2010 年 71 巻 10 号 p. 2552-2556
症例は67歳,女性.17年前に乳癌で左乳房切除術の既往あり.5年前の検診CTで右肺S8微小結節指摘され定期通院していた.同部は著変なかったが左舌区に淡い結節出現,TBLBにて肺腺癌の確診が得られ手術となった.術前CTでは一部胸膜肥厚あるも病的意義なしと判断していた.胸腔内観察したところ胸腔内全体に播種と思われる多発粟粒結節あり,舌区腫瘍表面にも播種を認め舌区の部分切除のみ施行した.肺癌の播種は考えにくく,術中病理診においても胸膜病変は乳癌胸膜転移とされた.最終病理においても肺内病変はER,PgR陰性,TTF-1陽性で肺腺癌,胸膜病変はER,PgR陽性でTTF-1陰性であり,類似した組織像であるが乳癌の転移播種と診断した.乳癌晩期再発報告は散見されるが,常にその可能性を念頭に置き精査加療を行わなければならない.