2008 年 69 巻 9 号 p. 2282-2286
症例は62歳,女性.3年前に胃癌に対し,胃全摘術を受けた既往がある.平成19年11月左下腹部痛にて受診した.精査にて胃癌再発と考えられる結腸狭窄によるイレウスと診断し,イレウス管留置の上,保存的加療を開始した.第7病日に開腹術を行ったが,腫瘍摘出困難につきバイパス術を施行.減圧目的にてイレウス管を留置した状態で閉腹した.術後5日目にイレウス管からの排液の増量と画像上イレウス所見の増悪を認め,腹部CT検査にて腸重積症との診断を得たため,緊急開腹術を施行した.手術所見では回盲部より100cm口側の小腸と同部位よりさらに100cm口側の小腸に順行性の腸重積を認めた.前者はイレウス管先端部を先進部としていたが,いずれも用手的に整復可能であった.術後は順調に回復し,退院となった.イレウス管が誘因と考えられる2カ所以上に同時発症した腸重積は極めて稀であり,自験例を含め現在までに本邦で8例の報告のみである.