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二村 浩史, 二村 聡, 山田 哲, 山田 雅恵, 神森 眞, 清水 一雄
2010 年71 巻7 号 p.
1714-1718
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
患者は78歳,女性.2009年5月,頸部違和感,咽頭痛の後,頸部腫大,頸部皮下出血を認め当院紹介となった.入院時検査所見で橋本病と貧血を認めた.血清カルシウム値は正常であった.頸部に圧痛を訴え,CTにて左甲状腺下極の血腫を,造影CTで腫瘤内に血流を認めたが,動脈瘤は認めなかった.上部消化管内視鏡では咽頭喉頭に壁外性の圧排と内出血を認めた.ガリウムシンチにて集積を認めず,腫瘍ではなく甲状腺嚢胞の出血と診断した.入院後絶食し頸部冷却と止血剤投与にて一週間後に手術を施行した.皮下に内出血と甲状腺下極に連続しない内出血した40mm大の嚢腫を認め,左下副甲状腺嚢胞内出血と診断し摘出した.術前血清インタクトPTHの上昇はわずかであったが,内腔穿刺液のインタクトPTHは59,110pg/mlと高値であった.病理組織学的には副甲状腺嚢胞と橋本病であった.副甲状腺嚢胞内出血の自然穿破で頸部皮下出血をきたした患者を経験したので報告する.
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味元 宏道, 松原 長樹
2010 年71 巻7 号 p.
1719-1725
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は69歳,女性.平成18年頃より,左乳房腫瘤に気づいていた.徐々に増大し,半年前より腫瘤から分泌物を認めるようになった.腫瘍の大きさにより歩行ができなくなり,平成20年7月救急車で来院した.腫瘤はサッカーボール大で表皮より露出し肉芽腫様で,分泌物を認めた.可動性は良好であった.CT検査では左乳腺領域にbulky massがあり,胸筋および皮膚への増大がみられた.Biopsy検査ではphyllodes tumorと診断された.入院後20日目朝突然意識消失発作(III-300)をきたした.この時血糖値は34mg/dlで,ブドウ糖の静注を行い,意識は回復した.入院後24日目左乳房切除術(Br+Mj+Mn)を施行した.術後経過は良好で,血糖値も正常に回復した.病理組織学的検査では不規則な乳管およびその周囲の間質が増生し,borderline typeのphyllodes tumorと診断された.Phyllodes tumorが低血糖症を呈するのはまれと思われるので報告する.
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西山 宜孝, 木村 秀幸, 石原 節子, 能勢 聡一郎
2010 年71 巻7 号 p.
1726-1731
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
患者は54歳,女性.1年前乳癌検診を受けるも異常なし.1.5カ月前より右乳房に腫瘤を触知し受診.右乳房C領域に1.5cm大の腫瘤を触知し,その内側CA領域に約4cm大の乳腺症様の硬結を触知した.前者は穿刺吸引細胞診(FNABC)にてclassIII,針生検(CNB)にて悪性細胞を認めず.後者はFNABCにてclassIで経過観察したが,4カ月後C領域の腫瘤は2cm大に増大し腋窩リンパ節腫大を認めた.腫瘤のCNB再検で悪性,腋窩リンパ節のFNABCはclassV.T1N2aM0,stage 3Aのため術前化学療法を施行.C領域の腫瘍は縮小効果を認めるもA領域の硬結は不変で腋窩リンパ節は触知不能となり手術施行.組織学的にはCA領域の硬結はcystic hypersecretory carcinoma, non-invasive.1y0,v0,NG1,n0(0/13).ER(-),PgR(-),HER2=0であった.この癌は非浸潤癌で病理組織学的に特徴的な像を呈するため報告する.
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恩田 真二, 田辺 義明, 遠山 洋一, 柳澤 暁, 小林 進, 矢永 勝彦
2010 年71 巻7 号 p.
1732-1735
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は40歳,男性.急性大動脈解離の加療目的に他院より救急搬送された.入院後,上腹部痛と腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CT検査で肝・脾周囲に高濃度の液体貯留を認め腹腔内出血が疑われた.また,肝動脈に動脈瘤を認めた.血液検査所見上貧血がなく,血圧低下も認めないため保存的治療を行った.翌日ショック状態を呈したが,カテーテル操作では大動脈解離の恐れがあるため,緊急手術を施行した.手術所見で左肝動脈瘤の破裂と診断し,動脈瘤切除および左肝動脈結紮術を施行した.術後軽度の肝機能障害を認めたが軽快退院した.大動脈解離は血栓閉塞型であり増悪傾向なく経過観察とした.
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町田 大輔, 鈴木 伸一, 湯川 寛夫, 磯松 幸尚, 利野 靖, 益田 宗孝
2010 年71 巻7 号 p.
1736-1742
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は80歳,男性.既往歴:結核,慢性膿胸.主訴:便秘.精査にてS状結腸癌(S,lat,type2,SS,N0,H0,P0,M0,c-stage II)の診断.この際最大径57mmの胸腹部大動脈瘤(TAAA)と最大径65mmの腎動脈下腹部嚢状大動脈瘤(AAA)を認めた.TAAAは左慢性膿胸,高齢のため経過観察としたがAAAは嚢状瘤で破裂のリスクが高いため進行S状結腸癌とともに手術適応と判断.ステントグラフト治療も含めた各治療を検討した結果,人工血管感染の回避,人工肛門回避希望から二期的手術を選択.緊急性,第二期手術への影響を考慮し,開腹腹部大動脈瘤切除人工血管置換術を先行し1.5カ月後に二期的にS状結腸切除術を施行した.二期手術時には問題なく根治手術が可能で,術後経過良好で軽快退院した.
