2008 年 69 巻 8 号 p. 1960-1963
症例は56歳,女性.32年にわたる全身性エリテマトーデスの治療歴がある.突然の下腹部痛を主訴とした.左側臥位での腹部単純レントゲン写真および腹部CTスキャンにおいて腹腔内遊離ガス像を認めたため,下部消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急開腹手術を実施した.腹腔内には混濁した腹水が貯留し,回腸末端より約10cmの部位に穿孔を認めたため同部位を含む小腸部分切除術を施行した.病理組織学的には粘膜下組織の小血管および周囲間質にリンパ球を主体とする強い炎症性細胞浸潤を同心円状に認め,さらにフィブリノイド壊死もみられ典型的な壊死性血管炎の所見を呈していた.この所見より腸管壁の壊死性血管炎による血栓形成,虚血が穿孔の原因と考えられた.一旦は救命できたが,この後も異時性に結腸,回腸穿孔を反復し,初回手術より3カ月に敗血症による多臓器不全で死亡した.