年68 巻10 号 p. 2437-2441
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    乳頭異常分泌を呈する乳管内乳頭腫に対する乳管内視鏡下生検の有用性について検討した. 対象は1999年1月から2006年12月までに順天堂大学浦安病院外科で乳管内視鏡を施行し乳管内乳頭腫の診断を得た73例である. 乳管内視鏡下切除で腫瘤を生検し細胞・病理組織学的診断を得たのは56例であった. 乳頭腫の局在部位では主乳管, および第1分枝までの乳頭から距離の近い乳管では切除率は高率であったが, 第2分枝以降の乳管では切除率は低下した. 全切除可能であった56例中37例では乳頭異常分泌は改善した. 乳管内視鏡下切除は診断に十分な検体量を非手術的に得られ, さらに乳頭異常分泌の改善も認めることから治療にも有用と考えた.
  • 番場 竹生, 矢島 和人, 酒井 靖夫, 坪野 俊広, 武者 信行, 本間 英之
    2007 年68 巻10 号 p. 2442-2448
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    左側大腸穿孔による腹膜炎に対して手術を施行した27症例について, 選択術式別の短期および長期治療成績を検討した. 対象症例を一期的切除・再建を施行した9例 (A群) と人工肛門造設を施行した18例 (B群) とに分け比較検討した. 臨床病理学的因子の比較では手術までの経過時間がA群で長かった (P=0.049) が, それ以外は有意差を認めなかった. 術後早期の合併症率はA群 : B群=66.7% : 83.3%, 死亡率はA群 : B群=11.1% : 22.2%で有意差は認めないものの, B群の短期成績は不良であった. 一方で累積3年生存率はA群 : B群=53.3% : 41.9%であった. 多変量解析では, 原疾患 (P=0.049), SIRSの有無 (P=0.021), 術後臓器不全の数 (P=0.007) が独立した予後因子であった. 左側大腸の穿孔性腹膜炎症例では, 的確な術式選択と術後の集中治療により比較的良好な長期成績が得られているものと思われた.
  • 岡 陽一郎, 浅部 浩史, 白日 高歩
    2007 年68 巻10 号 p. 2449-2458
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    10年間に当科で異物誤飲, 誤嚥の診断または疑いで受診した118症例について検討を行った. このうち異物誤飲, 誤嚥と診断されたのは小児群 (15歳以下) 47例, 成人例 (16歳以上) 18例であった. 異物なしと診断された症例は小児群51例, 成人群2例であった. 消化管異物, 気道異物ともに乳幼児と高齢者に多い傾向を認めた. 消化管異物では小児群はボタン型電池, 硬貨などX線非透過性異物が多く, 成人群は義歯とPTP (press through pack) が多かった. 診断は比較的容易で, 合併症もみられなかった. 気道異物では小児群はピーナッツを含む豆類が多く, そのほとんどがX線過性異物であったが, 成人群では歯科用金属が多く, ほとんどがX線非透過性異物であった. 小児のピーナッツ症例は診断までに時間がかかり, 摘出後も重篤な合併症をきたしていた. 異物なしと診断された症例の中に, X線透過性異物が診断できなかった症例が含まれている可能性が考えられた.
症例
  • 北村 祥貴, 呉 哲彦, 小林 弘明
    2007 年68 巻10 号 p. 2459-2463
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    外傷性喉頭損傷の2例を経験した. 症例1は56歳, 男性. 作業中に牛角にて頸部を刺され受傷. 頸部に4cmの裂創を認め, 気管支鏡ガイド下に経口的に気管挿管を施行. 頸部CTにて甲状軟骨骨折を認め, 同日喉頭截開術を施行した. 甲状軟骨は破砕されており, 一次的な修復を断念し, 喉頭皮膚瘻を作成しその下方に気管切開した. 以後保存的加療にて軽快し, 術後22日目に喉頭皮膚瘻を閉鎖し退院となった. 2例目は77歳, 男性. 自動車運転中に対向車と衝突し受傷. 救急車内で気管挿管し搬送. 多発骨折による出血性ショック状態であった. 気管支鏡, 頸部CTにて喉頭蓋断裂, 甲状軟骨骨折を認めるも, 喉頭の腫脹のため喉頭機能評価が困難であり, 気管切開施行し保存的に加療した. 結果, 嚥下障害は残るものの発声は可能となり転院となった. 喉頭損傷の治療の際には救命はもとより機能予後を考慮した治療が必要と考えられた.
  • 島影 尚弘, 田島 健三
    2007 年68 巻10 号 p. 2464-2467
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    乳房切除後リンパ管肉腫は胸筋合併乳房切除術を受けた乳癌患者でリンパ浮腫を伴った患側上肢に発症する極めて稀な予後不良の腫瘍である. 症例は73歳, 女性. 1967年10月に左乳癌にて胸筋合併乳房切除術と術後放射線照射療法を受けた. 1990年頃より左上肢の浮腫が出現し2000年12月には左上肢に多発性の紅色腫瘤が出現したため, 2001年1月に当院皮膚科を受診し転移性皮膚腫瘍が疑われ外科受診となった. 同日施行した組織生検にて乳房切除後リンパ管肉腫と診断され, 初診より5週後には左肩甲帯離断術が施行された. 2007年2月術後6年を経過したが無再発生存している. 極めて稀な疾患のため炎症性疾患と考えられ治療が遅れることが多く, 診断後の平均生存期間は11~18カ月と非常に短く早期発見治療がその予後を左右するといわれている. 今回われわれはこの稀な乳房切除後リンパ管肉腫の長期生存例を経験したので報告する.
