日本臨床外科学会雑誌
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原著
地域中核一般病院におけるStage II・III食道癌に対する術前化学放射線治療の評価
小林 隆照屋 正則田中 穂積小林 薫森田 恒治
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2007 年 68 巻 12 号 p. 2931-2939

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抄録

目的 : 地域中核一般病院である当科のStage II・III期食道癌に対する術前化学放射線治療 (nCRT) +2領域郭清による手術成績を検討・解析した.
方法 : 当科で根治手術を施行した臨床病期II, III期の食道扁平上皮癌患者を対象にnCRT後に根治的手術を受けた患者 (nCRT+S群) と手術単独群 (S群) において臨床病理学的因子と予後との関係や, 再発部位・術後合併症等をretrospectiveに検討・解析した.
結果 : nCRT+S群34例とS群12例の計46例が対象となった. 46例全体での1, 3, 5年生存率は, それぞれ79.7%, 31.2%, 31.2% (nCRT+S群の5年生存率は34.8%, S群の5年生存率は16.9%, p=0.80) であった. 多変量解析ではpStageが独立した予後因子となった. 特に, nCRTを受けた34例のpStage 0+I+II群とpStage III+IVa群 (5年生存率65.2% vs 0%, p<0.0001) で, 臨床病期に差がなかったものの, 脈管浸襲 (v factor) および, 放射線治療ならびに化学療法の治療効果の病理組織学的判定において両群間で有意差を認め, pStage 0+I+II群で有意にdown stagingしていた. 両群とも在院死はなく術後合併症発生率はnCRT+S群で6例 (17.6%), S群で5例 (41.7%) に認めた.
結論 : がん専門病院でない地域中核一般病院である当科のStage II・III期食道癌の標準的治療法である術前化学放射線治療+2領域郭清の手術成績は「根治性」および「安全性」の点から十分容認できるものと考える. しかし, nCRTを受けたにもかかわらずpStage III+IVa群の成績が悪いことから, 今後pStage III+IVa群に対する治療戦略をたてる必要がある.

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© 2007 日本臨床外科学会
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