抄録
症例は81歳,女性.嘔吐を主訴に2006年3月,当院に精査加療目的で入院された.上部消化管内視鏡検査で幽門狭窄と胃角部に潰瘍を認めた.生検の結果はいずれもGroupIであった.上部消化管造影検査では,幽門狭窄と胃角部バリウムの貯留を認めた.腹部超音波検査,腹部CTでは幽門部に充実性腫瘤を認めた.胃潰瘍を伴った胃粘膜下腫瘍による幽門狭窄と診断し,胃切除術を行った.切除標本では幽門部粘膜下に黄白色調の径2cm大の充実性腫瘤と胃角部に潰瘍を認めた.組織学的に粘膜下腫瘤は不規則な腺管構造を有した腺癌であった.胃角部の潰瘍は著名なリンパ管侵襲を伴った中分化腺癌が漿膜下層まで浸潤していた.胃角部の腺癌の壁内転移による幽門狭窄症と診断した.胃癌の壁内転移は稀で,さらに狭窄症状を呈した症例は極めて稀である.その原因は生物学的悪性度の高い癌細胞の著明なリンパ管浸潤による閉塞が考えられた.