  • 伊藤 祥隆, 奥田 俊之, 富田 剛治, 宮永 太門, 道傳 研司, 服部 昌和
    2007 年68 巻10 号 p. 2468-2471
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 男性. 2006年6月末に交通事故にて前胸部を強打, 胸痛を主訴に当院を受診した. 胸部CT検査にて胸骨骨折とともに前縦隔内にφ2.8×2.2cmの腫瘤影を認めた. 胸部MRI検査にて不均一に造影される腫瘤内部に脂肪成分を含むことから, 縦隔奇形腫と診断した. 胸骨骨折部の安定が得られた11月に胸骨正中切開による胸腺縦隔腫瘍全摘術を行った. 切除標本では通常の成熟型奇形腫に加え, その内部に異型性の強い乳頭状腺上皮を認めた. 以上より腺癌への悪性転化をきたした成熟型縦隔奇形腫と診断した. 術後経過は良好で術後7病日に自宅退院となり, 現在に至るまで無再発にて経過観察中である. 成熟奇形腫に対する外科治療を行う場合には, 稀ではあるが悪性転化の可能性を念頭に置く必要があると考えた.
  • 千堂 宏義, 松本 拓, 西村 透, 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2007 年68 巻10 号 p. 2472-2475
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性. 2003年2月下旬検診の上部消化管内視鏡検査で胃癌と診断され, 手術目的で当科紹介受診となった. 当科施行の上部消化管内視鏡検査にて, 胃体中部大彎に浅い陥凹性病変を認め, 生検でpor1と診断されたため, 3月下旬に胃全摘術を施行した. 術中, 偶然左横隔膜脚に腫瘤を発見し, 切除した. 切除した腫瘤は弾性軟で, 3.5×2.0×1.5cm大であり, 腫瘤中心部の割面では大小の嚢胞性部分があり, 一部充実性部分も認められた. 病理組織学的にextralobar pulmonary sequestrationと診断された. われわれが検索しえた範囲内では, 横隔膜下の肺葉外肺分画症の本邦報告は自験例を含めて3例しかなく, また, 腹部手術時に発見された成人肺葉外肺分画症は自験例が初めてで, 極めて稀な症例と思われたので文献的考察を加え報告する.
  • 根津 賢司, 高橋 広, 松岡 欣也, 佐川 庸, 酒井 堅
    2007 年68 巻10 号 p. 2476-2481
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 右肺上葉腺癌c-T2N0M0 stage IBに対して, 右肺上葉切除+ND2aを施行し, 順調に経過していたが, 術後3日目の血液検査にてWBC500と急激な白血球減少, 血小板も9.3万と減少し, 同日夜間より38.4度の発熱を認めた. まず血液内科と相談し, 術中術後の薬剤性の再生不良性貧血, もしくは感染による播種性血管内凝固症候群 (DIC) を疑い, メシル酸ガベキサート (1000mg/day), G-CSF製剤を開始した. その後WBC220, Neut0%となり, 術後6日目に骨髄穿刺を施行し, 骨髄の低形成, 組織球による著明な血球貪食像を認め, 血球貪食症候群 (以下HPS) と診断された. 同日よりメチルプレドニゾロン1,000mg/dayを3日間のステロイドパルス療法を開始し, 以後プレドニン漸減療法に以降した. ステロイド投与開始後6日目より徐々に白血球, 血小板は増加し, 8日目に正常化した. 術後15日目の再骨髄穿刺では骨髄は正形成となり, 貪食像も消失した. 本邦における外科手術後のHPS発症報告例は本症例を含め12例であり, 文献的考察を加え報告する.
  • 土井口 幸, 谷川 富夫, 土井 康郎, 千代永 卓
    2007 年68 巻10 号 p. 2482-2485
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は, 61歳, 女性. 喉のつかえ感があり, 本院を受診し胸部X線で左下肺野の異常陰影を指摘された. CT, MRIでは左横隔膜背側に接して境界明瞭な14cm大の腫瘍を認めた. 以上より胸膜腫瘍や横隔膜腫瘍が考えられたが確定診断がつかないので手術を行った. 胸腔鏡を挿入し, 胸腔内を観察すると, 腫瘍は横隔膜や胸壁との癒着はなく, 左肺下葉の臓側胸膜から有茎性に発生した14×9.5×4cm大の腫瘍であった. 腫瘍が大きいので開胸術に変更して, 茎を含め腫瘍から十分に距離をとって自動縫合器を用いて肺部分切除を行い摘出した. 病理所見では, 紡錘形細胞の増殖と介在する膠原線維間質を認めた. 免疫染色で, CD34とvimentin陽性, keratin陰性であり, 胸膜孤立性線維性腫瘍と診断した. 本症は術後の再発例や悪性化の報告もあり術後長期にわたる観察が必要である.
  • 杉田 諭, 佐々木 淳, 白石 憲男, 北野 正剛
    2007 年68 巻10 号 p. 2486-2489
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    食道裂孔ヘルニアは滑脱型・傍食道型・混合型に分類され, 約90%は滑脱型である. 今回, 胃全体が縦隔内に脱出する稀な混合型のヘルニアに対して, 腹腔鏡下に治療したので報告する. 患者は70歳, 女性. 数年前より胸部圧迫感が出現し, 当院受診. 上部消化管造影検査・CT・MRIにて, 胃全体が縦隔内に脱出する食道裂孔ヘルニアを認めた. 制酸剤内服にても症状が持続するため, 腹腔鏡下Nissen手術を施行した. 腹腔内を観察すると, 食道裂孔は著明に開大し, 胃全体・大網・空腸の一部が縦隔内に脱出していた. ヘルニア内容を還納後, 食道裂孔を縫縮し, 胃底部を用いて噴門形成を行った. 術後経過は良好で, 術後17日目に退院となった. 術後の上部消化管造影検査にて, 食道への逆流を認めず, 通過良好であった. 胃全体が縦隔内に脱出するようなヘルニアに対しても, 腹腔鏡下Nissen手術は安全かつ有効な治療手段と考えられる.
