抄録
非常に稀な早期虫垂多発癌の1例を経験した.症例は32歳女性で,右下腹部痛を主訴に当科紹介受診し,精査加療目的にて入院した.身体所見では右下腹部に圧痛を伴う腫瘤が触知され,血液検査で高度貧血が認められた.腹部CT,腹部MRIおよび注腸検査では盲腸腫瘍が疑われたが,大腸内視鏡検査では虫垂腫瘍の盲腸への脱出が考えられた.さらに腹部超音波検査では末梢虫垂に別の腫瘍の存在が強く疑われた.盲腸へ脱出する病巣は生検にて絨毛状腺腫と診断され,D3郭清を伴う右結腸切除術を施行した.切除標本では虫垂中枢側に生じ盲腸へ脱出する腫瘍の他,虫垂末梢側に別の腫瘍が認められた.病理組織学的検査で両者とも早期高分化型腺癌とされて,極めて稀な早期虫垂多発癌の1例と判明した.