日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的治療にて軽快した門脈内ガス血症の1例
松村 富二夫柴田 雄司
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2010 年 71 巻 4 号 p. 1000-1003

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抄録

患者は88歳,女性.下腹部痛を主訴として当院に緊急入院となった.理学所見では腹部は平坦,軟で腹膜刺激症状はなく,血液生化学検査では白血球,CRPの上昇は認めなかった.腹部レントゲン写真にて腸管に著明なガス像を認め,腹部造影CT検査では肝両葉に樹枝状の門脈ガス像が存在した.中心静脈カテーテルを挿入し,抗生物質を投与し経過観察を行った.腸管壊死も考慮していたが入院後3日目には症状の改善と門脈ガスの消失が見られたため手術は行わなかった.本症の成因には腸管の壊死からの感染の結果大腸菌などのガス産生菌が関与する場合と,非絞扼性腸閉塞の場合など単に腸管内圧の上昇によって発生する場合があるが,本症例は後者であり経過観察が可能と考えられた.手術適応の判断は全身状態,腹部の理学所見などの正確な把握が重要であり,検査値としては白血球,CRPが手術適応の参考となった.

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© 2010 日本臨床外科学会
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