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中島 隆善, 塚本 忠司, 濱辺 豊, 加地 政秀, 豊川 晃弘
2010 年71 巻7 号 p.
1743-1747
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は70歳代,女性.十二指腸乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は,tubular adenocarcinoma,moderately differentiated,AbpBi,H0,pPanc0,pDu2,P0,pN1(+)(13bのみ),M(-),St(-),pT3,stage IIIであった.術後外来にて経過観察中,手術の2年後の胸部CT検査にて右肺S2に2cm大の孤立性異常陰影を認めた.気管支鏡検査による細胞診はclass IIであったが,FDG-PET検査にて有意な異常集積を認めた.腹部CT検査,頭部CT検査および骨シンチ検査上異常所見は認められなかった.以上より,原発性肺癌を疑って右肺上葉切除術を施行した.切除標本の肺胞腔内への上皮増殖,2次腺腔形成等の病理組織所見および免疫染色にて十二指腸乳頭部癌の肺転移と診断された.十二指腸乳頭部癌の術後再発形式として,局所再発およびリンパ節,肝,肺転移等が挙げられる.しかしながら孤立性に肺転移が認められ,肺切除を施行された症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
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平間 公昭, 久保田 穣, 山谷 信, 鳴海 俊治, 高野 歊
2010 年71 巻7 号 p.
1748-1753
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
外傷性横隔膜ヘルニア嵌頓はまれな疾患で,本邦で23例の文献報告がある.症例は31歳,男性.嘔吐後に激しい心窩部痛が出現し当院救急外来を受診した.5年前交通事故による多発外傷の既往があった.腹膜刺激症状は無く,H
2-ブロッカー・絶飲食で治療したが症状が持続し,胃内視鏡・胃透視で胃の形態学的異常および造影剤の流出不良を認め,手術を施行した.腹腔鏡で左横隔膜を通じて胃の胸腔内への脱出を認め,外傷性横隔膜ヘルニアの診断を得た.開腹に切り替え,ヘルニア門を開大し胃を腹腔内に引き戻した後,ヘルニア門を縫合閉鎖した.本症例は事故後度々食後の上腹部痛を自覚していた.左横隔膜損傷部に癒着あるいは軽度脱出していた胃が,嘔吐による腹腔内圧の上昇で,急激に大部分が胸腔内に脱出したと考えられた.
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加勢田 馨, 出江 洋介, 加藤 剛, 三浦 昭順, 宮本 昌武, 本多 通孝
2010 年71 巻7 号 p.
1754-1758
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は52歳,男性.2006年9月,胸部食道癌T2N0M0 StageIIに対し鏡視下食道亜全摘・胸骨後胃管再建術・3領域郭清施行.右頸部リンパ節再発に対しCRTを施行後,経過観察中であった.2008年4月,突然の上腹部痛を主訴に当院救急外来受診.CTにて食道裂孔をヘルニア門とした横隔膜ヘルニアの所見を認めた.食道癌術後の横隔膜ヘルニアによるイレウスと診断し緊急手術を施行した.術中所見では,前回の手術操作で開大した食道裂孔がヘルニア門となり,肝外側区域・右横隔膜脚と癒着した横行結腸と,その背側から小腸が左胸腔内へ脱出していた.腸管に明らかな壊死所見なく,切除は施行せず,食道裂孔を縫合閉鎖した.食道癌術後に生じる横隔膜ヘルニアは,稀であるが重大な合併症である.本症例では,術中に食道裂孔を開大したこと,鏡視下手術であったため腹腔内の癒着が少なかったこと等が発症原因と考えられた.
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松本 元, 藤原 澄夫, 山下 修一
2010 年71 巻7 号 p.
1759-1763
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
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上部消化管内視鏡検査の進歩もあり,近年胃石症例の報告は増加しつつある.腸閉塞などにより手術的治療を要する場合もあるが,内視鏡的に破砕することにより治療に成功したとの報告も多くみられる.今回われわれは胃石を内視鏡的に破砕後,その破片が原因となり腸閉塞を来たし手術を施行した稀な症例を経験した.
症例は93歳女性.心窩部不快感などを主訴に受診.精査の結果,十二指腸下行脚に5cm大の結石を認めた.内視鏡的に破砕した27日後にイレウスを発症したため,結石が嵌頓した部を含め小腸部分切除術を行った.胃石破砕後にその破片が原因となり腸閉塞を発症することもあり,破砕後も厳重な経過観察が必要であると考えられた.
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古川 健太, 中場 寛行, 森口 聡, 吉川 浩之, 有馬 良一
2010 年71 巻7 号 p.
1764-1767
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
GISTの再発様式は肝転移が最も多く,原発巣切除から再発までの期間は2年以内が多い.今回われわれは切除後11年目に肝転移をきたした症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例は60歳男性.他院にて平成9年11月噴門側大弯の粘膜下腫瘍に対し噴門側胃切除術を施行.当時の病理組織学的検査にてleiomyosarcomaと診断されていた.今回,人間ドックでの腹部エコーにて肝腫瘍を指摘され当院を受診.精査の結果,GISTの肝転移を疑い平成20年12月肝部分切除術を施行した.摘出標本の免疫組織学的検査にてGISTの肝転移と診断された.
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陸 大輔, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 前田 敦行
2010 年71 巻7 号 p.