  • 澤田 傑, 渡辺 繁, 在原 文夫, 木村 尚哉, 白井 聡
    2007 年68 巻10 号 p. 2490-2494
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は, 52歳, 男性. 検診で受けた上部消化管内視鏡検査 (GIF) で胃潰瘍および十二指腸潰瘍と診断され他院でピロリ菌の除菌治療をうけていた. 経過観察のGIFで胃粘膜下腫瘍を指摘され当科を受診した. 来院後に再度GIFを施行し, 生検で胃悪性リンパ腫と診断し手術目的で入院した. 下部消化管内視鏡検査 (CF) でも下部直腸に粘膜下腫瘍を認め, 生検の結果, 直腸悪性リンパ腫と診断した. このため胃全摘および腹会陰式直腸切断術を同時に施行した. 病理組織検査の結果, 胃病変, 直腸病変ともにfollicular lymphomaであった. 退院後, 他院で化学療法施行し無再発生存中である. 胃悪性リンパ腫に直腸悪性リンパ腫を併存した症例は, きわめて稀と思われる. 本症例のように比較的若く体力のある症例では全身に大きな侵襲がかかるが積極的に胃全摘と腹会陰式直腸切断術を同時に行っても耐術可能であり, 術後化学療法を組み合わせることが最良の治療法と思われた.
  • 湯澤 浩之, 高尾 貴史, 草野 敏臣
    2007 年68 巻10 号 p. 2495-2499
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性. 胃癌, 多発リンパ節転移の診断で入院. 2005年2月22日からTS-1+CDDP+レンチナンの投与開始. 3月2日に突然腹痛が出現し, CTでfree airと腹水を認め穿孔性腹膜炎と診断, 緊急開腹術を施行. 胃前庭部の5cm大の腫瘍に2cm程の穿孔を認めた. 幽門側胃切除術, B-II法再建術, 腹腔内洗浄ドレナージ術を施行. 術後病理診断はCD56 (NCAM) 陽性の小細胞癌 (内分泌細胞癌) であった. 術直前のCTで縮小傾向であったリンパ節腫大が増悪したため, 術後28日目から化学療法を再開. 2クール終了後にリンパ節腫大は著明に縮小 (PR) したが, 4クール終了後に再増大していたため, 2nd lineの化学療法としてCPT-11+CDDP投与を開始. 2クール終了後にリンパ節腫大は再び著明に縮小 (PR) したが, その2カ月後には再々増大. 他院で免疫療法を施行したが, 術後331日目に癌死された.
  • 阿部 広幸, 関川 浩司, 坂本 渉, 滝田 賢一, 竹之下 誠一
    2007 年68 巻10 号 p. 2500-2503
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性. 58歳時よりT-CLL (chronic Lymphocytic Leukemia) にて当院内科にて加療中平成14年8月腹部重圧感の主訴あり, 上部消化管内視鏡施行. 胃角部に腫瘍を認め, 生検の結果Group Vであり, 平成14年10月幽門側胃切除術を施行し, pT3, pN2, CY0, fStage IIIBであった. 術後経過良好で, 平成14年12月からテガフール・ウラシル配合剤を開始したが, 消化器症状強く服用を中止した. 平成15年2月, 腹水出現し腹水細胞診にてadenocarcinoma cell陽性であり, その後状態が急速に悪化し3月に永眠した. 今回の症例を通し, T-CLL併存胃癌症例の治療法の選択に関してはより慎重に行わなければならないと思われた.
  • 瀬下 巖, 冨丸 慶人, 井出 義人, 丸山 憲太郎, 村田 幸平, 衣田 誠克
    2007 年68 巻10 号 p. 2504-2507
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 女性. 吐血, 黒色便にて受診. 右上腹部に腫瘤を触知した. 上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に腫瘍を認め, 生検にて扁平上皮癌と診断した. 膵頭十二指腸切除施行した. 病理組織診断ではわずかの高分化腺癌と大部分の扁平上皮癌からなる腺扁平上皮癌であった. 膨大動脈周囲リンパ節に転移を認めたが, 現在まで再発を認めていない. 十二指腸腺扁平上皮癌は非常に稀な症例であり, 文献的検索を加えて報告する.
  • 今村 鉄男, 剣持 邦彦, 濱田 茂, 宗 宏伸, 佐藤 英博, 下河辺 智久
    2007 年68 巻10 号 p. 2508-2511
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 男性. 上腹部痛を主訴に来院. 鎮痙剤投与にて一旦症状は改善したが翌日再び腹痛をきたし再受診した. 腹部X線・CT検査にてイレウス所見を認めイレウスチューブを挿入したが, 症状は進行し腹膜刺激症状も出現したため, 絞扼性イレウスと診断し開腹手術を施行した. 術中に小腸の絞扼は認めず, 昆布が閉塞の原因であったため, 偶発したMeckel憩室とともに切除・摘出した.
    食餌性イレウスの中には腹膜炎所見を呈し緊急手術の対象となるものがある. 本症例も手術が必要な病態であったが, 術後の検討で問診が不十分であったこと, CT検査にて食餌塊を示唆する像が得られていたことが判明し, 今後に活かすべき事項と考える.
  • 山本 澄治, 花岡 俊仁, 多田 明博, 福原 哲治, 小林 一泰, 佐伯 英行
    2007 年68 巻10 号 p. 2512-2516
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 男性. 1999年, 胃癌にて胃全摘術を受けた既往がある. 2004年5月, 全身倦怠感から近医を受診し肺炎を指摘され, 6月2日当院内科入院. 入院後イレウスと間質性肺炎を指摘された. 6月9日, イレウスの悪化がありイレウス管挿入し改善が認められた. しかし6月12日, 強い腹痛と上腹部に可動性のある腫瘤を触知するようになった. 腹部CT検査にて腸重積症と診断し, 緊急手術を行った. 空腸に約20cmにわたる順行性の重積があり, 用手整復は不可能で空腸部分切除術を施行した. イレウス管留置により発症した腸重積57例のうち胃切除症例が19例と多いものの, Billroth I法再建後が12例と最多で胃全摘後は3例であった. 胃全摘後症例では残胃が無くループをつくる余裕が少ないため腸重積を発症し易いが, 上部小腸に可動性が保たれており, Billroth I法に比べ発症が少ないものと考えられる. 胃全摘後症例のイレウス管留置には注意が心要である.
