2010 年 71 巻 2 号 p. 551-555
症例は79歳,男性.主訴は腹部膨満.2007年6月下旬より腹部膨満出現し近医受診.腹部超音波検査で多量の腹水,腫瘍マーカーの上昇(CEA 50.2ng/ml)を指摘され,当院紹介受診となった.大腸内視鏡検査ではS状結腸に1型腫瘍を認め,生検でclass4:well diff. adenocarcinoma,highly suspectedを得た.粘液を含む多量の腹水の存在から腹膜偽粘液腫を疑い,同年9月手術施行した.腹腔内には粘液結節が充満しており,腹膜偽粘液腫の所見であった.虫垂周囲にも粘液が多量に付着していたため虫垂切除を行ったが,粘膜面に異常を認めなかった.可及的に粘液結節を摘出し,S状結腸切除術を行った.病理組織検査でS状結腸腫瘍に粘液の豊富な分化のよいadenocarcinoaを認め,深達度はSEで腹膜偽粘液腫の原発巣と思われた.術後LV/UFT療法を行っており,現在も良好なPSを保っている.腹膜偽粘液腫の原発巣は虫垂や卵巣が多く,S状結腸は稀であるため報告した.