1768-1773
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は64歳,男性.平成11年10月に胸部食道癌(Mt)に対して食道亜全摘,胃管による胸骨後再建,頸部吻合を施行された.術後経過観察中,平成17年4月に貧血を認め精査した結果,内視鏡検査にて挙上胃管に3型進行胃癌を認めたため,平成17年7月に胸骨縦切開胃管切除,回結腸による胸壁前再建,supercharge法を施行した.病理組織学的に高分化型腺癌で,int,INFβ,ly0,v0,mp,pN0,H0,P0,M0,StageIBであった.食道癌術後10年3カ月,胃管癌術後4年6カ月経過した現在,無再発生存中である.自験例を含め2009年12月までに報告された本邦における食道癌術後再建胃管癌118例を集計しその臨床像について検討した.食道癌の治療成績が向上し長期生存例も増加している現在,胃管癌を念頭においた術後定期的な内視鏡検査を積極的に導入する必要があると考えられる.
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石野 信一郎, 長濱 正吉, 久志 一朗, 下地 英明, 白石 祐之, 西巻 正
2010 年71 巻7 号 p.
1774-1778
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は72歳,女性.臍部腫瘤の摘出を目的に当院入院となった.術中所見では胃幽門部から十二指腸球部付近の大網に不整な引きつれと弾性硬の腫瘤を触知し,臍部腫瘤は腺癌転移と診断された.術後の上部消化管内視鏡で胃幽門から十二指腸粘膜の白色浮腫状変化を認めた.同部の生検から印環細胞癌が検出され,胃癌臍転移と診断された.腹腔内悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph結節と呼ばれ,比較的まれで,悪性腫瘍の初発症状として出現する場合がある.確定診断が困難な臍部腫瘤症例では,可能であれば早期に腫瘤を摘出し病理学的検査を行って,確定診断すべきであると思われた.
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竹田 正範, 磯崎 博司, 庄 達夫
2010 年71 巻7 号 p.
1779-1784
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は64歳,男性.上腹部痛を主訴に受診した.上部消化管内視鏡で胃体部小弯に2型腫瘍を認めた.内視鏡下生検では悪性診断には至らなかったが,高度のリンパ節転移を伴う進行胃癌を考えて胃全摘術+D3郭清を行い,術後病理診断にて胃小細胞癌と診断された.術後にTS-1を内服するも,1年後に肝転移再発し肝切除術を行った.その後low dose FP肝動注療法をbiweeklyで長期に行い,その治療中に,CTで2度の肝転移再発を認めたが,regimenを変更することなく数カ月後には消失した.その後は再発を認めず初回手術から5年生存が得られた.
胃小細胞癌に対する確立された治療はなく,予後不良とされているが,最近では長期生存例の報告も散見される.われわれは積極的な根治切除,肝転移に対する肝切除や肝動注化学療法などの長期局所コントロールが有効な治療の1つではないかと考えた.
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奥山 桂一郎, 平木 将紹, 大塚 隆生, 三好 篤, 能城 浩和, 宮崎 耕治
2010 年71 巻7 号 p.
1785-1788
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は49歳,精神発達遅滞のある男性.腹痛を主訴に近医を受診し,腹部レントゲン検査で消化管異物が疑われたため,当院を紹介された.来院時,発熱と炎症所見の上昇,臍上部に圧痛を認めたが腹膜刺激症状は明らかでなかった.腹部CT検査で小腸内に異物を認め,十二指腸周囲や後腹膜腔にガス像および液体貯留を認めた.当初,異物の特定ができなかったが施設スタッフへの問診で1カ月前より義歯が紛失していたことが判明し,義歯による小腸内異物,十二指腸穿孔と診断し,緊急で小腸内異物摘出,十二指腸穿孔部閉鎖術を施行した.摘出した異物は,径7cmの有鈎義歯であった.異物誤飲の際にはその異物の特定が重要となるが,精神発達遅滞を背景とした場合,本人への問診は困難であることも多いため,家族や入所施設スタッフへの詳細な問診も重要であると考えられた.
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高木 剛, 中瀬 有遠, 福本 兼久, 宮垣 拓也, 柳澤 昭夫
2010 年71 巻7 号 p.
1789-1794
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は83歳,男性.慢性腎不全による人工透析中に高度の貧血を認め,上部消化管内視鏡検査を行ったところ十二指腸球部に全周性の腺癌を認めた.腹部CT検査にて多発肝転移を認めたため切除不能十二指腸癌と診断したが,高齢かつ透析を要する腎不全患者であることから化学療法の遂行は困難と判断し,胃・十二指腸球部切除術(緩和手術)を行った.病理組織検査では腺扁平上皮癌の診断で,主病巣は扁平上皮癌が占めていた.術後経過は,早期に肝転移による黄疸の出現ならびに肝不全を認め,術後23病日に死亡した.狭義の十二指腸に発生する腺扁平上皮癌は非常に稀であり予後不良とされている.われわれは,高齢透析患者に発生した十二指腸球部腺扁平上皮癌の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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森 隆太郎, 簾田 康一郎, 鈴木 紳祐, 佐々木 真理, 江口 和哉, 仲野 明
2010 年71 巻7 号 p.
