日本臨床外科学会雑誌
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症例
絞扼性イレウスで発症した成人右側Bochdalek孔ヘルニアの1例
村上 崇上向 伸幸斎藤 健人平野 進佐藤 直夫長堀 優
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2010 年 71 巻 6 号 p. 1445-1450

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抄録

症例は85歳,男性.某年,便秘,腹痛が出現し,当院受診した.腹部圧痛は認めなかったが,血液検査で軽度の炎症反応および逸脱酵素上昇,代謝性アシドーシスを認めた.腹部造影CT検査で萎縮した肝右葉背側から右胸腔内に小腸が脱出しており,脱出小腸壁の肥厚および造影効果減弱を認めたため,右横隔膜ヘルニア嵌頓,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を行った.手術所見では横隔膜右背側に3cm大の楕円形のヘルニア門が確認され,同部に回腸が嵌頓しており,右側Bochdalek孔ヘルニアと診断した.回腸は45cm長に渡り壊死し周囲に多量の血性胸水を伴っていたが,穿孔は認めなかった.回腸部分切除,胸腔ドレナージ,ヘルニア門の縫合閉鎖を施行,術後12日目に軽快退院した.成人右側Bochdalek孔ヘルニアの報告はまれである.今回われわれは絞扼性イレウスで発症した高齢者の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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