日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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69 巻, 8 号
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原著
  • 住吉 一浩, 野原 丈裕, 岩本 充彦, 田中 覚, 木村 光誠, 高橋 優子, 辻 求, 谷川 允彦
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1859-1865
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    目的:乳房温存療法において,断端陽性の有無は乳房内再発の発生と関連性が高いのは周知の事実であるが,温存手術における術中の切除断端評価は必ずしも一定ではない.当科にて行われている術中断端捺印細胞診(以下,断端細胞診)の有用性およびピットフォールについて検討した.対象と方法:2005年から2007年に行われた乳房手術症例308例中,温存手術を行い断端細胞診が施行された160例を対象とし,それらの断端細胞診結果と永久組織標本の結果の比較検討を行った.結果:断端細胞診の成績は,感度70.0%,特異度97.1%,正診率93.8%で,偽陰性症例が6例,偽陽性症例が4例含まれていた.断端細胞診陽性例は18例で,追加切除部分の永久組織標本に癌が認められたのは8例であった.断端細胞診陽性の方向は,乳頭側16例,側方5例,乳頭対側2例であった.結語:温存手術における術中断端評価に,簡便な断端細胞診は有用であることが示唆された.
  • 中嶋 啓雄, 藤原 郁也, 水田 成彦, 阪口 晃一, 鉢嶺 泰司, 中務 克彦, 市田 美保, 大橋 まひろ, 小西 英一, 柳澤 昭夫
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1866-1871
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    背景:乳癌のセンチネルリンパ節生検(SLNB)での腋窩リンパ節郭清(ALND)省略例の長期成績の報告では,ALN再発は約1%とされている.しかし,ALN再発例に関する詳細な検討は少ない.今回,われわれはSLNB後のALN再発例について検討した.
    対象と方法:2000年1月~2007年12月までに,乳癌に対するSLNBを行った670例中の566例がSLN転移陰性で,ALNDを省略した.平均観察期間40カ月で,9例(1.6%)のALN再発がみられた.この9例について,背景因子と再発後の治療と予後について検討した.
    結果:病理組織学的分類では全例が硬癌であった.組織学的悪性度は6例(67%)がGrade3で,5例(56%)に脈管侵襲がみられた.ホルモンレセプターは6例(67%)が陰性であった.再発までの期間は平均16.1カ月で,全例にALNDを行った.ALN転移が7個以上みられたものが4例あり,その全例で鎖骨上リンパ節,または遠隔臓器再発がみられた.ALN転移が3個以下の5例では,1例が鎖骨上リンパ節再発をきたしたが,放射線照射によりCRが得られ,全例が無病生存中であった.
    結語:ALN再発の危険因子として,病理学的悪性度の高いこと,脈管侵襲の存在,ホルモンレセプター陰性であることが示唆された.ALN再発例でALN転移個数の多いものは,ALN再発以外の再発を伴うことが多く,照射や化学療法の追加を考慮すべきである.
  • 宇佐美 修悦, 本山 悟, 丸山 起誉幸, 佐藤 雄亮, 渋谷 香織, 小川 純一
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1872-1876
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    致命的な合併症である食道癌関連手術後の間質影を伴った重症肺炎例について検討した。2003年4月から2007年3月に教室で施行した開胸を伴う食道癌関連手術は182例で,このうち7例(4%)に術後間質影を伴う肺炎を併発した.この7例の臨床背景,治療法,予後について検討した.7例全員が男性,年齢54~79歳すべてに喫煙歴があった.5例が胸部食道癌切除術後,1例は食道癌術後の胃管肺瘻根治術後,1例は胃管癌切除術後であった.治療は全例にステロイドパルス療法が行われていた.4例ではステロイドの漸減中に肺炎像が悪化し再増量した.ステロイド再増量例,術前化学放射線療法例,術前低栄養例,MRSA感染例が予後不良であった.
  • 篠原 敏樹, 濱田 朋倫, 前田 好章, 内藤 春彦
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1877-1881
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    幽門側胃切除後でも早期経口摂取が計画的に安全に行えるか検討した.2005年から2年間の胃癌幽門側切除症例中直腸癌の手術を併施した2例をのぞく66例を対象とした.全例順蠕動側々器械吻合Roux -en Y再建をした.術直後に胃管抜去,術後2ないし3病日に食事を開始する早期経口摂取パスで管理し,バリアンス,合併症,完遂率を調べた.結果:全例に胃管抜去,水分開始ができた.3例(腹満2,出血1例)は食事開始を延期した.8例(残胃拡張3,イレウス2,膿瘍3例)は食事を中止し,55例83.3%で早期経口摂取パスを完遂した.バリアンス評価ではgrade2以上は16例24.2%であった.腹満感,嘔吐・嘔気が10例15.1%(grade1:2例,grade2:1例,grade3:7例),発熱が5例であった.縫合不全は認めなく,肺炎1例,イレウス4例であった.結語:幽門側胃切除後早期経口摂取パスは83.3%の完遂率で可能であった.
症例
  • 中川 賀清, 植村 貞繁, 矢野 常広, 中岡 達雄
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1882-1886
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は1歳,男児.主訴は生後6カ月頃から徐々に増大する左顎下部腫瘤であった.初診時には3cm大の弾性軟の腫瘤であり,熱感や圧痛は認めなかった.超音波検査で嚢胞性に描出され,内部に高輝度の部分を認めた.口腔内に所見はなかった.ガマ腫と診断し,硬化療法を試みた.嚢胞を穿刺したが,内容物は透明,ゼリー状で非常に粘調であったため,吸引出来なかった.そのため小切開を加えて内容を排出させ,内腔にピシバニール(OK-432)を注入した.術後2カ月目に腫瘤は再発した.ピシバニールでは効果がないと判断し,頸部より嚢胞切除を施行した.腫瘤は手術所見でも顎下型ガマ腫と思われた.切除標本では嚢胞壁は薄い被膜状であり,ほとんどの部分で上皮は存在していなかったが,一部に重層扁平上皮と角化物,毛包を認め,病理診断はdermoid cystであった.本症例は,重層扁平上皮が迷入したガマ腫と考えられた.
