抄録
同時性食道癌下咽頭癌の根治術後,再建空腸に転移をきたした食道扁平上皮癌の1切除例を経験したので報告する.症例は80歳,男性.45歳時に胃潰瘍で幽門側胃切除術,2005年4月に,同時性食道癌下咽頭癌で胸壁前空腸再建を用いた根治術を受けた(食道癌:中分化型扁平上皮癌,pT3,pN2,pStageIII,下咽頭癌:低分化型扁平上皮癌,pT3,pN1,pStageIII).2006年8月より前胸部下縁に発赤・疼痛・膿汁分泌を伴う腫瘤を認め,嘔気・嘔吐で経口摂取不能となったため当科入院となった.精査の結果,食道癌もしくは下咽頭癌の胸壁前挙上空腸転移および胸壁浸潤を疑い,胸壁皮膚合併切除を伴う挙上空腸部分切除術を施行した.皮膚欠損部は外腹斜筋皮弁を用いて再建した.病理診断は食道癌に類似した中~高分化型扁平上皮癌であり,食道癌の転移と診断した.文献上,再建空腸に転移をきたした食道扁平上皮癌の報告例はなく,極めて稀な症例を経験したので報告する.