日本臨床外科学会雑誌
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症例
Paclitaxelによる化学療法中多発性の消化管穿孔を発症したAL型アミロイドーシスの1例
福島 剛佐野 秀一菊地 一公和田 雅孝大川 由美武田 圭佐
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2010 年 71 巻 6 号 p. 1566-1570

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抄録

症例は65歳,女性.AL型アミロイドーシスによる腎不全のため透析中,2007年左乳癌に対しBtを施行した.補助化学療法としてPaclitaxel初回投与後11日目に腹痛出現,CTにてfree airを認め穿孔性腹膜炎との診断で緊急手術を施行した.開腹すると横行結腸左側に穿孔を認め,結腸左半を切除し肛門側断端は閉鎖,横行結腸を挙上しストーマを造設した.病理組織検査で炎症や腫瘍性病変は認めず,粘膜下層の小型血管から漿膜の中型動静脈において血管壁に好酸性の沈着物を認めCongo red染色において陽性所見を認めた.以上よりアミロイド沈着またはPaclitaxelによる血管の破綻,出血,循環不全などが穿孔の原因と考えられた.術後腹腔内に留置したドレーンより排膿を認め,造影したところ小腸が描出され消化管の再穿孔が示唆されたが,保存的治療で穿孔部は自然閉鎖し術後36日目に退院となった.

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© 2010 日本臨床外科学会
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