  • 今村 直哉, 前原 直樹, 佛坂 正幸, 千々岩 一男
    2007 年68 巻10 号 p. 2517-2521
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    下血を主訴とし, 術前血管造影検査と病変部へのコイルの留置が出血源の診断および術中の病変同定に有用であった, 稀な小腸Dieulafoy血管奇形の1切除例を経験したので報告する. 症例は44歳, 男性. 繰り返す多量の下血と血圧低下を主訴に近医に入院したが, 消化管の造影検査, 内視鏡検査, 腹部CTでも原因不明で紹介入院となった. 腹部血管造影検査で小腸の末梢の血管に血管外漏出を認め, コイルを留置して緊急手術を施行した. 術中遠位空腸に腫瘤様病変を認め, さらに透視下で塞栓したコイルを確認することで出血部位を同定し, 病変部の小腸部分切除を行った. 摘出標本で小さな赤色の隆起性病変を認め, 病理組織検査で病変の粘膜下に異常血管を認め, 粘膜面で破裂していた. 小腸のDieulafoy血管奇形の破裂による下血と診断した. 原因不明の消化管出血では, Dieulafoy血管奇形など稀な小腸病変が原因である可能性に注意を払う必要があると考えられた.
  • 鈴木 俊裕, 篠原 剛, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋
    2007 年68 巻10 号 p. 2522-2525
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    腸回転異常や器質的な異常を伴わない小腸捻転症は稀であり, 術前診断は困難である. 今回, 胎児期発症と考えられた腸回転異常を伴わない小腸捻転症の1例を経験したので報告する. 症例は在胎33週2日, 胎児心拍モニターにて胎児心音の低下が認められたため, 緊急帝王切開により2,062gで出生した. Apgar score2点 (1分) であったため直ちに気管内挿管による蘇生処置が施された. 出生直後より腹部膨満が極めて強く, 腹部超音波検査およびCT検査にて著明に拡張した腸管が認められた. 急性腹症の診断にて緊急開腹術を施行したところ, Treitz靱帯より60cm肛門側から40cmにわたり小腸が540度時計方向に捻転しており, 壊死していた. 壊死腸管を切除し一期的に腸吻合を行った. 術後経過は良好で術後20日目に退院となった.
  • 村田 祐二郎, 佐藤 裕二, 坂東 道哉, 服部 正一, 森 正樹, 洲之内 広紀
    2007 年68 巻10 号 p. 2526-2531
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性で, 嘔気・嘔吐, 3カ月で9kgの体重減少を主訴に受診した. 小腸造影X線検査で空腸から小腸への瘻孔を認め, さらに腹部CT・MRI検査で瘻孔部とは異なる病変が子宮・膀胱へ浸潤していた. sIL-2Rは4,290U/mlと高値であった. 開腹すると, Treitz靱帯より30cmの空腸に発生した腫瘍が, その部より肛門側20cmおよび80cmの空腸と瘻孔を形成し, さらにはじめの腫瘍より肛門側50cmの部位に独立した病変が子宮, 膀胱に浸潤していた. 病変部2カ所を含めた空腸切除と子宮摘出, 膀胱部分切除を施行した. 病理組織学的に悪性リンパ腫, Diffuse large B-cell lymphomaであった. 肉眼形態はそれぞれ潰瘍型, 動脈瘤型であった. 術後sIL-2Rは557U/mlとほぼ正常化し, 外来でR-CHOP療法施行中である. 小腸ML瘻孔形成の報告は, 本症例を含め11例で, 他臓器浸潤を伴うのは2例あり, 空腸・空腸瘻孔と多臓器浸潤を伴う例はなかった.
  • 田口 昌延, 佐藤 宗勝, 上田 和光, 石川 晶久, 品川 篤司, 奥村 稔
    2007 年68 巻10 号 p. 2532-2537
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 2002年5月, 悪性リンパ腫による小腸狭窄で近医で小腸切除と術後に化学療法を施行. 2005年11月, 頸部リンパ節に再発を認め化学療法を施行しリンパ節再発は消失した. 2006年1月頃よりイレウス症状が出現し軽快, 再燃を繰り返していた. 10月にイレウスの診断で当院入院となった. イレウス管を挿入したが症状は軽快せず, チューブは上部空腸から下行結腸へ挿入された. CT検査では空腸と下行結腸が膿瘍腔を介した瘻孔を形成していた. 小腸悪性リンパ腫の再発を強く疑い手術を施行した. Treitz靱帯近傍の空腸周囲に腫瘍を認め, 空腸と横行結腸, 下行結腸へ浸潤を認めた. 各々腸管は腫瘍を介した瘻孔を形成していた. 腫瘍を空腸, 結腸を一塊にして切除した. 病理検査で悪性リンパ腫の再発と診断した. 術後は良好に経過し, 追加治療として化学療法を施行した.
  • 関 崇, 井垣 啓, 高野 学
    2007 年68 巻10 号 p. 2538-2542
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 十二指腸潰瘍による胃切除術の既往歴あり. 2004年5月下旬, 腹痛および腹部膨満感を主訴に当院受診, 腸閉塞の診断で入院となった. 腹部CT検査で小腸の拡張像と少量の腹水貯留像および左腎に腫瘍を疑う占拠性病変を認めた. 腸閉塞は保存的治療で軽快したが左腎腫瘍に対しては肺転移と椎骨転移を認めたため2004年6月上旬よりインターフェロン治療を行った. しかし2004年6月下旬, 腸閉塞にて再入院となった. 保存的治療で改善せず, 開腹術を行った. 開腹時, 回腸末端から100cm口側で腫瘍の先進により腸重積を起こしており, 小腸切除術を行った. 病理組織学的検査で腎細胞癌の小腸転移と診断された. 術後7カ月で原病死した. 転移性小腸腫瘍のうち腎細胞癌由来のものは稀で本邦報告例は自験例を含め27例に過ぎない. 文献的考察を加え報告する.
