2010 年 71 巻 6 号 p. 1571-1574
症例は64歳,男性.腹部不快感を主訴に他院を受診,注腸検査で横行結腸に約6cmの腫瘍性病変がみられたため当科に紹介された.糖尿病のコントロールが不良であったため,術前2週間の糖尿病教育入院の後に手術を予定した.手術前日は水分のみ摂取可とし,昼よりニフレック2,000mlを内服させた.手術4日前のCT検査では横行結腸に腫瘍による腸重積様の像が認められたが,開腹時腹腔内を検索すると横行結腸には腫瘍がみられず,術中大腸鏡検査で術前腫瘍が位置していた部位に潰瘍性病変を確認した.それ以外に粗大病変がみられなかったため,潰瘍性病変を含む腸管を約10cm切除してD2郭清を施行した.手術切除標本には癌の遺残はなくリンパ節転移もみられなかった.有茎性大腸ポリープの自然脱落はまれであるが,巨大ポリープの場合,手術前処置が脱落を誘発する可能性があるので注意を要すると考えられた.