抄録
症例は54歳,男性.胸部違和感にて近医受診し,膵尾部癌の診断にて手術を予定されていたが当院を希望し受診した.同様の診断にて手術を勧められたが拒否,1カ月後,腹痛出現したため手術を希望し再受診,手術を施行したが,肝転移,腹膜播種あり試験開腹に終わった.退院後,外来にて塩酸ゲムシタビンによる化学療法を1クール終了したところ,悪寒戦慄を伴う上腹部痛を認めた.腹部CT上,腫瘍はほぼ壊死に陥り,空洞化していた.腹腔内free airも認められ,腫瘍浸潤部位の横行結腸が化学療法の効果で腫瘍壊死に陥り,穿孔をおこしたものと診断した.経過中,消化管出血もきたし,横行結腸切除,人工肛門造設術を施行した.塩酸ゲムシタビン単剤による化学療法中の大腸穿孔の報告は自験例を含め2例と極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.