  • 王 孔志, 今村 美智子, 村瀬 慶子, 廣田 誠一, 藤元 治朗, 三好 康雄
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1887-1891
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.右乳癌術後(invasive lobular carcinoma,pT2,pN1,pM0,stageIIB,estrogen receptor(ER)(+),progesteron receptor(PgR)(+)),対側腋窩リンパ節再発に対し腋窩リンパ節郭清を行い,術後アロマターゼ阻害剤による内分泌療法を行っていた.その術後1年6カ月に,血清CEA値が12.6ng/mlと上昇傾向を示し,FDG-RET/CTで子宮に淡い集積を認め,MRIでは造影効果をうけるびまん性に腫大した子宮を認めた.子宮内膜組織診で転移性の低分化型腺癌が示唆され,子宮全摘術,両側付属器切除が行われた.切除標本において,ER(+),PgR(+)を示した初発乳癌(invasive lobular carcinoma)の子宮転移と確定診断された.現在術後1年9カ月を経過し,多発骨転移,軽度の水腎症を認めるが,外来化学療法を行い無症状で経過している.
  • 時庭 英彰, 堀口 淳, 鯉淵 幸生, 飯野 佑一, 小山 徹也, 竹吉 泉
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1892-1896
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    患者は35歳,女性.2007年3月に左乳房腫瘤に気付き受診した.左乳房A領域に1.9cm大の腫瘤を触知した.マンモグラフィで境界不明瞭な腫瘤を認め,超音波検査で不整形の低エコー領域を認めた.MRIでは中心部に非造影部のある高信号領域を認めた.針生検で浸潤性乳管癌の診断で,乳房温存術とセンチネルリンパ節生検を行った.腫瘍の割面は,黄褐色充実性で限局していた.病理検査では,癌腫上皮から軟骨基質への直接移行がみられ,Matrix -producing carcinoma(MPC)と診断した.
    MPCはmetaplastic carcinomaの一亜型で,稀な疾患である.本邦における報告例の文献的考察を含め,報告する.
  • 山田 芳嗣, 北川 理映子, 須藤 武道, 木村 大輔, 対馬 敬夫, 福田 幾夫
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1897-1901
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    患者は45歳,女性.左大腿部の滑膜肉腫切除後1年で肺転移が出現し,当科で右肺部分切除施行.その後繰り返される肺転移に対して,10年間に右側1回,左側4回の肺切除が追加された.計10カ所の転移巣を切除し,いずれも完全切除された.その後左主気管支に再発し,完全切除には左肺全摘が必要であったが,内視鏡的レーザー療法と化学療法による肺実質温存を試み,著明な腫瘍の縮小をえた.化学療法終了後9カ月で残在腫瘍を認めるも無症状であり,外来で経過観察中である.滑膜肉腫の予後因子として肺転移の有無は重要であり,完全切除の可否も予後に影響する.そのため肺転移に対しては,可及的肺温存に留意しつつ完全切除すべきであるが,肺機能上肺全摘が好ましくない場合,あるいは頻回の開胸による癒着で手術が困難と考えられる場合,外科的切除以外の治療も考慮すべきと考える.
  • 海藤 章郎, 豊田 太, 中村 徹, 鳥羽山 滋生
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1902-1905
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.咳嗽・胸痛・呼吸困難を主訴に当院救急外来を受診.右緊張性気胸の診断にて当院呼吸器内科に入院し保存的加療行うも改善せず,当科に転科のうえ手術を施行した.術中所見にて右肺尖部に複数のブラを認め,そのうち1つが菲薄化しており表面に微細な欠損孔を認めたため,気胸の責任病巣と考えられた.これらを一括切除するように胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.切除標本の肺実質内に径8mmの白色結節を認め,術後病理結果で大細胞神経内分泌癌と判明した.右肺癌cT1N0M0,StageIAの診断にて,右上葉切除術+リンパ節郭清を後日根治術として追加した.切除標本にて癌の遺残は認めなかった.
    今回われわれは,初発の自然気胸に対する手術により原発性肺癌が発見され,根治術に至った症例を経験したので報告する.
  • 柏木 伸一郎, 松岡 翼, 須浪 毅, 澤田 隆吾, 阪本 一次, 山下 隆史
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1906-1910
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    68歳,男性.検診の上部消化管内視鏡検査にて胃体上部小彎側に粘膜不整病変を認め,生検の結果は低分化腺癌であった.術前の全身状態は良好であり,画像検査所見上も他臓器に転移は認められなかった.手術目的にて当院入院,入院3日目に開腹胃全摘および2群リンパ節郭清術を施行した.CEZ(セファメジン)を術後3日間感染予防投与していたが,術後1日目より高度の白血球・CRPの上昇および熱発を認め,術後3日目より血圧が低下しショックとなった.抗菌薬をPAPM/BP(カルベニン)へ変更するも術後4日目よりARDSとDICを併発し,術後5日目に創周囲に発疹が出現した.感染創の膿よりMRSAが検出された.MRSAはtoxic shock syndrome toxin-1産生株であり,toxic shock syndromeと診断した.抗MRSA薬投与により状態の改善がみられ救命しえた.
  • 金子 学, 谷 雅夫, 久保 淑幸, 住田 敏之, 阿川 千一郎, 瀬戸山 隆平
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1911-1914
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.嘔吐,腹部膨満感,黒色便を主訴に当院受診,血液検査上Hb 5.3g/dlと貧血を認めたため入院となった.腹部CT検査上,十二指腸球部の内腔を占める径5cm大の腫瘤陰影を認めた.上部消化管内視鏡検査では,前庭部前壁大彎に隆起性病変を認め,隆起に連続する腫瘍が十二指腸球部に入り込み,内視鏡的整復は不能で,腫瘍の全体像は明らかではなかった.超音波内視鏡検査では第4層由来の腫瘍であった.胃小切開下に用手的に腫瘍を胃内に還納し,直視下に粘膜下腫瘍と確認した後,幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的には,長径5cm大,固有筋層由来で,免疫染色にてKIT(+),α-SMA(-),S-100蛋白(-)であり,狭義のGISTと診断した.Ball valve syndromeをきたした胃GISTの1例を報告する.
  • 仲田 和彦, 河合 庸仁, 佐久間 康平, 奥村 徳夫, 吉田 滋, 阪井 満, 森 良雄
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1915-1919
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.吐血にて救急受診.CT等の画像診断,生検にて左上腹部を占拠するGISTと診断された.胸腔内への浸潤が強く疑われるため手術困難と判断し,イマチニブ400mg/日の投与を開始した.投与8週後において胸水の消失,28週後には腫瘍は表面の凹凸不正が改善,全体に5cm前後縮小しており,縮小率は概算で約30%であった.以後2年間継続,その間腫瘍径の縮小はわずかとなったが,胸水の再貯留などもなく,腫瘍内部の変性所見など,持続した効果が認められた.投与100週を越え,イマチニブ二次耐性出現等を考慮し,2008年1月手術施行.腫瘤および腫瘤の原発である胃穹隆部を切除,脾摘および浸潤固着していた肝,心嚢,横隔膜の部分切除を施行した.第21病日退院.退院後イマチニブ投与中である.その経過と,本症例を含むGISTの治療について,今後の展望について考察をくわえ,報告する.
