抄録
症例は88歳,女性.嘔吐と腹痛を主訴に当院救急外来を受診された.既往歴として間質性肺炎と狭心症があった.腹部全体に強い圧痛を認め,CTでは著明に拡張した胆嚢を認め,血清CEAが361.7ng/mlと異常高値を示していた.急性胆嚢炎の診断で保存治療を開始したが,腹部症状の増悪を認めたため,3日後に手術を施行した.しかし胆嚢に炎症所見はなく,下行結腸からS状結腸にかけて広範な腸管壊死を認めた.壊死型虚血性腸炎の診断で,左半結腸切除ならびに人工肛門造設術を施行した.第13病日に再検したCEAは2.4ng/mlと正常化しており,第21病日に軽快退院となった.機序は不明であるが,虚血性大腸炎でもCEAが高値を示すことがあることと,動脈硬化性疾患を伴った高齢者の急性腹症に対しては,本疾患の可能性をいれて診断と治療にあたることが重要と思われた.