1795-1799
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は85歳,女性.2007年10月頃から間欠的な臍周囲痛を自覚し,食思不振のため6カ月間で10kgの体重減少をきたしたが放置していた.2008年5月激しい臍周囲痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.腹部所見で臍周囲,および左上腹部に最強点を有する圧痛を認め,腹部X線で小腸ガスとneveau像を,腹部CT検査で腸間膜の血管を中心として小腸が渦巻状に巻き込まれるwhirl signを認めたため,小腸軸捻転症と診断し緊急手術を施行した.術中所見で,小腸は上腸間膜動脈を中心として反時計方向に360°回転していた.軸捻転の誘因となる器質的病変はなく,解剖学的異常も認めなかったため,原発性小腸軸捻転症と診断し捻転解除術を施行した.高齢者では小腸軸捻転症でも,臨床症状や検査所見が軽度であることもあり,本症例のように慢性的に経過し,急性増悪をきたすこともあるため注意が必要である.
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佐伯 隆人, 松野 剛, 井口 利仁, 藤澤 憲司
2010 年71 巻7 号 p.
1800-1805
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は86歳,男性.8カ月前から下腹部痛,頻尿と尿の混濁が出現した.2つの病院を受診し治療を受けたが,症状が改善しないため当院泌尿器科を受診した.膀胱鏡検査を行ったところ膀胱壁に小孔があり便汁の流出を認めた.CTではS状結腸に多発する憩室を認め,S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻の診断で外科紹介となった.長期間の炎症と低栄養のため全身状態は不良であった.開腹手術を行ったところ,S状結腸に径1cm大の穿孔部を認め,周囲に膿瘍を形成し,内腔に0.7cm大の魚骨を認めた.膿瘍腔の奥には肥厚し硬化した膀胱壁が存在し瘻孔を認めた.S状結腸と膀胱の穿孔部を縫合閉鎖し,口側にS状結腸双孔式人工肛門を造設した.魚骨による大腸穿孔はまれに経験するが,大腸膀胱瘻を形成した症例は本邦で2例目である.
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王 孔志, 中井 紀博, 岡田 敏弘, 飯室 勇二, 廣田 誠一, 藤元 治朗
2010 年71 巻7 号 p.
1806-1811
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は62歳,女性.主訴は肛門痛,排便障害である.直腸診では前壁中心に表面平滑な粘膜下より圧排性に増殖する巨大な腫瘤を触知した。MRIで最大径12cmの辺縁平滑な腫瘍を認め,内視鏡では一部潰瘍を伴う粘膜下腫瘍の形態を呈した.同部からの生検で高リスクの直腸GISTと診断された.この時点で外科的切除を考えたが腫瘍は小骨盤腔を占拠し,被膜損傷に伴う腫瘍細胞の播種が懸念され,またc-kit遺伝子検索によりexon 11の変異がみつかっておりイマチニブの効果も期待できたことから術前イマチニ投与を行った.投与後約6カ月で最大約40%の縮小効果を認めたため手術を行うこととした.手術は膣後壁を合併切除し被膜損傷することなく腹会陰式直腸切断術を行えた.切除標本の病理診断は広範囲に硝子化変性を伴うGISTであり,イマチニブの著効が示唆された.イマチニブによる術後補助療法を継続的に行い,現在術後14カ月経過しているが再発は認めていない.
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長谷川 智行, 袖山 治嗣, 町田 泰一, 草間 啓, 西尾 秋人, 中田 伸司
2010 年71 巻7 号 p.
1812-1816
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
フリー
症例は74歳,女性.入院14日前より腹痛を自覚した.近医を受診したが改善せず,発熱,臍下部の腫瘤も伴うようになり当院紹介入院した.入院時,体温38.1℃,臍下に発赤,圧痛を伴う腫瘤を認めた.腹部CTで横行結腸に接して腹腔内より腹壁に至る膿瘍を認めた.絶飲食とし抗生剤を投与したが,腹部CTで腹壁膿瘍の増大を認め,局所麻酔下に腹壁膿瘍のドレナージを施行した.経口摂取を開始後,腸閉塞症を併発しイレウス管を留置した.イレウス管を用いた注腸造影にて横行結腸に不整な狭窄を認め,腹壁膿瘍を合併した横行結腸癌および腸閉塞症と診断した.33病日,大網合併横行結腸部分切除術,D2郭清を施行した.病理検査結果は横行結腸癌,2型,tub1,SE,N0,StageII.術後補助化学療法を開始し,76病日に退院した.術後1年6カ月目の現在,再発を認めていない.本症例を含む腹壁膿瘍を合併した横行結腸癌本邦報告22例に検討を加えた.
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芳澤 淳一, 石坂 克彦, 柴田 均, 中村 学
2010 年71 巻7 号 p.
1817-1821
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
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症例は82歳,男性.孫がvon Willebrand病と診断されている.下血を主訴に来院し,S状結腸に半周性の2型病変を指摘されS状結腸癌の診断で手術を行った.術前の血液検査でvon Willebrand因子活性の著明な低下を認めvon Willebrand病と診断した.手術直前と術後5日間に第VIII因子/von Willebrand factor濃縮製剤を投与してvon Willebrand因子活性を良好に保ち,異常出血をすることなく退院した.von Willebrand病は血小板機能障害や第VIII凝固因子の不安定化をきたし,外傷,手術,分娩等の外的要因が加わった際に止血管理が困難となることがある.von Willebrand病患者に観血的処置を行う際には,von Willebrand因子を補充するなどして周術期の止血管理を行うことが重要であると考えられ,文献的考察を加え報告する.
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竹林 隆介, 出石 邦彦, 佐野 貴範, 萩池 昌信, 岡野 圭一, 鈴木 康之
2010 年71 巻7 号 p.
