日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
FDG-PET陽性で直腸癌肺転移と鑑別困難であった肺放線菌症の1例
佐近 雅宏三上 和久関 仁誌宗像 康博齋藤 学西村 秀紀保坂 典子
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 1 号 p. 38-43

詳細
抄録

放線菌は口腔内に常在する通性嫌気性菌で内因性に感染し,顔面頸部や呼吸器に膿瘍をつくる.今回われわれは直腸癌肺転移と鑑別困難であった肺放線菌症の1例を経験したので報告する.
症例は70歳の男性.胸部異常陰影を指摘され来院し,胸部CTでは左上葉に内部に嚢胞様変化のある32mm大の腫瘤影があり,気管支鏡検査も施行されたが細胞診でclassI,細菌培養でも一般細菌・好酸菌ともに陰性の所見であった.PET検査を施行し,直腸と左肺上葉に強い集積を認め,直腸癌,直腸癌肺転移の診断で下部消化管内視鏡検査も施行した.直腸Rbに2型癌を認めた.直腸癌,左肺転移の診断にて腹腔鏡補助下直腸超低位前方切除術,開胸左肺上葉切除術を一期的に施行した.病理組織学的検討により肺放線菌症の診断となった.無症候性の結節影を形成する肺放線菌症は,肺癌や転移性肺癌との鑑別が難しく常に鑑別上念頭に置くべき疾患と考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top