  • 徳永 尚之, 西崎 正彦, 合地 明, 田中 紀章
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1920-1924
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.27歳時に鉄欠乏性貧血を指摘され,内科的加療にても改善傾向を認めず精査.胃前庭部を中心に高度に密集したびまん性多発性小ポリープを指摘され,組織学的に若年性ポリープであったため胃限局性若年性ポリポーシスと診断される.内視鏡下粘膜切除術にて病巣摘出も一部に腺癌の合併が認められ,内視鏡下に追加切除施行.以降経過観察中であったが,潰瘍瘢痕部周囲にポリポーシス再発.再度異型上皮巣合併の診断を得たため,幽門側胃切除術を施行した.一般に,若年性ポリポーシスは非腫瘍性の過形成性病変で癌化は少ないとされていたが,そのmalignant potentialは決して軽視できないとの見方もあり,積極的な外科的切除の対象と認識されてきている.胃全摘を第1選択とし,一部に限局するものであれば部分切除や幽門側もしくは噴門側胃切除術も適応として考慮すべきと考えられた.
  • 高須 香吏, 中山 中, 飯島 智, 竹内 信道, 辻本 和雄, 伊藤 憲雄
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1925-1929
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.1997年胃癌の診断で胃全摘術+膵体尾部脾合併切除(Roux-en Y再建)が施行された.病理診断は印環細胞癌(T3(SE),N1,M0,Stage IIIA,Cur B)であった.5年間ドキシフルリジン600mg/dayが投与され,再発なく経過していた.2006年夏頃から心窩部のつかえ感・体重減少があり,胃癌の局所再発による通過障害と診断された.2007年5月に手術が施行された.腫瘍は挙上腸管の壁外から発生し,周囲を一塊に巻き込む腹膜播種と考えられた.開胸の上,腹部食道・挙上空腸切除,肝外側区域切除,横行結腸切除を行った.組織病理学的に印環細胞癌の腹膜播腫再発と診断された.術後経過は順調で,現在外来で化学療法を行っている.胃印環細胞癌は比較的早期に腹膜播種として再発することが多いとされるが,10年の経過で再発した症例は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 吉川 雅文, 小野 栄治, 池田 政宣, 嶋谷 邦彦, 木村 まり
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1930-1934
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.下腿浮腫,息切れを主訴として当院入院となった.入院時の血液検査では低蛋白血症(TP 5.0g/dl,Alb 3.0g/dl)を認め,上部消化管造影検査および内視鏡検査で,胃体上部前壁小彎にカリフラワー状の隆起性病変を認め,生検で高分化型腺癌と診断した.絶食下に高カロリー輸液,アルブミン製剤の投与を行ったが低蛋白血症が進行したため(TP 3.9g/dl,Alb 2.1g/dl),蛋白漏出性胃癌の診断のもと,胃局所切除術を施行した.病理組織学的には壁深達度m,stageIAの早期癌であった.術後低蛋白血症は劇的に改善し,下腿浮腫,息切れも消失した.現在術後7年を経過し,再発なく良好に経過している.本邦では,蛋白漏出性胃癌の報告は稀であり,数十例の報告のみである.治療は早期の手術が有効であるが,ほとんどは広範囲胃切除術が施行されており,胃局所切除が施行されたのは自験例で2例目であった.
  • 北川 光一, 石塚 直樹, 小松 永二, 山本 雅一
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1935-1940
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.嘔気,嘔吐,腹痛のため当院受診した.腹部単純X線写真,腹部超音波検査にてイレウスと診断し入院した.腹部CTでは骨盤内左側の小腸内に径約3cmの石灰化を有する陰影を認めた.イレウス管造影でも同部回腸に腫瘤状の陰影欠損を認め,閉塞していた.腸石による閉塞性イレウスと診断し開腹術を施行した.回腸末端から約60cmの部位に閉塞部位を認め,結石様腫瘤を触知した.小腸部分切除を施行した.切除標本にて,4.5×3.5×2.0cmの腸石を認めた.結石成分分析にて胆汁酸結石と考えられた.術後の消化管透視,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸水平脚に径3~6cmの憩室を数室認め,各憩室内に結石を認めた.また,術前後のCT,US,MRCPで胆道系異常は認めなかった.以上から,十二指腸憩室内結石の墜落によるイレウスと考えられた.十二指腸憩室内結石落下嵌頓による腸石イレウスは本邦では2例目であった.
  • 寺岡 義布史, 繁田 直史, 大森 一郎, 丹治 英裕, 児玉 真也, 住元 一夫
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1941-1944
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Churg-Strauss症候群は気管支喘息と好酸球増多,および結節性動脈周囲炎様の症状を3主徴とする比較的稀な疾患である.今回われわれはChurg-Strauss症候群に合併した下膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する.症例は49歳,女性.Churg-Strauss症候群にて近医でステロイドの内服加療中であった.夜間に腹痛出現したため当科受診.腹部全体に圧痛を認め,造影CTにて後腹膜血腫,腹腔内出血を認めた.緊急血管造影検査にて下膵十二指腸動脈瘤破裂と診断し,塞栓術を施行した.その後,保存的治療を行い,全身状態も改善したため経口摂取を開始したところ,嘔吐出現.十二指腸閉塞と診断し保存的治療を行うも改善せず,第21病日に手術を施行した.術中所見では血腫除去による通過障害の改善は困難と判断し,胃空腸吻合術を施行した.術後15日目に退院となった.腹腔内出血を合併したChurg-Strauss症候群はごく稀であり報告する.
  • 石川 原, 藤原 省三, 新崎 亘, 中居 卓也, 竹山 宜典, 大柳 治正
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1945-1950
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    患者は40歳,女性.十二指腸憩室穿孔で緊急入院となった.CTでは横隔膜直下の下大静脈周囲から骨盤内にまで広がる著明な後腹膜気腫を認めたが,液体貯留は認められなかった.また血液検査で炎症反応を示唆する検査値の上昇はなかった.絶飲食,輸液,経鼻胃管による持続吸引,抗菌薬およびプロトンポンプインヒビターの投与を行い,保存的治療が奏効した.十二指腸憩室穿孔は比較的に稀な病態であり,治療法のコンセンサスは得られていない.十二指腸憩室穿孔に対して保存的治療が奏効した1例を報告するとともに,保存的治療の適応について考察した.汚染が高度な症例は手術すべきであるが,後腹膜腔の汚染が軽度で早期に治療が開始されれば保存的治療が可能と思われる.しかし,炎症反応の増悪や全身状態が悪化した場合には直ちに開腹ドレナージ術が必要と考えられた.