  • 臼田 昌広, 中野 達也, 平野 拓司, 鈴木 洋, 望月 泉, 小野 貞英
    2007 年68 巻10 号 p. 2543-2547
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の男性で, 不明熱として発症して約2カ月後に消化管穿孔による腹膜炎のため緊急開腹手術となった. 小腸未分化癌の壊死穿孔による腹膜炎で, 広範囲にリンパ節転移を認めた. 術後25日で退院したが, 術後39日目に発熱を伴う癌性腹膜炎の状態で再入院し, 術後45日目に死亡した. 小腸未分化癌は病理組織学的にも診断は困難であり, 悪性リンパ腫やgastrointestinal stromal tumor, 平滑筋肉種などの間葉系腫瘍と鑑別する必要がある. 今回の症例は免疫染色によりCK-CAM5.2, vimentinが陽性であったことから未分化癌と診断しえた. 小腸未分化癌は症状が多彩で早期診断が困難と思われる. 本症例の経過からも不明熱は初期症状の一つとして念頭におく必要があると思われた.
  • 近藤 成, 坂下 吉弘, 小倉 良夫, 金 啓志, 上田 祐華
    2007 年68 巻10 号 p. 2548-2552
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 手術後約20年経過した下行結腸吻合部に, 植物種子が嵌頓しイレウスをきたした1例を経験したので報告する. 症例は57歳の女性で, 主訴は左側腹部痛. 造影CTにて下行結腸内にリング状に石灰化を伴う, 異物を認めた. 下部消化管内視鏡を行ったが, 下行結腸に全周性の狭窄を認め摘出不可能であった. 異物を含めて下行結腸切除を行った. 病理組織検査にて狭窄部分に粘膜下層以下の線維性の肥厚および固有筋層の断裂を認め, わずかに縫合糸と推察される物質に対する異物反応を認めた. 前回手術時に腸管の縫合がなされ, 同部位が狭窄をきたしていると診断した. 過去の報告例のうち多くは閉塞の原因となった部位の腸管に何らかの狭窄を伴う疾患を伴っており, 植物種子によるイレウスの症例では器質的疾患が合併する可能性も十分考慮する必要がある. また, 診断には異物誤飲や手術歴などの問診が重要であると考えられた.
  • 西村 淳, 河内 保之, 牧野 成人, 新国 恵也, 清水 武昭
    2007 年68 巻10 号 p. 2553-2557
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 男性. 2004年11月から腹痛, 下痢を反復し, 他院で胃腸炎の診断で治療されていた. 2005年6月, 腹痛の増強と尿混濁が出現. 精査で, S状結腸憩室炎による結腸狭窄と結腸膀胱瘻と診断した. 結腸膀胱瘻は, 注腸検査, 膀胱鏡検査では示現されず, 服用した薬用炭が尿中に排出されたことで確定診断した. 2005年7月腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行. 術後, 軽度の腸炎となったが軽快し, 第17病日に退院. 現在まで腹部症状無く経過している. 本症例は, 吻合のために結腸脾弯曲部の授動を要したため, 開腹で行った場合大開腹にならざるを得ない. 腹腔鏡下手術の低侵襲性が活かされた症例と考える. 本邦でも, 大腸憩室炎に対する腹腔鏡下手術が増加しているが, 結腸膀胱瘻を形成している場合開腹手術が選択される事が多いと思われる. 同様の病態に対し, 腹腔鏡下手術も選択肢の一つとしてよいと考える.
  • 徳元 伸行, 青山 博道, 石川 千佳, 平山 信男
    2007 年68 巻10 号 p. 2558-2564
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は発症当時44歳, 男性. 1994年7月近医で虫垂炎穿孔腹膜炎の診断で手術施行. 1995年3月左下腹部痛を主訴に来院. S状結腸から直腸にかけて広範な不整狭窄, 内腔は発赤腫脹, 腹部CT検査で骨盤内炎症像著明で生検は虚血性腸炎であった. 絶食1カ月で改善せず, 低位前方切除術を施行し, 非特異的腸炎の病理診断であった. 術後, 吻合部中心の狭窄, 肛門痛出現し, 病理標本の再検査を行い, 放線菌症と判明した. ペニシリンG (PCG) の大量持続静脈投与を行い, 症状の軽快を得たが, 経口抗生物質への変更で増悪し, 直腸膀胱瘻を形成した. QOLを考慮し, 2000年4月, CVポートを埋め込み, 在宅でのPCG投与としたが, 腸管狭窄に加えて, 後腹膜, 腰部皮下膿瘍の出現等, 増悪したため2003年2月から, クラリスロマイシン (CAM) の経口投与の併用を開始し, 著明な改善が得られた. PCGの大量投与に抵抗する放線菌症に対し, CAMの経口投与が有用であった.
  • 宮崎 道彦, 安井 昌義, 三嶋 秀行, 池永 雅一, 辻仲 利政
    2007 年68 巻10 号 p. 2565-2570
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    完全直腸脱にたいするEndopath® EMS stapler を用いた直腸固定術の治療経験を報告する. 2004年7月から2007年5月にEndopath® EMS stapler を用いた直腸固定術を9例 (全例女性, 年齢中央値78歳) に施行した. 2例は認知症, 1例は糖尿病を合併していた. 3例は経肛門的手術後の再発であり, 3例は婦人科手術歴があった. 再発例は経験しなかった. 排便コントロールで苦慮する症例も経験しなかった. 観察期間は短いが全例で便禁制の改善が認められた. 完全直腸脱にたいするEndopath® EMS stapler を用いた直腸固定術は簡単, 安全, 有効な術式であると示唆される.
  • 芦川 和広, 牧角 良二, 須田 直史, 小森山 広幸, 品川 俊人, 大坪 毅人
    2007 年68 巻10 号 p. 2571-2574
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性. 下腹部痛, 腹部膨満を主訴に当院受診. CT, MRIにて骨盤腔内に13cm大の充実性の不整形な腫瘤を認め, 平成18年2月に手術を施行した. 主腫瘍はS状結腸部の壁外に発育し, 回盲部にも腫瘍を認め, 大網にも小結節が散在していた. S状結腸と回盲部, 大網を切除し肉眼上の残存腫瘍はなかった. 病理組織は骨形成を認める紡錐形の腫瘍細胞からなる骨外性骨肉腫とその腹腔内転移と診断された. また, 術中の腹水細胞診では非上皮性の悪性細胞が認められた. 術後骨肉腫に準じての化学療法を行ったが, 腹腔内再発をきたし術後13カ月後に永眠された. 消化管原発の骨外性骨肉腫はきわめて稀な腫瘍であり, 文献的考察を加えて報告する.
