2008 年 69 巻 9 号 p. 2429-2434
症例は79歳,女性.右下腹部から鼠径部の発赤,浮腫で近医に入院し,右下腹部ガス壊疽の疑いで当センターへ転院となった.意識清明,血圧100/60mmHg,心拍数75/分,末梢冷感なし.腹部に圧痛,筋性防御はなかったが,右腋窩から右鼠径にかけての気腫と右鼠径部発赤,腫脹,熱感,圧痛を認めた.肛門周囲に異常はなく,血液検査では炎症所見,血小板数軽度低下,凝固異常を認めた.壊死性筋膜炎のドレナージを目的に病変部を局所切開したところ便汁が排出し腸管の大腿ヘルニア嵌頓絞扼壊死穿孔と診断した.開腹すると回腸がヘルニア門に癒着しRichter型嵌頓ヘルニアを形成し,ヘルニア内容と腹腔内とは隔離されていた.回腸部分切除と右下腹部皮膚切開,部分的デブリドマンを行った.術後は陰圧持続洗浄吸引ドレッシングとし,間歇的洗浄,デブリドマンを繰り返し,創面が肉芽で覆われるのを待って第19,33病日に植皮術を施行し第41病日に転院としえた.