2008 年 69 巻 7 号 p. 1725-1732
AFP産生結腸癌の2例を経験したので報告する.症例1は40歳,男性.胸部不快感を主訴に当院循環器内科を受診.スクリーニングの血液検査で貧血と便潜血反応の陽性を認めた.血清AFP値は168ng/mlと高値を示し,精査で上行結腸癌と診断し,結腸右半切除術を施行した.症例2は51歳,女性.腹部不快感と下腹部腫瘤触知を主訴に当院を受診.血清AFP値は3,920ng/mlと高値を示した.精査でS状結腸癌,多発肝転移および肺転移と診断し,結腸左半切除術を施行した.病理組織学的検査の結果,症例1は低分化腺癌,症例2は中分化腺癌と診断され,2例ともAFP免疫染色で陽性を示した.2例とも術後に全身化学療法を施行し,症例1は術後8年7カ月を経過した現在,無再発生存中であり,症例2は多発肝転移の増悪を認め,肝不全により術後4カ月で永眠された.