日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
正中弓状靱帯圧迫症候群による背側膵動脈瘤の1例
大石 康介鈴木 昌八坂口 孝宣福本 和彦稲葉 圭介今野 弘之
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 10 号 p. 2649-2655

詳細
抄録

正中弓状靱帯(Median arcuate ligament:MAL)の圧迫による腹腔動脈狭窄によって生じた背側膵動脈瘤に対し,靱帯切離が有効であった1例を報告する.症例は31歳,女性.17歳時より早期閉経に対して不定期に女性ホルモン剤を内服していた.2006年2月,腹痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査で肝に占拠性病変を認めた.肝腫瘤質的診断の為の腹部血管造影で腹腔動脈根部の狭窄および上腸間膜動脈より分岐する背側膵動脈起始部に径5mmの嚢状を呈する動脈瘤を認めた.塞栓術は困難で,腹腔動脈の血流是正と瘤縮小を目的に開腹下で正中弓状靱帯切離を行った.肝腫瘍は血管腫で,女性ホルモン内服による増大の危険性を考慮して切除した.術後血管造影検査,MDCTで動脈瘤の消失を確認した.膵十二指腸領域動脈瘤は,腹腔動脈狭窄を代償するための膵近傍動脈血流増加が主因と考えられる.瘤への直達手術が困難な場合,腹腔動脈の狭窄解除による血流是正は適切な処置となり得る.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top