悪性転化を伴った縦隔胚細胞性腫瘍は稀である．30歳男性で腺癌への悪性転化を伴った縦隔未熟奇形腫の手術例を報告する．1995年発見時に生検による確定診断は得られなかったが，AFP高値のため縦隔原発悪性胚細胞性腫瘍と診断された．化学療法と放射線療法が行われ，AFPは正常化した．2006年に腫瘤の軽度増大と前胸部痛出現し当院紹介され，同年6月に腫瘤兼左肺全摘，心膜・左腕頭静脈・左横隔神経の合併切除を行った．腺癌は未熟奇形腫の中から発生し，胚細胞性も，肺原発も否定的で，WHO分類のgerm cell tumor with somatic-type malignancyと診断した．機序として化学放射線療法の関与が示唆された．完全切除行ったが，術後早期に腺癌の遠隔転移再発をきたした．化学療法後も腫瘍が残存または増大する場合は，somatic-type malignancyの可能性も考慮する必要がある．