  • 岩崎 靖士, 佐藤 知美, 清水 壮一, 中村 修三, 高橋 伸
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1951-1954
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.黒色便,眩暈を主訴に当院受診した.採血上貧血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ,ファーター乳頭の口側2cmの十二指腸下行脚に約2cmの潰瘍を有する隆起性病変を認め同部より出血をきたしていた.内視鏡的に止血できず,受診後2日目に腫瘍核出術を行い止血しえた.病理組織学的所見で十二指腸粘膜下にHeinrichI型の十二指腸異所性膵を認めた.潰瘍底には小動脈および拡張した毛細血管が認められた.十二指腸粘膜下腫瘍からの出血に対して保存的治療で止血しえない症例では外科的治療を行う必要があると考えられた.異所性膵は一般に無症状に経過することが多く,手術摘出標本や剖検時に指摘されるものがほとんどである.今回,十二指腸異所性膵により出血をきたした稀な症例を経験したため報告する.
  • 鈴木 香峰理, 永野 靖彦, 森 隆太郎, 國崎 主税, 今田 敏夫, 嶋田 紘
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1955-1959
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.2004年10月 右季肋部痛を主訴に当院を受診した.同部位に著明な圧痛,反跳痛を認め,また,腹部CTでは回腸周囲のfat densityの上昇および右側腹直筋の肥厚を認め大腸憩室炎と診断された.入院後絶飲食,抗生剤投与を行い症状は一時改善したが,経口摂取開始後再び発熱と上腹部痛を認め開腹手術を施行した.圧痛部位の直下に手拳大の腫瘤を認め,空腸,横行結腸が巻き込まれていたため,腫瘤を含め小腸部分切除及び横行結腸部分切除術を施行した.腫瘤内部は膿瘍を形成しており,内部に小腸と交通する爪楊枝を認め,爪楊枝による消化管穿孔と診断した.爪楊枝による消化管穿孔は稀で,病歴から誤飲の有無を聞き出せないことも多く,診断に難渋する.本症例は,急性腹症の鑑別診断のひとつとして重要な症例と考え報告した.
  • 米山 公康
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1960-1963
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.32年にわたる全身性エリテマトーデスの治療歴がある.突然の下腹部痛を主訴とした.左側臥位での腹部単純レントゲン写真および腹部CTスキャンにおいて腹腔内遊離ガス像を認めたため,下部消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急開腹手術を実施した.腹腔内には混濁した腹水が貯留し,回腸末端より約10cmの部位に穿孔を認めたため同部位を含む小腸部分切除術を施行した.病理組織学的には粘膜下組織の小血管および周囲間質にリンパ球を主体とする強い炎症性細胞浸潤を同心円状に認め,さらにフィブリノイド壊死もみられ典型的な壊死性血管炎の所見を呈していた.この所見より腸管壁の壊死性血管炎による血栓形成,虚血が穿孔の原因と考えられた.一旦は救命できたが,この後も異時性に結腸,回腸穿孔を反復し,初回手術より3カ月に敗血症による多臓器不全で死亡した.
  • 大原 守貴, 三宅 洋, 菊池 剛史, 原 順子, 君塚 圭
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1964-1967
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.腹痛を主訴に来院し腸閉塞の診断で入院した.入院2日目に下血を認めたため大腸内視鏡検査を施行,S状結腸に粘膜の発赤と浮腫を認め虚血性大腸炎と診断し,絶食輸液の治療を継続.軽快し食事開始したが,腹痛と腹部膨満が再燃,腹部X線上小腸イレウス像を呈したためロングチューブを挿入,小腸に20cmの管状狭窄を認めた.一時退院したが腹痛が再燃し再入院,CT上初回入院と同様に小腸壁肥厚の所見を認めたため,初回発症から71日目に手術施行した.Treitz靱帯から150cmの部位より15cmにわたる発赤を伴い肥厚した腸管を認め,口側の浮腫状腸管を含めて60cmの小腸を切除した.切除標本では小腸壁の全周性肥厚と内腔の狭窄を認め,病理組織検査で狭窄型虚血性小腸炎と診断された.虚血性大腸炎を併発した虚血性小腸炎は報告例がなく,きわめて稀な症例と考えられたため報告する.
  • 藤原 康朗, 緑川 武正, 八木 秀文, 相田 邦俊, 蒔田 勝見, 坂本 道男
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1968-1972
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.腸閉塞,腹壁膿瘍のため精神科病院から転院.56歳で胃潰瘍手術歴あり.入院後,腸閉塞はイレウス管により1週間で軽快した.腹壁膿瘍は切開排膿ドレナージにて経過をみたが難治性であった.その後,腸閉塞が再発し保存的にみたが,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を行った.術中所見では小腸と腹壁手術創との間の索状物による絞扼性イレウスであった.索状物は腹壁の膿瘍腔に連続していた.手術は索状物の切離による絞扼解除と膿瘍腔の切除を施行した.術後は経過良好であった.病理診断で膿瘍壁は全層性の小腸で構成されていたことより,膿瘍腔は小腸憩室に起因したものと考えられた.小腸憩室による腹壁膿瘍とそれと連続した索状物により絞扼性イレウスを併発した症例は極めて稀で文献的考察を加え報告する.
  • 椛島 章, 木下 忠彦, 伊藤 心二, 岩下 幸雄, 福澤 謙吾, 若杉 健三
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1973-1976
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.主訴は下血.一般上下消化管内視鏡検査,CT検査,血管造影ならびに経口的小腸内視鏡では出血源を特定できなかった.経肛門的小腸内視鏡検査と透視検査にて回盲部より約1m口側の部位にMeckel憩室と思われる憩室を認めたが,観察時には出血は認められなかった.小開腹にて手術施行.Meckel憩室根部より内視鏡を挿入し,術中小腸内視鏡検査を施行した.術前に検索できなかった小腸に出血源が存在しないことを確認し,Meckel憩室を切除した.術後,下血の再発は認められなかったため,出血源はMeckel憩室であったと最終的に診断した.今症例において,診断ならびに術式決定(切除範囲の決定)に術中の小腸内視鏡検査が有用であった.
