2010 年 71 巻 2 号 p. 500-505
症例は42歳,男性.黄疸を主訴に近医を受診し諸検査の結果膵癌が疑われたため当科に紹介となった.画像診断では膵頭部に約4cmの腫瘤と門脈への浸潤も疑われた.PET-CTでは膵頭部の腫瘤に一致してSUV値が4.7の陽性集積像が認められた.以上より膵癌との術前診断で手術が施行された.病理学的検査では,腫瘤に一致した部位に腫瘍細胞は認められず炎症細胞の浸潤が認められた.また,免疫染色ではIgG4陽性の炎症細胞が認められたためIgG4関連の自己免疫性膵炎と診断された.自己免疫性膵炎は発症に自己免疫の関与が疑われる膵炎であり,FDG-PETに陽性となるため膵癌との鑑別が重要である.膵限局性の腫瘤が認められた際には本疾患も念頭に置いて慎重に診断する必要があると考えられた.今回われわれはFDG-PET陽性集積により膵癌との鑑別に難渋した自己免疫性膵炎の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.