1822-1827
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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54歳女性,腹部膨満感を主訴に当院内科を受診.大腸内視鏡検査で,S状結腸に約半周性の2型病変(生検:高分化型腺癌)を認め,数日後に自覚症状が強くなり緊急入院となった.入院後の腹部造影CTで,S状結腸の壁肥厚像,長径約10cm大の多房性嚢胞性腫瘤と多量の腹水を認めた.腹水細胞診はclassIIで,貧血もなく,左卵巣癌の疑いで精査を進めたが,急な腹痛と腹水の増加を認め緊急開腹手術を施行した.開腹時に濃厚な血性腹水を認め,左卵巣腫瘤の破裂による出血と判明した.腹水の迅速細胞診で腺癌細胞を認め,S状結腸癌同時性卵巣転移の破裂と診断,高位前方切除術+左卵巣摘出術を施行した.病理組織診断および免疫組織診断により左卵巣腫瘍はS状結腸癌の卵巣転移と診断された.術後は補助化学療法を施行し,術後4年現在,無再発生存中である.
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宇野 雄祐, 小谷 勝祥, 松山 孝昭, 山崎 由紀子, 佐藤 太一
2010 年71 巻7 号 p.
1828-1831
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は81歳,男性.肛門出血を主訴に当院を受診.大腸内視鏡検査で,下部直腸に左壁を中心とする半周性の隆起性腫瘍を認めた.腫瘍表面は発赤しており,易出血性であった.同部位の生検組織から印環細胞癌が確認された.胸腹部CTでは遠隔転移の所見は認められず,前立腺を含む周囲臓器にも異常所見はなかった.原発性直腸癌の診断で,腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本では,下部直腸左壁に最大径6cmの境界不明瞭な不整陥凹性病変を認めた.さらに口側にも,やや強い発赤調の陥凹を認めた.病理組織検査では,いずれの病変においても,小型で腺管形成の不明瞭な腺癌が粘膜から外膜にかけて浸潤していた.その細胞質は淡明であり,PSA染色で陽性であった.以上から,前立腺癌直腸転移と診断した.
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金城 達也, 砂川 宏樹, 當山 鉄男, 稲嶺 進, 座波 久光, 大城 直人
2010 年71 巻7 号 p.
1832-1836
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
ジャーナル
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黄色肉芽腫性胆嚢炎(Xanthogranulomatous cholecystitis;XGC)は,胆嚢壁内に肉芽腫性結節を形成する胆嚢炎の一亜型である.周辺臓器への炎症性浸潤を呈するような高度炎症を伴う症例では,胆嚢癌との鑑別が困難であることが多く,拡大手術が施行されることもある.またXGCには胆嚢癌併存症例が報告されており,術式選択を慎重に行うべきである.今回,胆嚢癌の併存が疑われ,術式選択に苦慮した2症例を経験した.2症例ともに50歳台の男性で,右季肋部痛が主訴であった.両症例とも術前診断はXGCであったが,胆嚢壁の不整な肥厚および周辺臓器へ炎症性浸潤所見,さらにFDG-PETで胆嚢に異常集積像を認め,胆嚢癌の併存を完全に否定しえなかった.いずれの症例も術中所見では明らかな悪性所見はなく,拡大胆嚢摘出術を施行.病理学的所見ではXGCの診断であった.自験例を踏まえて,文献的考察を加え報告する.
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安田 晃一, 金宮 義哲
2010 年71 巻7 号 p.
1837-1841
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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患者は69歳の女性.平成12年に胆石症のため腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている.平成19年,スクリーニングの上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部に粘膜下腫瘍を認めた.各種検査の結果,原発性または転移性十二指腸癌の診断の下,手術を施行した.最終的に病理組織学的検査で,遺残胆嚢管癌と確定診断を得た.胆嚢摘出後の遺残胆嚢管癌はまれな病態であり,われわれはその1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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赤須 玄, 石川 博人, 川原 隆一, 御鍵 和弘, 吉富 宗宏, 木下 壽文
2010 年71 巻7 号 p.
1842-1845
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は72歳,男性.発熱・腹痛を主訴に近医を受診し,閉塞性胆管炎の診断にて,緊急で内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)が施行された.総胆管に結石像や狭窄所見はみられなかったが,胆嚢管が描出されなかったため精査加療目的で当院紹介となった.腹部multi-detector row CT(MDCT)では胆嚢管内にのみ淡い造影効果を伴う腫瘍性病変を認め,胆嚢内に結石像や腫瘍性病変は認めなかった.内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)では三管合流部に陰影欠損を認め,同部からの擦過細胞診でadenocarcinomaと診断された.胆管内超音波検査(IDUS)では胆嚢管を充満するような腫瘍性病変を認め一部総胆管内への突出がみられたが,胆管への進展は認めず,胆嚢管癌の術前診断で胆嚢摘出・肝外胆管切除・リンパ節郭清(D2)を施行した.病理診断はPapillary adenocarcinoma. depth;fm patCGmBm, INFβ,ly0,v0,pn0,pHinf0,pBinf0,pPV0,pA0,pN0,pHM0,pBM0,EM0と早期胆嚢管癌であった.術後17カ月経過し無再発生存中である.
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鈴村 和大, 岡田 敏弘, 飯室 勇二, 麻野 泰包, 吉田 康彦, 西上 隆之, 藤元 治朗
2010 年71 巻7 号 p.
