日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的に治癒した全結腸型虚血性大腸炎の1例
光岡 直志渡辺 哲夫木林 透高岡 宗徳
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2008 年 69 巻 10 号 p. 2607-2611

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抄録

症例は56歳,男性.上腹部痛と下血を主訴に初診.このとき上腹部に反跳痛,筋性防御を認めた.CTにて全結腸に壁肥厚を認め,全結腸型虚血性大腸炎の診断にて入院となった.入院時検査にて糖尿病がみられたが治療歴はなかった.絶食,補液,抗生剤の投与,血糖コントロールを行ったが,急激に腹水が出現した.注腸では全結腸に拇指圧痕像を認めたが,ハウストラの消失を伴う拡張はみられず,非壊死型全結腸型虚血性大腸炎と診断し,穿孔のないことを確認した.腹水は蛋白漏出によると考えられ,新鮮凍結血漿を輸血し,腹水は減少,34病日に行った内視鏡検査では虚血性大腸炎の治癒期として妥当であった.虚血性大腸炎は,左側結腸に発症することが多く,この場合の診断は容易であることが多いが,右側結腸や全大腸に発症した場合,手術適応を含めた初期診断が困難である.本症例も腹膜刺激症状を呈し,慎重な観察を要したが,保存的に治療しえたので,若干の考察を含めて報告する.

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© 2008 日本臨床外科学会
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