日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵頭部嚢胞性腫瘍の診断で手術施行した傍膵臓リンパ節結核の1例
山下 俊田中 信孝高橋 道郎野村 幸博
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2010 年 71 巻 4 号 p. 1022-1025

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抄録

症例は肺結核で内服加療歴のある45歳女性である.腹痛で近医受診し,肝十二指腸間膜から膵頭後部の腫瘤が指摘され当院紹介受診となる.各種画像検査で径4cm大の膵頭部嚢胞性腫瘍が疑われ,FDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography)検査でも比較的高度の集積を認め悪性の可能性を否定できず開腹に至った.腫瘤は膵頭部裏面のリンパ節と一塊となっており穿刺吸引細胞診を行うとclassIであった.腫瘤と膵実質との間を剥離すると腫瘍内部より黄色粘稠液が流出したため結核性リンパ節炎乾酪壊死巣と診断した.胆道閉塞はないため試験開腹で終了した.粘稠流出液はPCR(polymerase chain reaction)法で結核菌陽性であったがガフキー0号であった.1983年以降,本邦で傍膵臓リンパ節結核の報告は29例だが術前診断ができず開腹手術を要した症例は21例であった.稀ではあるが悪性疾患との鑑別が問題となった症例を経験したため報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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