  • 堀本 義哉, 鈴木 義真, 塩崎 哲三
    2007 年68 巻10 号 p. 2575-2579
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    患者は69歳, 男性. 初診時右下腹部に可動性不良な小児頭大の固い腫瘤を触知した. 注腸造影検査で上行結腸全長にわたり全周性の狭窄をみとめたが, 内腔は保たれていた. 画像所見より非上皮性腫瘍を強く疑い, 結腸右半切除術を施行. 白色で結節状の腫瘍塊が盲腸から上行結腸にかけ腸管を包み込むように連なっていた. 大腸の粘膜面には一部に浅い潰瘍をみとめるのみであった. 病理組織検査は中分化腺癌の診断であった.
    上皮性腫瘍でありながら腸管腔内へほとんど発育せず, 壁外に膨張性に進展する例は比較的稀である. 組織学的には低分化型腺癌や粘液癌に壁外発育傾向が強いとされるが, 様々な報告があり一定しない. 今回われわれは壁外性に巨大に発育した結腸癌の1例を経験したので報告する.
  • 重田 匡利, 久我 貴之, 工藤 淳一, 山下 晃正, 藤井 康宏
    2007 年68 巻10 号 p. 2580-2584
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌と胆管細胞癌が併存する混合型肝癌は比較的稀である. その再発時は胆管細胞癌あるいは肝細胞癌どちらの再発も起こりうる. 混合型肝癌術後10年目に肝細胞癌成分の再発を経験したので報告する. 患者は68歳の男性, 10年前にS4の肝腫瘍を指摘され中央2区域切除を施行された. 切除後の病理診断は混合性肝癌の診断であった. 今回, 肝腫瘍指摘され当科に紹介された. 外側区域の肝腫瘍を認め外側区域切除を施行した. 病理診断で肝細胞癌であり前回に認めた肝細胞癌の成分と同様の所見であった. 以後, 2年間再発を認めていない. 混合性肝癌は血行性・リンパ行性に転移し予後不良であるといわれる. 今回、 混合性肝癌の初回手術後10年後に残肝再発をきたし再切除可能であった症例を経験しその再発形式に興味がもたれたので文献的考察を交えて報告する.
  • 新川 寛二, はい 正寛, 田中 宏, 竹村 茂一, 大場 一輝, 久保 正二
    2007 年68 巻10 号 p. 2585-2588
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の女性. 胆石に伴う右季肋部痛を繰り返すため当科に紹介された. 腹部超音波およびCT検査像上, 胆嚢底部の径約1cm大の胆石と胆嚢全体の軽度の壁肥厚が認められた. DIC-CT像上, 胆嚢管が後枝に合流していた. 開腹胆嚢摘出術を施行したところ, 胆嚢壁は全体的に軽度肥厚していたが, 胆嚢粘膜面に隆起性病変は認められなかった. 病理組織学的には胆嚢体部から底部にかけてadenomyomatosisが認められ, 底部の固有筋層のRokitansky-Aschoff sinus (RAS) 上皮内に限局した乳頭腺癌が認められた. 胆嚢管が後枝に合流し, RASより発生した稀な胆嚢癌であった.
  • 八幡 和憲, 河合 雅彦, 井川 愛子, 松橋 延壽, 加藤 浩樹, 國枝 克行
    2007 年68 巻10 号 p. 2589-2594
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性. 主訴は特になし. 現病歴は2001年2月7日S状結腸癌にて当科にてS状結腸切除術施行 (mod. ss, n0, ly0, v0, stage II). 2003年7月18日同肺転移にて左肺下葉切除術. その後, 近医経過観察中であったが, 2006年4月CEA : 116ng/mlと上昇を認め, 大腸癌再発疑いにて当院消化器科へ再紹介された. 上部・下部消化管内視鏡検査は異常なく, 腹部CTにて膵体部に25mm大の腫瘤あり, ERCPにて膵体部にて主膵管の途絶を認めた. 以上の所見から膵癌あるいは大腸癌膵転移の診断にて外科紹介となった. 7月7日手術施行. 膵は体部から尾部まで全体に棍棒状に硬かったが, 周囲組織や神経叢への浸潤傾向はなく, 膵体尾脾切除術を施行した. 病理組織診断は大腸癌膵転移であった. 術後経過は良好にて術後第16病日退院した. 大腸癌の膵転移は稀であり, 切除例の本邦報告例は検索しえた限りで自験例を含めて20例に過ぎない. 文献的考察を加え報告する.
  • 寺下 幸夫, 服部 浩次, 森 亮太, 斉藤 慎一郎, 内藤 明広, 岩田 宏
    2007 年68 巻10 号 p. 2595-2599
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 発熱, 腹痛を主訴に来院. 腹部理学所見上, 腹膜刺激症状を認め, 腹部CTにて, 少量の腹水と脾臓に多発する低吸収域を指摘された. 脾膿瘍の破裂による腹膜炎の診断にて, 緊急手術となった. 腹腔内には中等量の混濁腹水を認め, 脾臓は膵尾部と一塊になっていた. 脾下極には破裂した膿瘍腔が確認され, 脾摘, 膵尾側切除, 腹腔ドレナージ術を施行した. 切除標本の病理組織学的検索にて膵尾部に発生した中分化型管状腺癌の浸潤に伴う脾膿瘍と判明した. 膵癌に伴う脾膿瘍の発生は少なく, 文献的考察を加え報告する.
