抄録
1999年7月から2007年12月までに当院において施行した腹腔鏡下虫垂切除術267例について,2004年6月までの117例(前期群)と,2004年7月以降の150例(後期群)の2群にわけ,両群間で創感染および腹腔内膿瘍の発生率,術後在院日数を比較検討した.なお前期群ではドレーン留置に関しては主治医の判断に任せていたが,後期群では汚染の程度に関わらずドレーン留置を一切行わなかった.両群とも腹腔鏡手術は3ポートで施行し虫垂間膜は超音波凝固切開装置,虫垂根部は自動縫合器にて切離した.炎症が強い場合は生食にて十分に洗浄を行った.前期群では57例(48.7%)にペンローズドレーンが留置された.創感染は前期群7.7%に対し後期群1.3%と有意に発生率の減少を認めた.腹腔内膿瘍は前期群4.3%に対し後期群2.0%と両群間に差は認められなかった.今回のわれわれの検討では腹腔鏡下虫垂切除術においては炎症の程度に関わらずドレーンを留置する必要はないという結果を得た.