2010 年 71 巻 7 号 p. 1860-1865
膵内副脾に発生した嚢胞性疾患は極めて稀であり,世界でも報告は50例に満たない.今回われわれは膵内副脾に発生した上皮嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.発熱を主訴に当院内科受診.精査の結果,肺炎の診断にて入院となったが,その際の腹部CTにて膵尾部に径3cmの嚢胞を伴う腫瘤性病変を認めた.退院後,各種画像学的検査を施行したが,造影MRIにて同病変は嚢胞部と三日月状の充実部に分かれており,充実部は脾臓と同程度の信号を示した.結果,鑑別診断として膵内副脾に発生した嚢胞性疾患やsolid-pseudopapillary tumorが疑われた.手術加療を希望されたため,当科紹介となり膵尾部切除・脾合併切除術が施行された.術後病理学的検査所見にて,腫瘤は膵尾部に連続した形で存在した副脾であり,内部に嚢胞を認めた.また,壁の外側が膵組織であったため,膵内副脾に発生した上皮嚢胞の診断となった.