抄録
症例は71歳,男性.胃癌術後の腹膜転移,転移性臍腫瘍の診断でTS-1とシスプラチン(CDDP)による化学療法が計画され,TS-1(100mg/body/day,3週投与後2週休薬),CDDP(90mg/body/day8),の5週1コースの化学療法が開始された.1コース目のCDDP投与後7日目より意識障害が出現し,同時に血清Na値が108mEq/l,血清Cl値が70mEq/lと著明に低下した.血漿浸透圧218mOsm/kgH2O,尿中Na値127mEq/l,尿浸透圧533mOsm/kgH2Oであり,SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)と診断された.電解質補給にて意識障害と電解質異常は次第に改善した.再発胃癌に投与されたCDDPによるSIADH発症はこれまで報告がなく,TS-1+CDDP療法中には定期的な電解質の確認が重要と考えられた.