2009 年 70 巻 9 号 p. 2654-2658
症例は80歳,女性.77歳時に腹部大動脈瘤手術の既往があり,2006年1月下旬と3月上旬に一過性の下血を認め,腹部造影CT検査,上部消化管内視鏡検査にて大動脈十二指腸瘻を疑っていた.患者が手術を拒否され,保存的に経過観察を行ったが,3月下旬吐下血にて出血性ショックとなり,入院後14日目に準緊急で手術を施行した.人工血管の近位吻合部と十二指腸水平脚の間に瘻孔を認めた.十二指腸の瘻孔は単純閉鎖し,瘻孔形成部の人工血管と大動脈壁は部分切除し,解剖学的血行再建を行った.感染および再発予防目的で人工血管と十二指腸の間に大網を充填した.術後経過は良好で,術後3年現在感染の所見なく経過している.