抄録
症例は50歳, 女性. 人間ドックの超音波検査にて後腹膜の嚢胞を指摘されて近医を受診し, 当科に紹介された. 腹部CT検査にて左上腹部から骨盤腔に及ぶ多房性の腫瘤を認めた. MRI検査も施行したが, 確定診断には至らなかった. 開腹手術を行ったところTreitz靱帯から約10cmにわたる空腸に癒着し, 小腸間膜内に存在する表面平滑な多房性嚢胞状の腫瘍を認めた. 嚢胞内には乳び様の内容液が貯留していた. 病理組織学的には内皮細胞で覆われる拡張したリンパ管の増生を認め嚢胞性リンパ管腫と診断した. 空腸の漿膜に癒着していたが切除可能であり, 術後1年の現在, 再発の兆候は認めていない. 腹腔内リンパ管腫は稀であるが, 嚢胞性腫瘍の診断をする上で念頭に置くべき疾患の一つと考えられた.