1846-1849
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は75歳,男性.以前より胆嚢結石を指摘されていた.右季肋部痛と発熱を主訴に近医受診.胆石胆嚢炎および総胆管結石による急性閉塞性化膿性胆管炎の診断にて当科入院となった.腹部超音波検査では胆嚢壁の全周性の肥厚および底部に一部不整像を認め,CT検査では肝内胆管の拡張および総胆管内に結石を認めた.まずPTCDを行い胆嚢,胆管炎ならびに高ビリルビン血症が改善した後,腹腔鏡下胆嚢摘出術,総胆管切石術を施行した.切除標本にて胆嚢底部に腫瘍性変化を認め,病理組織検査にて腺内分泌細胞癌と診断された.追加治療として根治手術を目的に肝S4a,5切除,D2リンパ節郭清を行った.術後22カ月に多発肝転移およびリンパ節再発が出現し,術後24カ月で死亡した.胆嚢腺内分泌細胞癌は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
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渡辺 一輝, 藤井 義郎, 山本 晋也, 樋口 晃生, 池 秀之
2010 年71 巻7 号 p.
1850-1854
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は66歳,女性.2007年3月にVater乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)+Child変法再建を施行した.病理検査所見はnon-invasive tubular adenocarcinomaで,総合的根治度はAだった.術後経過は順調だったが,第26病日と第28病日に下血を認めた.出血シンチグラフィーで,上部小腸内から出血している所見を認め,血管造影検査で空腸動脈からの出血と診断した.そのため上部内視鏡検査を再度施行し,挙上空腸輸入脚の潰瘍から動脈性出血を認めたため,クリップで止血した.止血後はPPIを継続投与し,再出血はなく,第44病日に軽快退院した.PPPD後の空腸潰瘍の頻度は少ないが重症化の報告もある.本症例はBraun吻合により挙上空腸輸入脚のPHが低下したことが潰瘍形成に関与したと考えられ,再建法の更なる工夫と周術期の胃酸調整が必要と思われた.
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棚橋 利行, 長田 真二, 徳山 泰治, 高橋 孝夫, 山口 和也, 吉田 和弘
2010 年71 巻7 号 p.
1855-1859
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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患者は67歳,男性.平成21年4月頃より心窩部痛を自覚し,6月に近医受診したところ膵酵素の上昇と膵尾部に径30mm大の嚢胞を指摘.8月に径160mm大まで増大してきたため,精査・加療目的にて当院消化器内科へ紹介となった.腹部造影CT検査にて,膵体尾部に16×5×9cm大,辺縁が濃染される仮性嚢胞がみられた.さらにその頭部側には限局した膵腫大を認め,造影膵実質相で造影不良,後期相で淡い濃染状態であり,EUS-FNAにて膵体部癌の診断に至った.9月末の予定開腹時はすでに嚢胞は消失していたが,腹水や遠隔転移を認めず,膵体尾脾切除術を施行した.膵癌による膵管狭窄が嚢胞の進展ひいては破裂につながったものと推察された.
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廣瀬 淳史, 松木 伸夫, 竹下 雅樹, 吉本 勝博, 細 正博
2010 年71 巻7 号 p.
1860-1865
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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膵内副脾に発生した嚢胞性疾患は極めて稀であり,世界でも報告は50例に満たない.今回われわれは膵内副脾に発生した上皮嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.発熱を主訴に当院内科受診.精査の結果,肺炎の診断にて入院となったが,その際の腹部CTにて膵尾部に径3cmの嚢胞を伴う腫瘤性病変を認めた.退院後,各種画像学的検査を施行したが,造影MRIにて同病変は嚢胞部と三日月状の充実部に分かれており,充実部は脾臓と同程度の信号を示した.結果,鑑別診断として膵内副脾に発生した嚢胞性疾患やsolid-pseudopapillary tumorが疑われた.手術加療を希望されたため,当科紹介となり膵尾部切除・脾合併切除術が施行された.術後病理学的検査所見にて,腫瘤は膵尾部に連続した形で存在した副脾であり,内部に嚢胞を認めた.また,壁の外側が膵組織であったため,膵内副脾に発生した上皮嚢胞の診断となった.
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篠田 公生, 勝浦 譽介, 寺本 修
2010 年71 巻7 号 p.
1866-1869
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は76歳,女性,整形外科入院中であった.平成21年2月に頸椎症の手術を受け,連日消炎鎮痛剤を使用していた.また,関節リウマチのためプレドニゾロン2mg/日を長期内服していた.同年3月下旬より発熱が出現し,抗生物質の投与で解熱せず,関節リウマチ増悪の診断でステロイド増量となっていた.発熱から3週間後,突然の下腹部痛にて外科紹介となった.腹膜刺激症状を呈し,CTで遊離ガスと腹水を認め,消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した.消化管には穿孔を認めず,腫大した子宮の底部が壊死をきたして穿孔し,膿の流出を認めた.子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,開腹洗浄ドレナージ,および経腹的子宮ドレナージを施行した.術後経過は良好であった.子宮細胞診はclassIで,膿培養からBacteroides fragilisが検出された.高齢女性の腹膜炎の鑑別診断にあたっては本症も念頭に置く必要があり,また全身状態を十分に考慮した上で術式を選択することが重要である.
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津福 達二, 磯邊 眞, 田中 眞紀, 篠崎 広嗣, 山口 美樹, 武田 仁良
2010 年71 巻7 号 p.
