2007 年 68 巻 5 号 p. 1211-1215
粘膜下層 (以下smと略す) 浸潤距離が微小だがリンパ節転移を認めたS状結腸癌の稀な症例を経験したので報告する. 症例は77歳, 男性. 検診で便潜血陽性を指摘され, 当院を受診した. 精査したところ, 横行結腸とS状結腸に腫瘍を認めた. 生検の結果では, S状結腸癌であった. 両病変とも術前画像所見にてsm深部浸潤を疑われたため, 当科において横行結腸切除およびS状結腸切除, 2群リンパ節郭清を施行した. 病理組織学的診断では, S状結腸癌は中分化腺癌, SM (sm1), ly1, v0, N1であった. sm浸潤距離は500μmと微小であったが, 1群リンパ節に転移を認めた. 術後補助化学療法を施行し, 現在無再発生存中である. sm微小浸潤癌にもリンパ節転移を有する症例が存在するため, 癌の組織型や脈管侵襲などのリンパ節転移のリスクを検討し治療方針を決定する必要があると考えられた.