日本臨床外科学会雑誌
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症例
巨大な特発性副腎血腫の1例
小泉 大佐田 尚宏佐久間 康成清水 敦俵藤 正信安田 是和
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2010 年 71 巻 5 号 p. 1314-1318

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抄録

症例は74歳,男性.便秘で近医を受診し,腹部超音波検査(US)で左上腹部腫瘍を指摘された.腹部外傷歴(-).腫瘍は左肋骨弓下8横指,直径20cmで,呼吸性に移動した.US,CT,MRIで左上腹部に左腎,膵,脾を周囲に圧排する20cmの中心壊死を伴う造影効果の乏しい腫瘍を認めた.血管造影で左副腎動脈,左下横隔膜動脈,脾動脈からの流入血管を認めた.MIBGシンチではcoldで,副腎ホルモン,腫瘍マーカーはすべて正常範囲内であった.神経原性腫瘍と診断し,手術施行した.腫瘍は周囲臓器への浸潤はなく,剥離可能だった.標本重量4,700g.術後経過良好で第11病日に退院.病理学的には,腫瘍成分は認めず,出血と様々に器質化した血腫であった.明らかな出血の誘因はなく,特発性副腎血腫と診断した.本疾患は稀な病態で,正確に術前診断することは難しいが,血腫の可能性を考慮することで手術を避けられる可能性がある.

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© 2010 日本臨床外科学会
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