1870-1873
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は64歳,男性.左下腹部痛を主訴に来院した.精査の結果,S状結腸癌を認めS状結腸切除術を施行した.術中所見で,腫瘍は外側鼠径窩の位置で後腹膜に浸潤固定しており,同部位で精巣動静脈,精管を巻き込んでいた.精巣動静脈,精管を合併切除し腫瘍を摘出した.術後より発熱を認め左精巣は腫大した.超音波検査で血流信号がなく,血流障害による精巣壊死が疑われ手術を施行した.手術所見で,精巣は暗黒色に腫大し壊死しており左精巣摘出術を施行した.
S状結腸切除に際し精巣動静脈合併切除をしても精巣は壊死しないのが一般的である.精巣への血流は精巣動脈だけではなく,外陰部動脈,精管動脈,挙睾筋動脈,膀胱動脈や前立腺動脈から血管が分枝し,さらにそれらが吻合枝を有しているからと考えられる.今回われわれは非常に稀な精巣壊死症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
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内藤 雅人, 長谷川 傑, 政野 裕紀, 浅生 義人, 古山 裕章, 吉村 玄浩
2010 年71 巻7 号 p.
1874-1878
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は開腹歴のない18歳,女性.嘔吐,腹痛を主訴に来院.腹部造影MDCTにて下大静脈と門脈との間,すなわちWinslow孔への小腸間膜の集簇像と小腸絞扼像が明瞭に描出された.Winslow孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,緊急開腹し小腸部分切除術を施行した.Winslow孔の開大はなく同部への大網充填や閉鎖は施行しなかった.開腹歴のない若年者のイレウスにおいてはWinslow孔ヘルニアをはじめとした内ヘルニアの可能性も考慮に入れるべきであり,鑑別診断には多角的かつ詳細な画像が得られるMDCTが非常に有用であると考える.
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蓮田 正太, 蓮田 慶太郎, 蓮田 晶一
2010 年71 巻7 号 p.
1879-1882
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は84歳,女性.腹部手術の既往はない.元来健康であったが,突然の嘔吐と吐血が数日間続き入院した.軽度の貧血があり,腹部に無痛性のやわらかい腫瘤を触知した.上部消化管内視鏡検査では食道に出血性病変はなく,胃は全体に浮腫が強く,胃体中部で全周性の狭窄を認め,狭窄部の8cm肛側で内腔は完全に閉塞していた.腹部CTでは胃は著明に拡張し,尾側のscanで一旦狭窄し,さらにその尾側で再度拡張していた.前庭部から十二指腸にかけ壁の肥厚がみられた.胃の周囲に腫瘍性病変はなく,胃癌による幽門狭窄を疑い手術を行った.網嚢内の横行結腸間膜根部と膵の間に径7cmのヘルニア門があり,胃が後腹膜腔に嵌頓していた.胃を還納しヘルニア門を閉鎖した.術後経過は順調で術後25日に退院した.本症例の様な胃の内ヘルニアは極めてまれであり文献的考察を加え報告する.
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坂本 一喜, 石道 基典, 山口 智之, 冨田 雅史, 新保 雅也, 牧本 伸一郎
2010 年71 巻7 号 p.
1883-1887
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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大網捻転は比較的まれな疾患であり,これまでは術前診断が困難でほぼ全例が切除手術による治療を行われてきた.われわれはCTで確定診断を行い保存的治療を行った3例を経験したので報告する.41歳の男性で右側腹部痛を主訴に受診し,圧痛と反跳痛を同部位に認めた.発熱と血液検査で炎症反応の上昇を認め,腹部CTで一部層状の構造を伴う脂肪織濃度の腫瘤を認めた.大網捻転症と診断し絶食,抗生剤,輸液による保存的治療を行い,翌日には解熱し腹痛軽減の傾向がみられ以後も軽快した.同様に他の44歳と30歳の成人で保存的治療を行い軽快した.大網捻転は診断がつけば必ずしも手術が必用ではなく基礎疾患,年齢,症状の程度と経過,大網捻転症に関連する併存疾患を考慮した上で保存的に治療が可能である.
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黒崎 毅史, 木村 圭吾, 国土 泰孝, 村岡 篤, 立本 昭彦, 津村 眞
2010 年71 巻7 号 p.
1888-1891
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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下腸間膜動脈は腹腔内の動脈では比較的分岐異常の少ない動脈である.今回,われわれは下腸間膜動脈の分岐異常によりイレウスを発症した1症例を経験したので報告する.症例は52歳,男性.腹痛を主訴に来院した.腹部CTにて終末回腸近傍での閉塞性イレウスを認め,絞扼性イレウスも疑われたため,緊急手術を施行した.開腹すると,小腸は薄い膜に覆われていた.膜を切開すると終末回腸より約10~15cm口側の位置で索状物により閉塞していた.この索状物は上腸間膜動脈より分岐した下腸間膜動脈を含む腸間膜であった.絞扼腸管を一部切除し,吻合は下腸間膜動脈の前方で行った.第14病日に退院し,術後17カ月の現在腸閉塞の再発はなく,無症状にて経過中である.文献上,下腸間膜動脈の分岐異常によるイレウスは報告例がなく,極めて稀な症例を経験したので報告する.
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岩田 英之, 畑中 正行, 鈴木 哲郎, 堀 義城, 鈴木 淳一
2010 年71 巻7 号 p.