  • 太平 周作, 久保田 仁, 森岡 淳, 葛谷 明彦, 佐々木 英二, 菅原 元
    2007 年68 巻10 号 p. 2600-2603
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    尿膜管遺残症は若年者に発症することが多く, 美容的な面も考慮すると可能であれば腹腔鏡下に切除するのが望ましい. 今回腹腔鏡下に摘出した尿膜管遺残症の3例を経験したので報告する. 症例はいずれも臍炎を主訴として発症した男性で, 平均年齢は25歳であった. 3本の5mmポートを挿入して尿膜管の剥離・切断を行った. 摘出に際しては臍直下に弧状の小切開を置き体外にて臍部の切断を行った. いずれも膀胱側の切断部には最初の1例のみエンドループを用いたが, 残りの2例は3-0吸収糸による体外結紮で行った. 平均手術時間は92分, 術後在院日数は平均2.7日であった. 腹腔鏡手術が普及した現在, 尿膜管切除に対して腹腔鏡手術は十分標準手術になりうると考えた.
  • 村田 泰洋, 五嶋 博道, 加藤 弘幸, 種村 彰洋
    2007 年68 巻10 号 p. 2604-2609
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    子宮癌術後の放射線療法施行後長期間経過して急性腹症として発症した放射線性膀胱炎に伴う膀胱自然破裂の2例を経験した. 症例1 : 79歳, 女性. 30年前, 子宮癌術後に放射線照射を施行. 食思不振, 腹痛を自覚し来院した. 汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行し, 術中に膀胱破裂と診断した. 破裂部の縫合閉鎖は困難であったため, 回腸を利用した膀胱形成術を施行した. 症例2 : 85歳, 女性. 40年前, 子宮癌術後に放射線照射を施行. 悪性高血圧にて入院加療中に血尿を認め, 放射線性膀胱炎による膀胱出血の診断で膀胱鏡下凝固止血術を施行された. 3日後に突然, 下腹部痛が出現し, 消化管穿孔, 汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行した. 術中に膀胱破裂と診断し破裂部縫合閉鎖術を施行した. 本邦における放射線性膀胱炎に併発した膀胱自然破裂は自験例を含め44例の報告がありこれらの文献的考察を加えて報告する.
  • 原田 直樹, 宮下 勝, 佐溝 政広, 塚本 好彦
    2007 年68 巻10 号 p. 2610-2616
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳, 男性. 平成10年に左鼠径部のヘルニアを疑われ, 手術を施行された. 鼠径部の腫瘍が確認され摘出術を施行. 当時デスモイド腫瘍と診断されていた. 平成15年7月より左下腹部に腫瘤を自覚し来院. 短期間で増大傾向を認め手術施行となり, 病理学的に脱分化型脂肪肉腫と診断された. 平成10年の組織を再検討したところ高分化型脂肪肉腫と診断された. その後再発を繰り返し, 膵外腫瘍性低血糖 (Non-islet cell tumor hypoglycemia, 以下NICTH) を併発するようになり, 平成16年11月死亡した. 脱分化型脂肪肉腫の発生頻度は脂肪肉腫の約5%とされ, 予後不良な疾患である. 今回われわれは5年後に脱分化し, 急速な増大傾向を認めた精索原発の脱分化型脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.
  • 森田 剛文, 石原 雅巳, 池田 謙, 松井 芳夫, 奥澤 星二郎
    2007 年68 巻10 号 p. 2617-2620
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は28歳, 男性. 右下腹部痛を主訴に来院. 右下腹部に著明な圧痛と反跳痛を認めた. 血液検査にてWBC14,500/μl, CRP1.32mg/dlと炎症所見を認めた. 腹部computed tomography (以下, CT) にて腫大した虫垂とその頭側にやや高吸収域の渦巻状構造を認めた. 急性虫垂炎の診断で同日緊急手術施行した. 開腹すると捻転し暗赤色調を呈した大網が虫垂を覆うように存在していた. 虫垂は腫大しており, 腹腔内には少量の淡血性の腹水を認めた. 虫垂切除術と大網部分切除術を行った. 術後経過は良好で, 第10病日に退院した.
    大網捻転症は比較的稀な疾患で, 器質的疾患の有無により特発性と続発性に分類される. 本症例は急性虫垂炎に続発した大網捻転症と診断した. 急性虫垂炎に続発した大網捻転症は本邦でこれまで1例しか報告されておらず, 稀な病態であると思われ, ここに報告する.
  • 西脇 誠二, 四方田 大介, 飯塚 恒, 内藤 恵一, 吉田 正史, 位田 歳晴
    2007 年68 巻10 号 p. 2621-2624
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    われわれは, 比較的稀な再発鼠径ヘルニアに続発した大網捻転症の1例を経験したので報告する. 症例は61歳, 男性. 入院2日前より左下腹部に間欠性疼痛を自覚した. 徐々に症状が増悪し, 食欲低下, 嘔気, 嘔吐認めたため, 当院を受診となった. 腹部CTでは, 腹腔内左側に脂肪組織を主体とした腫瘤性病変を認めた. 脂肪組織内の血管は渦巻き状を呈していた. また, 右鼠径ヘルニアも認められた. 同日, 急性腹症の診断にて緊急手術を施行した. 大網は3回転捻転し, 右鼠径ヘルニア内へ血行障害に陥った大網が嵌頓していた. 続発性大網捻転症と診断し, 大網切除と右鼠径ヘルニア根治術を施行した. 術後経過良好にて, 12日目に退院した.
  • 林 真路, 越川 克己, 谷口 健次, 和田 応樹, 横山 裕之, 末永 裕之
    2007 年68 巻10 号 p. 2625-2630
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    膵脾合併切除を必要とした後腹膜リンパ管腫の1例を経験したので報告する. 症例は32歳, 女性. 平成17年8月, 健診にて膵嚢胞を疑われ, 左腰背部痛も自覚していたため, 当院内科を受診した. 精査にて膵体尾部の腹側および背側に広範に接する多嚢胞性病変を認め, 脾門部にまで広がっていた. リンパ管腫を念頭におき, 11月, 開腹手術を施行した. 腫瘍尾側の嚢胞状成分は, 結腸間膜から容易に剥離可能であったが, 膵体尾部周囲の海綿状成分は, ‘霜降り’状に膵の前後面および脾門の脂肪織内に広がっていた. 良性疾患ではあるが, 腫瘍遺残を避けるため, 膵体尾部切除, 脾臓摘出術を施行した. 病理組織診断は後腹膜リンパ管腫で, 膵内にも拡張したリンパ管を認めた. 術後17日目に退院となり, 1年経過して再発を認めていない.