  • 水崎 馨, 斉藤 英一, 小林 秀昭
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1977-1981
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.腹痛と嘔気を主訴に来院した.入院時検査所見は軽度の白血球数の上昇を認めた.腹部CT検査ではtarget sign様所見を認め腸重積が疑われた.炎症所見が軽度で,腹膜炎症状を認めなかったことから抗菌剤で経過をみた.翌日には腹痛も消失し白血球数も正常化した.同日行った腹部CT検査では腸重積様所見は消失したが,小腸内に隆起性病変を認めた.小腸腫瘍の診断で入院3日後に腹腔鏡補助下手術を施行した.手術所見は空腸下部に約40cmの拡張した腸管と発赤を認めた.発赤部を含めた小腸部分切除術を施行した.摘出標本では2カ所のU1─IIIの単純性潰瘍を認めた.今回,単純性小腸潰瘍による腸重積症に対し腹腔鏡補助下手術を行い良好な結果を得たので報告した.
  • 三木友 一朗, 池永 雅一, 日浦 祐一郎, 安井 昌義, 三嶋 秀行, 辻仲 利政
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1982-1987
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.主訴は前胸部痛.既往歴に糖尿病,高血圧,不安定狭心症を認めていた.平成17年11月,前胸部痛を主訴に来院され,黒色便および貧血を認めた.貧血の原因精査を行ったが,上下部消化管内視鏡検査にて異常を認めず,小腸造影検査でも異常を認めなかった.そこで小腸ダブルバルーン内視鏡検査を施行したところ,回腸に頂部にびらんを伴った粘膜下腫瘍を認め,この病変が出血源と考えられた.不安定狭心症も合併していたため,まず経皮経管冠状動脈拡張術を施行した後,小腸切除術を施行した.病理組織検査にて異所性膵(HeinrichII型)と診断された.今回,小腸ダブルバルーン内視鏡検査にて発見した成人回腸異所性膵の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 岩崎 純治, 矢野 隆嗣, 三田 孝行, 玉置 久雄, 石原 明徳
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1988-1992
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病(以下,R病と略記)には神経線維腫,神経鞘腫,カルチノイド等の病変が合併することが知られているが,過去10年間にR病合併gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)の報告が増加してきている.最近われわれはR病に合併した多発空腸GISTの1例を経験したので報告する.症例は53歳,女性.20歳代にR病と診断されている.黒色便と嘔吐を主訴とし当院を受診.腹部CTで骨盤内に径7cmの腫瘤が認められ,腹部血管造影で腫瘤は上腸間膜動脈より栄養されていた.小腸GISTの診断で開腹.上部空腸にそれぞれ径7cm,2cmの腫瘤と,大網に径1cmの播種性病変を認めこれらを切除した.病理組織学的にはKIT,CD34いずれも陽性でGISTと診断された.自験例を含む25例の本邦報告例について臨床病理学的検討を行う.
  • 川嶋 和樹, 石井 洋, 吉田 和哉
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1993-1996
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.腹痛を主訴に当院を受診し,腹腔内腫瘤の疑いにて当院内科より紹介.内視鏡検査では異常所見を認めず,腹部CTにて下腹部に造影効果を伴う6cm大の腫瘤を認め骨盤腔内にfluidを認めた.
    腹腔内腫瘤の診断で,平成16年11月22日手術を施行した.
    腹腔内には血性腹水(約150ml)を認め,Treitz靱帯から約210cmの回腸に壁外性の腫瘤を認めた.腫瘤には凝血塊が付着し少量の出血も認め,出血源と判断した.腫瘍を含めて,小腸を部分切除し端々吻合した.免疫染色でc-kitのみが陽性であり,GISTと診断した.術後約3年の現在,無再発生存中である.
  • 大城 充, 二本柳 康博, 田中 宏, 森山 彩子, 瓜田 祐, 加藤 良二
    2008 年 69 巻 8 号 p. 1997-2001
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.1994年12月,小腸原発腫瘍の初回手術が施行され平滑筋肉腫と診断された.1997年8月,肝腫瘤に対し外側区域切除が施行され,平滑筋肉腫の転移と診断された.2000年11月,大網に多発転移をきたし大網切除術が施行され,CD34陽性でGISTと診断された.翌年6月右総腸骨動脈周囲リンパ節転移に対し腹腔鏡下リンパ節郭清術が施行された.2002年6月肝S7に腫瘤出現し,2度radio frequency thermal therapy(RFA)が施行された.2004年8月,肝S8の腫瘤に対し肝部分切除術が施行された.2007年2月右卵巣腫瘍の診断で手術が施行され,GISTの骨盤内再発と診断された.2008年3月現在,外来でimatinib投与により経過観察中である.初回手術から初回再発までの期間が長い症例に対しては積極的に手術を施行するとする報告が多くみられるが,その後の再々発例に対しても可能な限り根治性を求めた治療を行う意義があると考えている.
  • 櫻井 康弘, 和田 光二, 乾 嗣昌
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2002-2006
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.平成19年5月3日腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診し,腸閉塞の診断で入院となった.胃管を留置して症状が軽快したため胃管を抜去した.5月9日夕より再び腸閉塞を発症し,イレウス管を挿入したところ数日で先端は上行結腸まで到達した.クランプにて経過観察を行ったが,再度腸閉塞となったため,癒着性あるいは小腸腫瘍による腸閉塞と診断し,5月17日に手術を施行した.回腸末端より約100cm口側で20cmにわたり回腸が腫瘍を先進部に重積しており,腫瘍を含めた小腸部分切除術を施行した.組織学的には類円形~短紡錘形の間葉系細胞の増生を認め,免疫染色でGISTと診断した.術後11カ月の現在,再発の所見なく経過観察中である.原因不明の腸閉塞に対してはGISTなどの小腸腫瘍も念頭において対処する必要があると考えられた.
  • 猪狩 公宏, 渡辺 雄一郎, 落合 高徳, 東海林 裕, 熊谷 洋一, 山崎 繁
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2007-2010
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.便潜血反応陽性にて施行した大腸内視鏡検査でBauhin弁より口側5cmの部位に隆起性病変を認めた.精査のためダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行したところ,生検でカルチノイド腫瘍と診断された.よって腹腔鏡補助下回盲部切除術及びリンパ節郭清術を施行した.術後現在も外来経過観察中であるが明らかな再発や転移は認めていない.小腸カルチノイドは,その発生部位により術前診断は困難な疾患の一つである.今回われわれはダブルバルーン小腸内視鏡を用いて術前にカルチノイド腫瘍と診断した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 北出 貴嗣, 小山 隆司, 栗栖 茂, 梅木 雅彦, 大石 達郎, 黒田 武志
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2011-2015
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    盲腸捻転症は遭遇する機会の少ない比較的稀な疾患である.今回われわれは90歳以上の高齢者2例の盲腸捻転症を経験した.症例は96歳と92歳の高齢者で,腹痛,嘔吐を主訴とするイレウスで発症し,CTと注腸造影で盲腸軸捻転を疑われ緊急手術が施行された.2例ともに盲腸の後腹膜への固定は不良で,回盲部が捻転しすでに壊死に陥っていた.そのため腸切除が行われ一期的に再建が行われた.術後経過は2例ともに良好であった.2例とも特別養護老人ホーム入所中の準寝たきりの高齢者であった.本疾患は比較的稀ではあるが,高齢化社会の到来とともに今後増加が予想され,高齢者のイレウス症例では本症も念頭において診断・治療を行うことが必要と考えられた.高齢者においても腸管切除を安全に行い得る現在では,術後の捻転再発も考慮し,術式としては捻転した回盲部の切除が第一選択と考えられた.