1892-1896
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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下肢静脈血栓症を伴った巨大後腹膜脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性.2008年2月中旬に路上で転倒し,救急車にて前医を受診,右大腿骨頸部骨折の診断で当院整形外科を紹介受診した.来院時腹部膨満が強く,腹部CT検査にて巨大後腹膜腫瘍を疑われ,その精査加療を優先して外科入院となった.精査の結果,左下肢静脈血栓症,巨大後腹膜腫瘍,左腎直接浸潤の診断となり,2008年3月下旬に下大静脈フィルターを挿入した後,手術を施行した.術中所見では腹部のほとんどを後腹膜腫瘍が占拠しており,左腎は腫瘍内に巻き込まれていたため,腫瘍摘出,左腎合併切除を施行した.腫瘍重量は14kgであった.病理組織診断では脱分化型の脂肪肉腫であった.
本邦において腫瘍重量が10kgを超えるまでに巨大化した後腹膜脂肪肉腫はまれである.本症例は左腎を巻き込み左下肢静脈血栓症を合併していたにもかかわらず,術中術後に幸いにも合併症を起こさず安全に切除することができた.
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赤川 進, 新山 秀昭
2010 年71 巻7 号 p.
1897-1900
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例は84歳,女性.発熱と咳嗽,腰背部痛を主訴に当院入院となり,MRSA肺炎の診断で塩酸バンコマイシン(VCM)等の抗生剤治療を行った.肺炎は軽快したが炎症反応の改善に乏しく,腰背部痛も持続していたため腹部CT,脊椎MRIを施行した.その結果,L1-2椎体の化膿性脊椎炎,硬膜外膿瘍および連続する両側腸腰筋膿瘍を認めた.CTガイド下に腸腰筋膿瘍をドレナージし,MRSAが検出され,MRSA化膿性脊椎炎と診断した.ドレナージ後よりVCMを継続投与したが一度低下した炎症反応が再上昇し,VCM不応性と判断し,骨軟部組織移行性に優れたリネゾリド(LZD)に変更した.LZDを28日間投与した時点でCRPの陰性化は得られなかったが,以後抗生剤を投与せず経過観察した.その後8カ月が経過したが化膿性脊椎炎の再燃を認めず,臨床的寛解を得たと判断した.
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桒田 亜希, 今村 祐司, 香山 茂平, 上神 慎之介, 垰越 宏幸, 中光 篤志
2010 年71 巻7 号 p.
1901-1904
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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患者75歳の男性で,左鼠径部膨隆と左鼠径部痛を主訴に当科を受診した.来院時陰嚢は人頭大に腫脹し,陰茎は埋没していた.CTでS状結腸を内容物とする左鼠径ヘルニアと診断した.用手的還納を試みるも整復できず,緊急手術を施行した.左鼠径部を切開し鼠径管を開放し,脱出するS状結腸を確認したが,鼠径法では還納が困難であり,追加した正中切開からの操作で脱出腸管を還納した.Direct Kugel Patch
®(Mサイズ)を用い,ヘルニア門を修復した.術後腹腔内圧の上昇もあり,呼吸状態が悪化したため人工呼吸器管理を余儀なくされたが,術後3日目に抜管した.その後の経過は順調で,術後9日目に退院となった.現在ヘルニアの再発は認めてない.
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小泉 大, 佐久間 康成, 森 美鈴, 宇井 崇, 佐田 尚宏, 安田 是和
2010 年71 巻7 号 p.
1905-1908
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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症例1は53歳,男性.30歳時に生体腎移植を施行.2004年に右鼠径部の膨隆を認め,次第に増悪した.2006年6月Lichtenstein法施行.ヘルニア門は恥骨のすぐ脇で,膀胱上ヘルニア,ヘルニア分類II-1と診断した.内鼠径輪は破壊され,精索が内側に変位していた.症例2は44歳,男性.25歳時に生体腎移植術を施行された.2005年右鼠径部膨隆を認め,次第に増大したため,2008年6月手術施行.外鼠径ヘルニア,ヘルニア分類I-2と診断.腎移植後の癒着のため剥離に難渋し,精索の同定,剥離が困難だった.腎移植術後の鼠径ヘルニアでは,腎移植のため鼠径管や腹膜前腔に癒着が起こり,鼠径管の剥離や精索の同定が困難となっていた.移植腎のある腹膜前腔に盲目的に指を入れ,通常のヘルニアの剥離操作を行うことは,移植腎の不慮のトラブルを避けるためにも行うべきではなく,その点で腎移植後の鼠径ヘルニア症例に,Lichtenstein法は有用な術式である.
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武内 有城
2010 年71 巻7 号 p.
1909-1915
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/25
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Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする組織固定剤で,皮膚の悪性腫瘍などのchemosurgeryに応用されている.今回,われわれは切除不能の進行乳癌で皮膚潰瘍から出血を繰り返した症例と進行肺癌の腹部皮膚転移の自壊による悪臭と浸出液,疼痛の著明な症例に使用し,有用であったので報告する.症例1は60歳代女性で,左乳癌潰瘍部(papillotubular carcinoma)からの出血後失神をきたし,緊急入院となった.乳癌は11×6×11cm,T4N3M1 Stage IVで,根治手術不能のためにホルモン化学療法を施行した.潰瘍からの出血が続くため,Mohsペーストを施行し,24時間で出血は止まり,1週間で完全壊死となり,約2週間で自己融解から自然脱落した.症例2は,60歳代男性で進行肺癌(squamous cell carcinoma,T2N2M1 Stage IV)の腹部の皮膚転移で悪臭と浸出液,疼痛が著明で,患者のQOL(quality of life)を低下させていたが,ペースト使用5日目で悪臭と浸出液は消失し,ペースト塗布と切除を繰り返して約4週間で腫瘍部は平坦化し,疼痛も軽減した.
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