  • 三澤 良輔, 藤森 芳朗, 五十嵐 淳, 宮本 英雄, 西村 博行
    2007 年68 巻10 号 p. 2631-2636
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫はその大きさと組織学的多様性ゆえに注目される. 今回われわれは巨大脂肪肉腫の症例を経験したので報告する. 症例は53歳, 男性. 術前画像診断により脂肪肉腫と診断した. 手術時, 腫瘍は肝後区域, 右腎, 右横隔膜の一部を合併切除することで摘出可能であった. 腫瘍の重量は9.7kg. 組織診断で脱分化型脂肪肉腫と診断された. 腫瘍の半分は紡錘形で核異型の強い脂肪細胞で占められた充実性の部分であった. 脂肪肉腫の部分には脂肪芽細胞も見受けられた. 初回手術より3年後に再発を認め, 再摘出術を施行した. 更なる2回の再発にも関わらず, 積極的な手術療法により, 術後5年である現在, 外来通院中である. 後腹膜脂肪肉腫の化学療法, 放射線療法の有効性についての有意差を持った報告は認めず, その施行については異論のあるところである. 現在もなお手術療法が標準治療であることにかわりはない.
  • 釜田 茂幸, 新井 竜男, 大野 一英, 志田 崇, 宮崎 勝
    2007 年68 巻10 号 p. 2637-2642
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性. 主訴は排便困難. 骨盤CT・MRIではダグラス窩に浸潤性腫瘤を認め, 直腸陥凹性病変からの生検では低分化型腺癌と診断された. 注腸造影では直腸壁外性圧排があり, 腫瘍マーカーCA125・SCCの上昇も認めたが, 子宮内膜生検で悪性所見はなかった. 直腸・子宮癌の他ダグラス窩に発生・転移する癌との鑑別が考えられたが, 術前確定診断は困難であった. 手術ではダグラス窩に直腸・子宮と一塊になった腫瘍があり, 直腸超低位前方切除術, 広汎子宮摘出術, 骨盤リンパ節郭清術を施行した. 病理組織学的には子宮頸部腺癌の直腸浸潤であった. 腫瘍細胞は子宮頸部粘膜内を原発として子宮・直腸浸潤を主体としており, 子宮内膜生検での診断は困難であったと考えられる. 子宮頸部腺癌は血行・リンパ行性転移を起こしやすく, 直腸浸潤の報告はほとんどされていない. 若干の文献的考察と術前診断上の反省点もふまえ報告する.
  • 花本 尊之, 井上 行信, 砂原 正男, 高橋 雅俊
    2007 年68 巻10 号 p. 2643-2646
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸腹膜垂が右大腿ヘルニアに嵌頓した1例を経験したので報告する. 症例は82歳, 男性. 5日前からの右鼠径部膨隆を主訴に, 当科外来を受診した. 右鼠径部に圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を認めたが腹部症状はなく, 腹部CTの所見と合わせて, 右大腿ヘルニア内大網嵌頓およびヘルニア嚢内出血の疑いとの診断となり, 受診翌日に入院, 手術を施行した. 術中所見から, S状結腸腹膜垂の右大腿ヘルニア内嵌頓の診断となった. ヘルニア嚢は暗赤色に腫大し, ヘルニア嚢内には血性腹水を認めたが, 腹膜垂の炎症は軽度であったため, 腹膜垂切除およびPROLENE® hernia systemによるヘルニア修復を行った.
  • 高須 直樹, 平井 一郎, 野村 尚, 蜂谷 修, 布施 明, 木村 理
    2007 年68 巻10 号 p. 2647-2650
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌, 腎癌後術に発生した胃腺扁平上皮癌の1例を経験した. 症例は71歳の男性. スクリーニングの上部消化管内視鏡で胃体上部小彎から胃角部にかけて3型の腫瘍を認め, 術前の生検では低分化腺癌, 印環細胞癌が認められた. 胃全摘を施行した. 切除標本では体上部から前庭部にかけて60×55mm大の3型腫瘍を認めた. 組織学的検索では扁平上皮癌と中分化から低分化の腺癌の部分が混在し, 腺扁平上皮癌と診断した. 進行度はStage IIIB (T3 N2 P0 H0 M0 CY0) であった. 膀胱癌の治療後に術後補助化学療法を行ったものの術後6カ月で再発を認め, 術後8カ月で癌死し, 予後不良であった. 本症例は胃腺扁平上皮癌に直腸癌, 腎癌, 膀胱癌を合併しており, 比較的稀と考えられた.
  • 茶谷 成, 田原 浩, 村尾 直樹, 布袋 裕士, 前田 佳之, 三好 信和
    2007 年68 巻10 号 p. 2651-2654
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 女性. S状結腸癌に対してS状結腸切除, 虫垂切除を施行し, その際, 左下腹部からダグラス窩へプリーツドレーンを挿入した. 術後経過は良好で, 術後第6病日にドレーンを抜去しようとしたところ, 抜去の途中で抵抗があり, また疼痛の訴えがあったため, 抜去を断念した. その後も抵抗および疼痛の訴えのため, ドレーンを抜去することができなかった. 諸検査から, ドレーン抜去困難の原因として, ドレーン内腔への腹腔内脂肪組織の嵌入が推測された. 術後第9病日, 腹腔鏡下手術でドレーンを抜去した. 大網がドレーン側孔からドレーン内腔に嵌入していたため, 大網を引き出してドレーンを抜去した. その後, 腹腔内組織の損傷および出血の有無を十分に観察して手術を終了した. 術後経過は良好であり, 初回手術より術後第14病日に退院した. 本症例では腹腔鏡下に腹腔内の観察を十分に行うことができ, 安全にドレーンを抜去することができた.
編集後記
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