  • 泉澤 祐介, 亀田 久仁郎, 久保 章, 杉浦 浩朗, 長嶺 弘太郎, 竹川 義則
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2016-2019
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.平成18年5月,右下腹部痛を主訴に当科を受診した.血液検査で白血球,CRPの著明な上昇を認め,腹部CTで石灰化を伴う腫瘤陰影を認めたため,急性虫垂炎と診断し,緊急手術となった.開腹所見では腫大した虫垂を認め,虫垂切除術を施行した.病理組織所見では蜂窩織炎性虫垂炎の診断で,粘膜下から漿膜下にかけて変性,石灰化した日本住血吸虫卵を認め,陳旧性の肉芽腫像と考えられた.術後の便集卵検査では異常を認めず,ELISA法でも抗虫体・虫卵抗体価陰性であったため陳旧性日本住血吸虫症と診断し駆虫は行わなかった.医中誌で検索したかぎり,本邦では1980年から2006年までに陳旧性日本住血吸虫症合併虫垂炎は19例の報告が認められた.国内では1978年を最後に新規の日本住血吸虫症患者は発生していないが,陳旧性症例は勿論,輸入症例も報告されており,日常臨床において留意しておくべき疾患であると思われた.
  • 飯野 一郎太, 斉藤 貴明, 金子 猛, 綿引 洋一, 黒田 誠
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2020-2024
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    S状結腸へ穿通した急性虫垂炎の1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.右側腹部痛および37℃台の発熱を主訴に来院した.右下腹部に圧痛を伴う硬い腫瘤を触知したが,腹膜刺激症状は認めなかった.血液検査上著明な炎症所見を呈し,腹部CTでは右下腹部に回腸から上行結腸が一塊となった8cm大の腫瘤を認めた.虫垂炎による腹腔内膿瘍を強く疑ったが,抗生剤の投与により症状は著明に改善したため,緊急手術は施行しなかった.保存的治療後の下部内視鏡検査ではAVより20cm口側のS状結腸に陥凹を伴う隆起性病変を認め,下部消化管造影では虫垂からS状結腸隆起性病変部へ線状の交通を認めた.急性虫垂炎によるS状結腸穿通と診断し,発症より2カ月後に開腹手術を施行した.開腹所見では虫垂が一部索状にS状結腸へ癒着しており,瘻孔と判断した.手術所見で悪性の可能性はないと判断し,索状物の結紮切離・虫垂切除を施行した.
  • 山崎 一麿, 坂東 正, 増山 喜一, 田近 貞克, 川口 誠, 塚田 一博
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2025-2029
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.右腰背部痛と発熱を主訴に来院した.腹部CT検査で右腸腰筋膿瘍と診断され,腹膜外経路でドレナージ術を施行した.経過良好で退院となったが半年後に腸腰筋膿瘍の再発をきたし来院.経皮的ドレナージ術後に注腸造影検査を施行したところ,虫垂先端部に膿瘍腔と瘻孔で交通する虫垂壁の穿孔部が確認された.虫垂穿孔による腸腰筋膿瘍の診断で,虫垂切除術を施行した.摘出標本の病理学的組織検査で,穿孔部周囲の虫垂壁には固有筋層が脱落していたことから,虫垂憩室が後腹膜腔に穿孔して発症した腸腰筋膿瘍と考えられた.虫垂憩室穿孔が原因となった腸腰筋膿瘍は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 渡辺 啓太郎, 佃 和憲, 高木 章司, 池田 英二, 平井 隆二, 辻 尚志
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2030-2033
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    患者:36歳の女性.現病歴:平成19年7月下旬から腹痛を自覚し当院救急外来を受診した.回腸末端の腸閉塞の診断でイレウス管を挿入されたが,軽快せず手術目的で外科に紹介された.手術所見では虫垂の漿膜は顆粒状の変化を呈し回腸に強固に癒着しており回腸の閉塞をきたしていたため回盲部切除を行った.創部感染を併発したが術後20病日で退院した.永久病理検査では虫垂の子宮内膜症であった.虫垂子宮内膜症は腸管子宮内膜症の3%の頻度で比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 絹田 俊爾, 輿石 直樹, 雨宮 秀武, 渡部 裕志, 岡崎 護, 木嶋 泰興
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2034-2037
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.左肺の結節影を指摘され,当院呼吸器科にて経過観察中であった.平成19年9月より,糖尿病に対してα-グルコシダーゼ阻害剤(以下α-GI)の内服を開始した.呼吸器科にて定期検査のためCT検査を施行され,左肺全体に網状影と結節の増大傾向を呈し,肺癌と診断された.さらに,腹腔内遊離ガス像および横行結腸が中心の腸管壁内ガス像を指摘され,当科に紹介となった.消化管穿孔を示唆する所見を認めず,α-GIによる気腹症を伴う腸管嚢胞状気腫症(以下PCI)と診断した.α-GIの内服を中止し,保存的治療にて軽快した.本邦におけるα-GIの関与による気腹症を伴うPCIの論文報告は4例であり,自験例を含め5例と稀な症例である.
    さらに呼吸器疾患を合併する症例が本症例を含め3例で,本症の発生に呼吸器疾患の関与が考えられた.
  • 大石 幸一, 小出 圭, 福田 三郎, 先本 秀人, 江藤 高陽, 高橋 信
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2038-2042
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.腹痛嘔吐を認めたため当院を受診した.腹部CT検査でS状結腸に腫瘤像およびその口側腸管の拡張を認めたため大腸癌イレウスと診断され入院となった.経肛門的に減圧チューブを挿入し加療を行うも翌日早朝にショック状態となり,大腸穿孔の疑いで緊急開腹手術を施行した.腹腔内には腹水を認めたが漿液性であった.S状結腸に腫瘍を認め,盲腸からS状結腸までの腸管は拡張し,緑褐色調に壊死していた.結腸全摘後,回腸直腸吻合を行った.S状結腸腫瘍の病理診断は高分化腺癌であり,盲腸からS状結腸まで広範囲に壊死していた.術後,DIC,肝不全,腎不全に対して集中治療を行い救命しえた.腹部CT検査で口側大腸の拡張が著明な大腸癌イレウスは,重篤な壊死型閉塞性大腸炎を呈する可能性があり,初期治療として減圧チューブによる保存的治療を行いつつも,早急な手術の必要性にも留意すべきと考えられた.
