2010 年 71 巻 5 号 p. 1309-1313
症例は57歳,女性.乳癌術後の経過観察中に脾腫瘍を指摘された.画像にて悪性腫瘍を否定し得なかったため,腹腔鏡下脾臓摘出術を行った.体位は右半側臥位で,左肋骨弓下に4本のポートを留置して行った.鏡視下に脾門部の処理を行った後,標本病理検索のため,6cmの小開腹創をおいて脾臓(100×90×45mm)を摘出した.腫瘤は35×40×45mm大,白色充実性で褐色結節を多数認めた.組織学的にはsclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)に相当すると診断された.
SANTは2004年に報告された炎症性偽腫瘍に類似するが独立性のある新しい概念である.本疾患報告例は未だ少なく,腹腔鏡下に摘出した貴重な症例と考えられたので報告する.