  • 中川 和也, 長嶺 弘太郎, 亀田 久仁郎, 徳久 元彦, 盛田 知幸, 久保 章
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2043-2047
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    成人の腸重積症は稀で,さらに腸重積による大腸穿孔から腹膜炎を起こした例は極めて稀である.今回その1例を経験したので,ここに報告する.症例は56歳,男性.腹痛を主訴に平成19年12月他院に入院され,第12病日腹部単純X線写真上free airを認め,消化管穿孔の診断で当院紹介受診となった.来院時意識清明で,上腹部に圧痛,筋性防御を軽度認めた.腹部単純CTより横行結腸癌を先進部とする腸重積に伴う大腸穿孔,汎発性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した.開腹すると,横行結腸脾彎曲部よりに直径5cmの穿孔を認め,穿孔部からは2型腫瘍を先進部とする約10cmの重積腸管が腹腔内に露出していた.口側腸管の拡張および浮腫は著明で,低栄養でもあるため腸管吻合は施行せず,上行結腸,横行結腸,下行結腸切除術+D1郭清,回腸人工肛門造設,腹腔ドレナージ術を施行した.術後経過は良好で,術後13日目に前医へ転院となった.
  • 大平 学, 宮内 英聡, 首藤 潔彦, 松原 久裕
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2048-2052
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    42歳,女性.平成19年3月下旬から腹部膨満感が出現.婦人科に受診し,子宮筋腫,卵巣腫瘍が疑われたが,消化管の精査目的で4月上旬外科紹介受診.下部消化管内視鏡で,S状結腸癌もみつかった.4月末日,朝から激しい腹痛を訴え当院の救急外来を受診.緊急CT検査,腹腔穿刺で,腫瘍の破裂による腹腔内出血と診断され,同日緊急入院.入院後,貧血の進行はなかったが,腹痛は改善なく,両側胸水が出現し,腹水も増量した.徐々に状態が悪化したため,5月初旬,緊急手術を施行.開腹すると2Lの血性腹水と腹膜播種を認めた.両側卵巣摘出術,Hartmann手術を施行した.病理検索の結果,卵巣,播種結節ともにS状結腸癌からの転移と診断された.
    大腸癌卵巣転移の報告は近年増加してきている.腹腔内出血をきたすことは稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 伊藤 文人, 遠藤 豪一, 竹重 俊幸, 栁沼 裕嗣, 花山 寛之, 阿部 幹
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2053-2057
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's nodule(SMJN)と呼ばれ,比較的稀で,予後不良な徴候として知られている.今回われわれは臍転移を認めた大腸癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は49歳,女性.2004年12月に上行結腸癌の診断にて結腸右半切除術を施行した.術後,補助化学療法を行うも2005年7月に肝転移を認め,肝腫瘍核出術を施行した.2006年5月に再び肝転移,肺転移を認め,肝腫瘍核出術+肺部分切除術を施行した.2006年10月,臍転移の出現を認めた.臍転移に連日の処置を必要としたため,QOLの改善目的に2007年1月に臍転移摘出術を施行した.その後,自宅療養を行うも,2007年9月に多発性肺転移による呼吸不全により死亡した.
    SMJNは他部位の転移状況や全身状態によってはQOL向上の観点から切除も考慮すべきであり,進行大腸癌ではその存在も念頭においた診療を行うことが重要と思われた.
  • 村田 智美, 清水 淳三, 荒能 義彦
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2058-2062
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.平成17年1月横行結腸浸潤を呈する左腎細胞癌に対し左腎摘出術+結腸・脾・膵尾部合併切除を施行した.平成18年5月大量下血にて当院紹介受診となった.下部消化管内視鏡では下行結腸に内腔をほぼ閉塞し,表面壊死を伴う1型腫瘍を認め,生検では確定診断は得られなかった.CTでは下行結腸に内腔を占める造影効果のある腫瘤と左肺下葉に2cm大の腫瘤影がみられた.肺転移を伴う出血性大腸癌疑いと診断し,下行結腸切除術を施行した.組織検査にて内視鏡で確認できた1型腫瘍とさらに口側に粘膜下腫瘍を認め,どちらも腎癌の大腸転移と診断された.腎細胞癌の消化管転移は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 澤井 利次, 石田 誠, 小畑 真介, 戸川 保, 藤田 邦博
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2063-2067
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.下血を主訴に当院を受診し,大腸内視鏡検査で直腸に粘膜下腫瘍様病変を認め精査目的に入院となった.生検にて胞体がクリアな腫瘍細胞を認め,子宮・卵巣由来の悪性腫瘍が考えられたが,子宮および卵巣摘出術後状態であり診断に難渋した.直腸癌の可能性も否定できず,低位前方切除術を施行した.腫瘍は直腸壁外に主座をおき直腸内腔に潰瘍を形成した病変で,組織型はclear cell adenocarcinomaであった.腫瘍周囲の直腸壁内に子宮内膜組織を認めたため直腸子宮内膜症の癌化と診断した.術後18カ月経過した現在,再発の徴候は認めていない.腸管子宮内膜症の癌化は稀な症例であり報告する.
  • 和田 博雄, 菅野 伸洋, 森永 聡一郎, 杉政 征夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2068-2072
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    57歳,女性.右肘部軟部腫瘍の精査のため施行した腹部単純CTで肝門部に腫瘤を指摘された.dynamic CTの早期相で,同部は淡く造影され,早期相から後期相にかけて,内部に造影剤のpoolingを認めた.3D画像では右肝動脈は狭小化し,その肝側は嚢状に拡張し,途絶していた.右肝動脈の仮性動脈瘤と診断し,手術を施行した.手術所見は,総胆管背側に結合組織に被包された腫瘤を認め,右肝動脈の仮性瘤と診断した.術中color Doppler US(CDUS)では,瘤内に血流シグナルを認めたが,瘤より肝側の血流は認めず,動脈結紮術の方針とした.術後は,軽度のトランスアミナーゼの上昇を認めたのみで,術後10日目に軽快退院した.肝動脈瘤の術前診断にはdynamic CTとその3D画像が,術中の方針決定にはCDUSが有用であった.血行再建の必要のない非緊急例では,動脈結紮術は安全な治療法の一つと考えられた.
  • 松久 忠史, 田口 宏一, 今井 敦, 湊 正意
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2073-2077
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    肝動注療法後のbiloma内にpseudoaneurysmが形成され原因不明の下血として発症した1例を経験した.症例は73歳,男性.上行結腸癌同時性多発肝転移にて回盲部切除術,胆嚢摘出術,肝動脈リザーバー留置術後に肝動注化学療法を施行した.5カ月後に肝内側区の梗塞と肝門部から肝S4にかけてのbilomaを認めた.CPT-11による全身化学療法に変更し約1年後に肝転移は消失したがbilomaに変化を認めなかった.その後下血をきたし入院した.入院から3度目のCTでbiloma内にpseudoaneurysmが認められ,MRIでbiloma内への出血と診断された.肝動脈塞栓術を施行し下血は軽快した.5カ月後,再度下血が出現.初回とは別の血管に形成されたpseudoaneurysmに塞栓術を施行した.出血源の確定にはCTを繰り返し撮影することが有用であり肝動注療法においてはbilomaの部位にpseudoaneurysmが繰り返し形成される可能性を念頭におくべきである.
  • 星本 相淳, 守瀬 善一, 棚橋 義直, 香川 幹, 溝口 良順, 杉岡 篤
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2078-2082
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.B型慢性肝炎による肝機能障害にて当院通院中であった.平成16年10月,突然の腹痛が出現し近医を受診.腹部CTにて腹腔内の血腫と肝に腫瘍性病変を認め当院に緊急入院となった.入院時の腹部CTではSpiegel葉に4.5cm×4.0cm大,S8に2.5cm大の早期濃染と網嚢内に充満する血腫を認めた.腹部血管造影では明らかなextravasationは認めなかったが,血腫の局在からSpiegel葉原発肝癌の破裂と診断しTAEを施行した.TAE後2カ月目にSpiegel葉切除,S8部分切除を施行した.病理組織学的にSpiegel葉の腫瘍は広範な壊死と凝血塊を伴う中分化型肝細胞癌と診断された.術後16カ月目に残肝多発再発,多発肺転移,傍大動脈リンパ節転移のため死亡した.本邦報告例13例の集計から網嚢内血腫はSpiegel葉を原発とする肝細胞癌の破裂に特徴的な画像所見と考えられた.
  • 榎本 正統, 進藤 健, 田中 広章, 鶴井 茂, 土田 明彦, 青木 達哉
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2083-2087
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.嘔気,嘔吐を伴った心窩部痛が出現し入院となった.入院時画像診断では胆嚢は腫大し壁肥厚を認めたが,気腫性変化はなく急性胆嚢炎と診断した.SBT/CPZ1g/日を投与し保存的治療を行ったが臨床所見の改善無く,CRP,CPKの著明な上昇を認めた.そのため初回検査より約27時間後に再度腹部単純CT検査を施行したところ胆嚢周囲および肝内胆管に低吸収域を認め気腫性胆嚢炎と診断,同日開腹胆嚢摘出術を施行した.摘出胆嚢は急性壊疽性胆嚢炎と診断され,胆汁培養の結果C.perfringensE.casseliflavusE.coliが同定され起炎菌と考えられた.
    今回われわれは胆管内ガスを伴い急速な画像変化を認めた気腫性胆嚢炎を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 篠原 永光, 河崎 秀樹, 鷹村 和人, 大谷 広美
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2088-2092
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy:以下,LC)後に胆嚢癌と診断され複数のポート部位再発を認めた1例を経験した.症例は60歳,男性.胆石症に対しLC施行,術後にss胆嚢癌と診断され,追加切除を施行した.経過観察中に腹部CTで臍部と右鎖骨中線上のポート挿入部に腹壁腫瘤を指摘され細胞診で腺癌細胞を認めたためポートサイト再発と診断した.他に再発を認めなかったため,追加切除後約1年2カ月で腫瘤摘出術を施行した.術中新たに確認した前腋窩線上のポート挿入部を含めて3病変ともに皮膚から腹膜まで全層を切除した.病理学的には3病変ともに癌部は壁側腹膜面に露出しておらず腹膜外での発育形態であった.自験例では腹膜播種所見もなく局所再発であり根治手術と考えられた.
  • 中山 中, 畑谷 芳功, 大野 康成, 竹内 信道, 辻本 和雄, 伊藤 憲雄
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2093-2096
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.胃癌に対して9カ月前に幽門側胃切除術,胆嚢摘出術を施行した.術後外来にてfollow up中,腹部CT上,肝左葉に直径1cm大の腫瘍と肝内胆管の拡張を認め,胃癌の肝転移もしくは胆管細胞癌の診断で,平成18年2月肝左葉切除術を予定した.開腹時,右肝動脈は胆嚢管処理部付近で瘢痕化して細くなり,拍動を認めず,胆嚢摘出の際の右肝動脈損傷が疑われた.左肝動脈をクランプすると,肝内の動脈血流がなくなるため,肝左葉切除を行うためには右肝動脈の再建が必要であった.結紮切除予定であった左肝動脈を遠位右肝動脈と大伏在静脈を間置して再建を行ったところ,肝内動脈血流は良好となったため,肝左葉切除術を施行しえた.術後の経過は良好で,第13病日に退院した.病理診断は胆管細胞癌であった.
  • 森本 大樹, 味木 徹夫, 藤田 恒憲, 新関 亮, 松本 逸平, 具 英成
    2008 年 69 巻 8 号 p. 2097-2101
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    69歳,女性.黄疸を主訴に近医受診し肝門部胆管癌と診断され,精査加療目的にて当科紹介入院となったが,肝転移を認めたため手術適応外と判断し,gemcitabine(GEM)を投与開始し外来継続投与を行った.投与開始後148日目に下肢脱力感を訴え,両側下肢近位筋の軽度筋力低下を認めたが,血液検査で異常なく経過観察となった.しかし,両下肢疼痛・筋力低下が進み,投与開始後162日目に両下肢疼痛・近位筋筋力低下,発熱,乏尿を主訴に当院救急外来受診となった.血液検査で炎症反応,筋原性逸脱酵素の上昇を認め,急性腎不全の所見で入院となったが,安静,輸液にてcreatine kinase(CK)は低下を示し,利尿を得た.疼痛,筋力低下は徐々に改善し入院後13日目からリハビリテーションを開始し,症状発現後約2カ月で症状消失した.原因精査の結果,GEMによる横紋筋融解症が最も強く推測された.
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